国会での活動報告詳細

2010年8月24日
【質問主意書】一問一答形式(8月3日提出、政府答弁書8月20日)

・国立追悼施設建設に対する菅総理大臣の認識に関する質問主意書
(内閣参質175第14号)
(平成22年8月3日提出、政府答弁書8月20日)

民主党は党の「政策集インデックス二○○九」の中で、「靖国神社はA級戦犯が合祀されていることから、総理や閣僚が公式参拝することには問題があります。何人もがわだかまりなく戦没者を追悼し、非戦・平和を誓うことができるよう、特定の宗教性をもたない新たな国立追悼施設の設置に向けて取り組みを進めます。」と明記している。
 また、菅総理大臣は本年六月十五日の参議院本会議で、自由民主党の佐藤正久議員の質問に対し「靖国神社は、A級戦犯が合祀されているといった問題などから、総理や閣僚が公式参拝することには問題があると考えておりまして、総理在任中に参拝するつもりはありません」と答弁した。
明治維新以来、国のために命を捧げられた戦没者の御霊を祀る靖国神社は、わが国の戦没者慰霊の中心的施設として国民に定着し、今も年間参拝者が六百万人を超える、国民の祈りの場である。民主党の意図する「新たな国立追悼施設」の建設は、戦没者慰霊に思いを寄せる国民世論を分断するものと考える。
そこで、以下のとおり質問する。

一 多くの戦没者は、国家が靖国神社に祀ってくれることを信じ、「靖国で会おう」と散華された。国のために殉じられた御霊を靖国神社にお祀りするのは国と戦没者との約束といえる。
新たな国立追悼施設の建設は、この約束を踏みにじることになると考えるが、総理の見解を示されたい。

二 靖国神社の存在を無視するかのような新たな国立追悼施設の建設は、百三十年以上にわたる国民の心のつながりの解体につながる恐れがあると考えるが、総理の見解を示されたい。

(政府答弁)
一から二までについて
お尋ねの「新たな国立追悼施設」については、何人もがわだかまりなく戦没者を追悼し、非戦・平和を誓うことができるよう、特定の宗教性を持たない施設とすることとされており、同施設の建設が「国と戦没者との約束」を踏みにじみるもので、「百三十年以上にわたる国民の心のつながりの解体につながる恐れがある」との御指摘は当たらないと考えられる。

三 平成二十三年度予算概算要求に国立追悼施設に関する調査費は含まれるか。

(政府答弁)
三について
 平成二十三年度予算の概算要求は本年八月末が期限とされ、現在作業を進めているところであり、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。


・内閣総理大臣による靖国神社参拝といわゆる「A級戦犯」に対する菅総理大臣の認識に関する質問主意書
(内閣参質175第15号)
(平成22年8月3日提出、政府答弁書8月20日)

菅総理大臣は本年六月十五日の参議院本会議で、自由民主党の佐藤正久議員の質問に対し「靖国神社は、A級戦犯が合祀されているといった問題などから、総理や閣僚が公式参拝することには問題があると考えておりまして、総理在任中に参拝するつもりはありません」と答弁した。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 日本は、昭和二十七年四月二十八日サンフランシスコ平和条約の発効により独立を認められ、同年五月一日には法務総裁が、東京裁判での戦犯は「平和条約発効と共に撤回されたものとする」という主権回復した国家としての通達を出した。また、四千万とも言われる多くの国民の赦免署名が集まり、昭和二十八年八月三日「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が衆議院本会議において全会一致で可決され、その後、遺族援護法や恩給法の改正案も与野党の賛成で可決された。国際的にはサンフランシスコ平和条約第十一条の約諾に基づき、関係十一か国の同意を得て、昭和三十一年いわゆる「A級戦犯」は赦免された。
 これらの事実が示すとおり、国内法上も国際条約上も日本において「戦犯」はおらず、先の答弁のような理由で靖国神社参拝を否定する菅総理大臣の姿勢は、法の正義と秩序に反する重大な問題ではないかと考えるが、総理の考えを示されたい。

二 日本が法治国家であり国際条約を遵守する国であるなら、本会議場で総理大臣として、今や法的に存在しない「A級戦犯」なる発言をすることは、正しい姿勢ではない。立法府とサンフランシスコ平和条約の約諾に基づく関係諸国政府の同意を無視する菅総理大臣の発言の意図を明らかにされたい。

