国会での活動報告詳細

2010年10月29日
【質問主意書】第三次男女共同参画基本計画に関する質問主意書

・第三次男女共同参画基本計画に関する質問主意書
(内閣参質176第47号)
(平成22年10月19日提出、政府答弁書10月29日)

菅総理は本年十月一日の衆参両院本会議での所信表明演説で、「働く女性を応援し、男女共同参画を推進します」と述べている。男女が個性と能力を発揮し、機会の平等が与えられる社会の形成は重要であると考えるが、現在進められている第三次男女共同参画基本計画(以下「第三次基本計画」という。)策定作業では、その手続きに問題があり、また、内容面でも、ある一定の思想や観念によるものと思われる記述が随所に盛り込まれているように思われる。
そこで、次の事項について質問する。

一 平成二十一年十一月二十六日の男女共同参画会議で配布された「第三次基本計画策定のスケジュール(案)」では、今春のパブリックコメントに続き、今秋にも、同会議からの答申をうけた第三次基本計画案の取りまとめに際し、パブリックコメントを予定していた。しかし、本年七月二十三日の同会議で配布されたスケジュールでは、今秋のパブリックコメントをすることなく年内に第三次基本計画を閣議決定するとされている。パブリックコメントは、広く国民から意見や情報を得る重要な機会であると考えるが、この機会を取りやめとした理由を示されたい。

(政府答弁)
一について
内閣府においては、第三次男女共同参画基本計画について、早い段階で広く国民から意見を募集することにより、できる限り国民の意見を反映し、その策定過程の透明化を図るため、平成二十二年八月三日から同月三十一日までの間、第三次男女共同参画基本計画に盛り込むべき具体的施策に関する提案募集を行ったところである。


二 今春に実施したパブリックコメントで寄せられた約一万三千件の約三十パーセントにあたる約四千件が、選択的夫婦別姓問題について記載されている第二分野に集中しており、第六十回「男女共同参画会議基本問題・計画専門調査会」の議事録を見ても、同会議の事務局が「選択的夫婦別姓の法制化反対とか、男女の違いを尊重すべきではないか、専業主婦の立場から特定の生き方を押しつけるものではないかという御意見が特に多かった分野です」と述べている。それにもかかわらず、その後の「第三次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」(以下「答申」という。)には、それら多くの意見が反映されていないばかりか、同会議では検討すら行われていない。パブリックコメントの役割について、政府の考えを示されたい。また、それらの意見を反映せずに答申作成に至った理由について説明されたい。

(政府答弁)
二について
いわゆるパブリックコメントは、国の行政機関が、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的とするものである。
男女共同参画会議基本問題・計画専門調査会(以下「専門調査会」という。)は、第三次男女共同参画基本計画の策定過程の透明化を図るため、平成二十二年四月十六日から同年五月十二日までの間、「第三次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」に関する意見募集を行った。専門調査会においては、当該意見募集により提出された意見も踏まえて調査が行われ、同年七月、「第三次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」(平成
二十二年七月二十三日男女参画会議答申。以下「答申」という。)の案となる「第三次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」(以下「答申案」という。)が取りまとめられたものと承知している。


三 答申では、「国際規範に履行義務がある」と述べており、履行義務がある女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ「民法改正が必要」との踏み込んだ記述がなされている。しかし、平成二十一年一月十三日に閣議決定された、谷岡郁子参議院議員提出の質問主意書に対する答弁書(内閣参質一七一第一号)では、国際規範の勧告への履行義務はないとしている。答申に書かれている履行義務は、政府見解と異なり、国民に混乱を生じさせる可能性があるため削除すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
三について
御指摘の「履行義務がある」との記述は、御指摘の「女子差別撤廃委員会の最終見解」について述べているものではなく、女子に対するあらゆる形態の差別の撤退に関する条約(昭和六十年条約第七号)等我が国が締結国である国際約束を念頭に置いて述べたものである。なお、御指摘の「女子差別撤廃委員会の最終見解」については、法的拘束を有するものではないと理解している。


四 第二次基本計画では、「人工妊娠中絶については刑法及び母体保護法において規定されていることから、それらに反し中絶の自由を認めるものではない」と明記してあるが、答申では、「『すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、並びに出産する時を責任をもって自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、並びに最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを得る権利』とされている」と記述されている。わが国の法律では、人工妊娠中絶は禁止されており、答申の記述は日本における「リプロダクティブ・ヘルス」の解釈を逸脱するものと考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
四について
御指摘の答申の記述については、平成七年に開催された第四回世界女性会議において我が国を含む百八十九か国により採択された行動綱領(以下「北京行動綱領」という。)において、「妊娠中絶に関わる施策の決定または変更は、国の法的手順に従い、国または地方レベルでのみ行うことができる。」とされていることから、国内法に反して中絶する自由を認めるものではないと認識している。


五 答申では、「『リプロダクティブ・ヘルス/ライツ』(性と生殖に関する健康と権利)の考え方が認識されてこなかった」とあるが、この場合の「ライツ」とは、中絶を権利として捉え、胎児の生命権を認めないことを意味するとして、国際社会では異論がある。それ故、第二次基本計画では、そういう意味での「ライツ」の表現はしていない。どのような経緯で、この表現が答申に記述されることとなったのか示されたい。

(政府答弁)
五について
御指摘の記述については、専門調査会において、北京行動綱領の「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」に関する記述を踏まえ、答申案に盛り込まれたものと承知している。


六 答申では、「人工妊娠中絶・生殖補助医療に関する法制度について、多様な国民の意見を踏まえた上で検討が行われる必要がある」と記載されているが、どういう経緯で人工妊娠中絶等の法改正に言及することとなったのか、説明されたい。

