やまたにの活動報告詳細

2011年10月2日
【プレスルーム】「解答乱麻」 産経新聞10月1日(土)

「心と身体で文化を知る」

 「知徳体」と一般には言われるが、人によっては「徳体知」「体徳知」という方もおられる。

 昭和39年10月10日、東京オリンピック開会式の朝の青空は忘れられない。当時私は中学生で父の失業や転校など心ふさぐ日々を過ごしていただけに、その力強さに心の扉が開かれる思いがした。すべての基礎は体力と考え、中学、高校時代は水泳部で大学時代は合気道と山登りに明け暮れた。還暦を過ぎた今も水泳、合気道ができる日々に感謝している。

 けれども、昨今の子供たちは身体感覚が二極分化し、転んだだけで骨折する子も珍しくない。ゲームや塾で長時間座しての生活も好ましいものではない。現在、中学、高校の体育会系部活動は指導者不足もあって、低減傾向にあり地域スポーツクラブの支援を含めてさらに予算充実に努めていきたい。6月には50年ぶりにスポーツ基本法も改正され、スポーツ庁創設も検討されている。

 さて、来年からは中学で武道が男女必修科目となる。自民党・安倍内閣時代の教育再生が政権交代を経ても行政の継続性のもと環境整備がなされてきている。指導者の育成、派遣、武具や武道場の整備が5年がかりで着々と実ってきている。

 私は合気道二段をいただいているが丹田(たんでん)や体の各部位に気を集めて、天地宇宙の気とつながる感覚を知ることや、受け身、すり足、礼や間合いの意味を体得することは、日本文化の神髄を身体で理解し、人格の完成につながっていくと感じている。これは、すべての武道につながっていることで、中学の学習指導要領では「武道は、武技、武術などから発生した我が国固有の文化であり」とはじまり、「武道に積極的に取り組むことを通して、武道の伝統的な考え方を理解し、相手を尊重して練習や試合ができるようにすることを重視する運動である」と記されている。

 学校での指導対象は柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道と9種に及んでおり、それぞれの教育委員会や学校でどの武道を指導するかは自由に任されている。学校に指導員が十分にいない場合は、各地の教育委員会や各武道協議会で指導者をリストアップしているので、保護者や生徒たちも関心をもって要望をあげるなど豊かなカリキュラムを各学校で実現していただければ幸いである。

 限られた授業時間では、武道の入り口の指導しかできないかもしれないが、それでも日本人の先人の生き方、調和と平和を求めてやまぬ心や体の使い方を若い時に体験することは有意義である。可能ならば英語の先生にも協力していただいて、武道や道を求めて歩む日本文化の特質について、英語で世界中の人々に話すことができるような総合的な教育もしていただけたらと夢みている。

 大学時代、教えを受けた欧米の先生方は「国際人とは、まず自国をよく知る人。トゥービー、インターナショナル。ビー、ナショナル」と語られながら日本文化を称賛し、日本のお稽古ごとをすすめられた。私は合気道、日本舞踊、三味線を習ったが、年を経るごとに良きアドバイスであったと感謝している。

 良き日本人の教育とは、美しい日本文化を心と身体で知り、世界に向かって心を開いて献身していく素地を育てていくことではないだろうか。


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http://sankei.jp.msn.com/life/news/111001/edc11100107420001-n1.htm