(政府答弁)
 一から二までについて
 御指摘の法務総裁による通達は、「連合国の軍事裁判により刑に処せられた者の国内法上の取扱いについて」(昭和二十七年五月一日付け法務府法意総発第五二号)を指すものと考えられるが、同通達は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約五号。以下「平和条約」という。)発効前の、我が国における人の資格(任命若しくは就職又は罷免若しくは失職等にかかる条件又は許可、認可、登録若しくはその取消又は業務の停止等にかかる条件を含む。)に関する法令の規定の適用について、軍事裁判により刑に処せられた者は、日本の裁判所においてその刑に相当する刑に処せられた者と同様に取り扱うべきものとしていた従前の解釈を改めたものである。また、御指摘の戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議(昭和二十八年八月三日衆議院本会議)は、政府に対して戦争犯罪による受刑者の全面赦免の実施を促進するための措置を要望したものであり、御指摘の戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)及び恩給法(大正十二年法律第四十八号)の改正は、いわゆる戦犯として拘禁中に死亡した者の遺族に遺族年金等を支給するための措置等を講ずることとしたものであり、さらに、いわゆるA級戦争犯罪人として極東国際軍事裁判所において有罪判決を受けた者のうち、昭和三十三年四月七日付けで、同日までにそれぞれ服役した期間を刑期とする刑に減刑された者が十名いるが、赦免された者はいない。このように、御指摘の通達、決議及び法改正並びに減刑の措置は、いずれも、御指摘のような趣旨でいわゆる戦犯を赦免したものではない。
 したがって、お尋ねの菅内閣総理大臣の答弁が「法の正義と秩序に反する重大な問題」であり、「立法府とサンフランシスコ平和条約の約諾に基づく関係諸国政府の同意を無視する」ものであるとの御指摘は当たらない。


・選択的夫婦別姓に対する菅内閣の認識に関する質問主意書
(内閣参質175第16号)
(平成22年8月3日提出、政府答弁書8月20日)

政府の男女共同参画会議(議長仙谷由人内閣官房長官)は「選択的夫婦別姓の導入」を第三次男女共同参画基本計画に関する答申に盛り込んだとされる。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 答申に先立って、福島瑞穂男女共同参画担当相のもとで「選択的夫婦別姓の導入」について、男女共同参画会議は、どのような議論を何時間ほど行ったのか。議事録の分量はどのくらいか。それぞれ具体的に示されたい。

(政府答弁)
 一について
 福島瑞穂前内閣府特命担当大臣(男女共同参画)の在任期間である平成二十一年九月十六日から平成二十二年五月二十八日までの間に開催した男女共同参画会議(基本問題・計画専門調査会等を含む。以下同じ。)においては、選択的夫婦別氏制度について、その実現に向けた早期の取組が必要との観点からの様々な意見等が述べられたが、当該意見等に係る発言時間については、それぞれの意見等を述べるのに要した時間を記録していないことからお答えすることは困難である。当該意見等に係る議事録の分量は、およそ四千字である。

二 答申に先立って、パブリックコメントが約一万三千件寄せられたというが、「選択的夫
婦別姓の導入」についての賛否はどうであったか。それぞれの割合を具体的に示されたい。

(政府答弁)
 二について
 平成二十二年四月十六日から同年五月十二日までの間、男女共同参画会議基本問題・計画専門調査会は、「第三次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」に関する意見募集を行った。選択的夫婦別氏制度の導入については、反対の意見が多かったものと認識しているが、提出された意見について個々の施策ごとの件数の集計は行っていないため、お尋ねの「賛否」の割合を具体的にお示しすることは困難である。

三 夫婦別姓は、親子別姓家族となる。平成十三年の民間団体の調査では、両親が別姓になったら「嫌だと思う」、「変な感じがする」と都内の中高生の六割が回答した。男女共同参画会議の中で、「選択的夫婦別姓の導入」が家族崩壊につながっていかないか等の意見は出されたか。また、そのような意見は議論全体でどの程度の割合であったか。

四 ファミリーネームがなくなることで、子供の育ちにどのような影響があるか。この点について、男女共同参画会議では、どのような議論があったか、具体的に示されたい。

五 男女共同参画会議では、「選択的夫婦別姓」が社会の基礎単位である結婚制度を弱体化していくのではないかということに対する議論がなされたのか。具体的に示されたい。

(政府答弁)
 三から五までについて
 男女共同参画会議においては、選択的夫婦別氏制度について、その実現に向けた早期の取組が必要との観点からの様々な意見等が述べられたが、御指摘の点についての意見は述べられていない。

六 「仕事上、結婚して氏が変わることで不利をこうむる」という主張があるが、現実には通称使用が現場などで柔軟に認められるケースが増えている。むしろ、そちらを進めていくべきではないか。政府の方針と見解を示されたい。

(政府答弁)
 六について
 御指摘のような意見があることは承知している。

七 通称使用を認めていない業界とはどのような業界か。政府はどの程度把握しているか。

(政府答弁)
 七について
 お尋ねの「通称使用を認めていない業界」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

八 夫婦別姓の夫婦の家族の戸籍はどのような形になるか。政府の方針と見解を示されたい。

(政府答弁)
 八について
 氏を異にする夫婦の家族の戸籍の編製については、法務大臣の諮問機関である民事行政審議会からの平成八年一月三十日の答申を踏まえて検討する必要があると考えている。


