やまたにの活動報告詳細

2011年4月2日
【プレスルーム】「解答乱麻」 産経新聞4月2日(土)

 四月、桜の花は東日本大震災による日本列島の悲しみを慰めるかのようにゆっくりと北上していく。
 避難生活の中でも保護者や教育関係者、地域の人々の努力で学習の場の確保が進みつつある。国会では、文科省や被災地域の調査に基づき、支援のための補正予算や“復興再生基本法”を見据えた議論をしている。グローバル化が進む時代であればこそまた同時に、ふるさとや家族を守りぬく意思と行動の人が求められることを多くの人が感じている。
“復興再生基本法”は、被災地の支援と復旧を目的とすることは勿論だが、百年先の日本の姿を見据えた復興の理念を入れたいと議論している。財政、成長分析、町づくり、社会保障、安全保障のあり方など国全体の姿を議論しているが、文教族の国会議員でない方たちから教育再生に深い共感が寄せられている様は、自民党の国家戦略本部の教育政策事務局を担当している私にとって感動である。
海外のメディアは、悲劇の中でも人々が思いやりや秩序を失わず、我慢強さと連帯の絆を示したことを称賛したが、これは日本人が祈りながら、明るく清らかに謙虚に道を求めて歩んでこられたご先祖様の力と教育の賜物であったと考える。こうした民族のDNAである正直、親切、勤勉、不屈の精神、親孝行などの特性は、物質主義や快楽主義時代の波の中にあっても人々の深い所で生き続け、困難な状況の中で、むしろ甦るかのように顕現したのであろう。人は時代というヨコの糸と伝統というタテの糸の中で生かされている。
過去三回の全国学力・学習状況調査、体力調査で判明したことは、学力も体力も共に良かった県の特徴として、早寝、早起き、朝ごはんをし、地域の行事への人々の連帯が強く、三世代同居の割合が高く、テレビの視聴時間が短く、家族でよく話し、本を読む傾向の強い県であった。情愛あふれる落ち着いた生活こそ、子供の持てる力を育むことに思いをいたし、“よく学び、よく遊べ”の素朴な環境を日本中で再興し、若ければこそ一層力強く復興の道への献身ができることを子供たちに感じてもらえたらと願っている。
今春、平成二十年の新学習指導要領に基づく新しい教科書を小学生は手にする。以前にも増して日本の美しいお話や歌がたくさん伝えられる。百五十年前の安政南海大地震の津波から村人を救った濱口儀兵衛の「稲むらの火」の話を小学五年生の教科書に六十余年ぶりに掲載したところもある。算数も理科も格段に充実している。
 最近の脳科学の研究では、三歳までは家族的語りかけの中で共感性が育ち、七、八歳は丁寧な会話により社会性が養われる。十歳前後には良い価値や大きな世界観を描いた読み物を提供し、二十歳前後まで抽象的概念や記憶の蓄積を含めて困難に取り組む課題を与え続けると、みずみずしい人生の土台となる意欲や感性が形成されることがわかってきた。
犠牲になられた方々の思いを胸に、若者たちが新しい国づくりとふるさと復興の主役になっていくよう“艱難汝を玉にす”を期待をこめて次世代への贈る言葉としたい。

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