(政府答弁)
六について
御指摘の記述については、専門調査会において、我が国の生殖補助医療等の現状を踏まえ、答申案に盛り込またものと承知している。


七 子宮頸がんの予防についてはこれまで基本計画には記述されていなかったが、今回答申にこの施策が入った経緯について示されたい。

(政府答弁)
七について
子宮頸がんの予防については、専門調査会において、平成二十一年十月に子宮頸がんワクチンが承認されたこと等の最近の状況変化を踏まえ、答申案に盛り込まれたものと承知している。


八 答申には、「固定的性別役割分担意識」という言葉が多用されており、「固定的性別役割分担意識の解消」が各分野の施策としてあげられている。
第二次基本計画では、「『ジェンダー・フリー』という用語を使用して、性差を否定したり、男らしさ、女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと、また、家族やひな祭り等の伝統文化を否定することは、国民が求める男女共同参画とは異なる」と記されているが、「固定的性別役割分担意識の解消」とは、男らしさ、女らしさや性差を否定する「ジェンダー・フリー」という用語と同様の意味で用いられるものなのか、説明されたい。

(政府答弁)
八について
「固定的性別役割分担意識の解消」とは、男性、女性という性別を理由として役割を固定的に分ける考え方を解消することであり、男らしさ、女らしさや性差を否定するものではない。


九 答申では、「家事、育児、介護、ボランティア活動などの無償労働の把握」を行うと記述されているが、これはどういう目的でどういうことを行うのか、示されたい。
また、家事、育児、介護は無償労働であると考えるのか、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
九について
お尋ねの「無償労働の把握」は、賃金や報酬が支払われない家事、育児、介護、ボランティア活動等について、その担い手や時間等を把握し、目に見える形で表すこと等を目的とするものである。


十 答申では、「女性は家庭を守る又は家計の補助的に働くという固定的性別役割分担意識が女性にも残っている」とされているが、家庭を守ることを自ら選択し、生きがいとしている多くの女性がいるにもかかわらず、そのような生き方を否定しているようにもとれる。また、このような表記では、「主婦」という生き方を選択する女性への支援や配慮に欠けると感じるが、政府の考えを示されたい。

(政府答弁)
十について
答申は、男性、女性を問わず固定的性別役割分担意識の解消が必要であることを指摘したものであり、「主婦」等個人が自ら選択するライフスタイルを否定するものではない。


十一 家族は社会の基礎単位であり、家族を守る政策を推し進めることは重要である。
しかしながら、答申に、「配偶者控除の縮小・廃止を含めた税制の見直しの検討」や「世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行」が記述されているのは、家族を守る政策の重要性を理解していないのではないか。
「世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行」を進める政策を実行していけば、家族の解体にもつながっていくと考えるが、政府の考えを示されたい。また、家族を守る政策について、政府の考えを示されたい。

(政府答弁)
十一について
政府としては、共働き世帯の増加などの家族形態の変化やライフスタイルの多様化に対応するため、片働きを前提とした世帯単位の社会制度・慣行を、ライフスタイルの選択に中立的に働くように改め、男女が共に仕事と家庭に関する責任を担える社会を構築することが重要であると考えており、御指摘の「世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行」を進める政策の実行が、家族の解体につながるとは考えていない。
また、お尋ねの「家族を守る政策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、男女共同参画社会基本計画法(平成十一年法律第七十八号)第六条においては、「男女共同参画社会の形成は、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。」と定められている。


十二 子ども手当が来年度も一万三千円(月額)であるなら、年少扶養控除の廃止により、三歳未満児をもつ年収七百万未満の三人世帯では、むしろ負担増になるとの試算がある。これは、政府による「世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行」の先行実施といえるのではないか。年少扶養控除廃止の理由、哲学を示されたい。

(政府答弁)
十二について
いわゆる年少扶養控除については、所得再配分機能の回復や「所得控除から手当へ」との考えの下で、支え合う社会づくりの第一歩として、子どもの養育を社会全体で支援するとの観点から、子ども手当の創設とあいまって、廃止することとしたものである。


十三 答申には、「『ジェンダー予算』の実現にむけた調査研究を行う」と記されているが、これは何を意味するものか。また、男女共同参画会議でどのような議論があってこれを記述することとなったのか、経緯についても説明されたい。

(政府答弁)
十三について
お尋ねの「ジェンダー予算」とは、答申において「政策策定、予算編成、執行、決算、評価など予算の全過程に男女共同参画の視点を反映し、男女共同参画を促進するようにしていくこと」とされており、御指摘の記述については、専門調査会において、各国で多様で具体的な取組が行われていること等を踏まえ、各国の具体的な実施事例の調査を行うこと等を想定して、答申案に盛り込まれたものと承知している。


十四 答申には、「性的指向(異性愛、同性愛、両性愛)を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要である」とあるが、男女共同参画会議でどのような議論がなされこのような記述を盛り込んだのか、経緯を示されたい。
また、異性愛は「性的指向」なのか、政府の考えを示されたい。さらに、異性愛を理由として困難な状況に置かれている場合に人権尊重の観点からの配慮が必要とは、どういう意味なのか、具体的に示されたい。

(政府答弁)
十四について
御指摘の記述については、専門調査会において、男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会の実現に向けて、性的指向を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一障害などを有する人々についても、対応が必要であることの観点から、答申案に盛り込まれたものと承知している。
お尋ねの「異性愛」については、「性的指向」の内容を明確にする観点から、その態様の一つとして記述したものであり、「異性愛を理由として困難な状況に置かれている場合」を具体的に想定して記述したものではない。