・日韓基本条約を無視する仙谷内閣官房長官の発言に関する質問主意書
(内閣参質175第17号)
(平成22年8月3日提出、政府答弁書8月20日)

 仙谷由人内閣官房長官は本年七月七日の記者会見で昭和四十年締結の日韓基本条約の見直しを示唆した。
 日本と韓国の補償問題をめぐっては、日韓基本条約で決着済みであり、条約締結の際に日韓両国が結んだ「請求権・経済協力に関する協定」でも両国政府と両国民間の請求権は「完全かつ最終的に解決」と正式に確認している。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 国際条約をこのような形でひっくり返していけば、秩序は守られず、両国間の信頼、友好親善関係ばかりでなく、日本の国際社会での名誉が損なわれるとは考えないのか。政府の考えを示されたい。

二 日韓基本条約の見直しについて、具体的にどんな課題を想定しているのか。

(政府答弁)
 一から二までについて
 お尋ねの「国際条約をこのような形でひっくり返し」及び「日韓基本条約の見直し」の意見が必ずしも明らかではないが、大韓民国との間では、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号)第二条1において、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が・・・完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。
 その上で、政府としては、朝鮮半島出身者の遺骨の返還について、大韓民国政府との協議を踏まえ人道的観点から可能な限り対応していくなどの取組を行う考えである。

三 平成七年十月五日の参議院本会議にて、当時の村山富市首相は「韓国併合条約は当時の国際関係等の歴史的事情の中で法的に有効に締結され、実施されたものであると認識をいたしております。」と発言している。この村山元首相の発言について、政府はどう評価しているか、明確に示されたい。

四 日韓併合条約について、政府は村山元首相の発言のあった平成七年当時と同様の解釈をもって有効であると考えるか。

(政府答弁)
 三から四までについて
 政府の見解は、日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(昭和四十年第二十五号)第二条に規定されているとおりであり、従来の立場を変更した事実はない。


・菅内閣における拉致問題への取組に関する質問主意書
(内閣参質175第18号)
(平成22年8月3日提出、政府答弁書8月20日)

 菅総理大臣は、平成二十二年六月十八日、拉致問題対策本部会合を開催し、家族会・救う会などに「拉致問題への取組」三項目(以下「現方針」という。)を文書で通知した。
 政府の拉致問題対策本部は平成十八年に安倍内閣によって設置され、以降六項目の「対応方針」(以下「旧方針」という。)を明文化してきた。しかし、今回菅内閣が家族会・救う会などに通知した現方針三項目と、自民党政権下の旧方針六項目を比較すると、重要な点が削除されている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 現方針では、旧方針にあった「対話と圧力」方針が削除され、それにともない、制裁実施と追加制裁検討すなわち「現在、政府としては、北朝鮮に対して、人道支援の凍結措置(平成十六年十二月二十八日発表)、万景峰九十二号の入港禁止を含む諸措置(平成十八年七月五日発表)、北朝鮮のミサイル等に関連する資金の移転防止等の措置(平成十八年九月十九日発表)、すべての北朝鮮籍船の入港禁止やすべての品目の輸入禁止を含む諸措置(平成十八年十月十一日発表)等を講じているが、今後の北朝鮮側の対応等を考慮しつつ、更なる対応措置について検討する」(旧方針二項)と、(朝鮮総連などの違法行為に対する)「厳格な法執行を引き続き実施」(旧方針三項)が削除されている。つまり圧力の部分を削除しているのだが、これは何故か。その理由を具体的に示されたい。

二 現方針では、「「特定失踪者」にかかる事案を含め、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に関する捜査・調査等を引き続き全力で推進していく。また、捜査・調査の結果、新たに拉致と認定される事案があれば、北朝鮮側に対して然るべく取り上げていく。」(旧方針五項)がすべて削除されているが、これは何故か。その理由を具体的に示されたい。

三 現方針では、拉致実行犯の引き渡し要求すなわち「拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡し」(旧方針一項の一部)が削除されているが、これは何故か。その理由を具体的に示されたい。

四 一〜三に記述した部分が完全に削除されたことは、政府の重大な政策転換であると考えるが、見解を示されたい。

五 一〜三に記述した部分の削除は、北朝鮮に対して間違ったメッセージを送ってしまうとは考えないか。

(政府答弁)
 一から五までについて
お尋ねの項目について言及されていない理由は、本年六月十八日に開催した第二回拉致問題対策本部会合において、「生存者の即時帰国に向けた施策」及び「安否不明の拉致被害者に関する真相究明」の二つを達成すべき最重要課題としたからであるが、御指摘の「拉致問題における今後の対応方針」において揚げられていた事項についても、引き続き、取り組んでいくことに変わりはなく、「政府の重大な政策転換である」、「北朝鮮に対して間違ったメッセージを送ってしまう」といった御指摘は当たらない。