「日本人の記憶」
明けましておめでとうございます。
初詣のにぎわいの中に、神々と共に生かされてきた日本人の姿、自然と祖先崇拝の想いを見、日本人の心は全く変わっていないことを嬉しく思う。
今年は辛卯（かのとう）の年である。うさぎは古代より、月の神、山の神、鬼神、日の神、産神、子育て神、族霊という神性をもつとされ、私の育った福井では、うさぎは神様の使いで十九夜や二十三夜にお月さまを見て安産を願うと叶うと言われていた。だから少女時代にはお茶碗やお弁当箱に月うさぎのデザインのものを使い、娘たちのお弁当箱を求める時も、同じ心で月うさぎを選んだものだった。
「とんとんとろりことんとろり とんとんとろりこつく杵は 月姫様のお使いか かちかち山の兎さん 狸もおいたをやめにして・・・」懐かしい子守唄のひとつだが、うさぎは子供の心を鎮め、またのびやかにさせる力を発揮するとされていた。
平成後期の混乱した京都で鳥羽僧正が描いたとされる「鳥獣戯画」甲巻には、うさぎ四十一、蛙二十五、猿十六、狐十一、猫三、鹿・ネズミ各二、猪・雉・フクロウ各一が登場し、うさぎの登場が最も多い。これは京都に自由闊達さや、豊穣が満ちてほしいとの願いがあったからではないかという研究者もいる。
最近は余り使われない表現となったが、うさぎにまつわる表現、ことわざも多い。
「うさぎに祭文」とは馬の耳に念仏と同じ意味とされ、物事が順調に進む時は「うさぎの登り坂」、油断をして失敗した時は「うさぎの昼寝」、あり得ないウソには「うさぎの角」、嫌味なことは「うさぎの逆立ち」、地獄耳を「うさぎの耳」と言うなどしていた。
うさぎと日本人の生活が、今よりはるかに密接だったのだろう。
安倍内閣時代、日本人の記憶を取り戻したいとの思いで取り組んだ教育再生、学習指導要領改訂により、このたびやっと小学一、二年生に神話・昔話、三、四年生で古事記、日本書紀が教科書に載るようになった。アメリカの教科書には載っていた「因幡の白うさぎ」を多くの日本の子供たちも教科書で読むようになるわけである。かつての日本の幼い子たちは、絵本で、歌で、皆このお話を知っていた。
大国主命の優しさ、うさぎの痛みと後悔が幼い心に優しさや強さへの憧れとして残された。今、改めてこの話を読み返すと、正直を美徳とした日本人、虚言を吐いた八十神は族長にはなれず追放され、真実と親切と知恵と大きな心の持主である大国主命が国神となる神話は、日本民族の姿と心を象徴している。
�爐Δ気�追いしかの山�瓩箸佞襪気箸硫里砲△詁�本人の自然観、生死観も含め、うさぎにまつわるさまざまなお話を新年にあたり次世代へ伝えたいと思う。
