国会での活動報告詳細

2011年2月4日
【質問主意書】電磁波に関する質問主意書

電磁波に関する質問主意書
(内閣参質177第29号)
(平成23年1月26日提出、政府答弁書2月4日)

私たちの身の回りには、目に見えない電磁波が飛び交っており、携帯電話、ワイヤレスブロードバンドなどの普及により、電磁波の量は飛躍的に増加していると考えられ、それにつれて、これらの電磁波が健康に影響を及ぼしているのではないかと不安を感じている人が増加している。特に携帯電話やワイヤレスブロードバンドの基地局から発せられる高周波の電磁波に対しては、その安全性について疑問の声があがっている。
そこで以下のとおり質問する。

一 電磁波過敏症について、政府はどのように認識しているのか。

(政府答弁)
一について
世界保健機関(以下「WHO」という。)が御指摘の「電磁波過敏症」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー二百九十六においては、その症状が電磁界曝露と関連するような科学的根拠はなく、また、これは医学的診断でもなければ単一の医学的問題を表しているかどうかもはっきりとしていないとの見解が示されており、政府としては、現時点では、これについての医学的な疾病概念は確立していないものと考えている。

二 電磁波による健康被害について、政府が把握している件数とその概要を示されたい。

(政府答弁)
二について
政府としては、携帯電話等からの電磁波による健康被害であることが医学的に明らかになった事例は承知していない。

三 欧州諸国では、電磁波過敏症は社会的に認知されつつあり、公的保険の対象として治療が受けられる。また、アメリカでも電磁波過敏症の専門医が患者のケアを行っている。日本においても専門医の設置、公的保険の適用を推進していくべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
三について
一についてでお答えしたとおり、政府としては、現時点では、御指摘の「電磁波過敏症」についての医学的な疾病概念は確立していないものと考えており、お尋ねの「専門医の設置」については、検討の段階にはないものと考える。
また、我が国の医療保険制度においては、疾病ごとに保険適用の対象となるか否かを定めておらず、検査、処置等の診療行為ごとに保険適用の対象となるか否かを定めているところである。このため、御指摘の「電磁波過敏症」であるか否かにかかわらず、頭痛などの症状に対する診療行為については、当該行為が医学的な必要性に基づき疾病に対するものとして適切に行われている場合には、医療保険の適用対象となるものである。

四 スウェーデンのストックホルム市では、自治体が、電磁波過敏症の発症者に対し、より電磁波漏えいの少ない電化製品への交換や、遮蔽フィルムを貼ったり塗料を塗ったりといったリフォーム費用を負担または補助しており、さらには、電磁波過敏症の発症者が働き続けられるように雇用主にも対策を求めているという。日本においてもこのような支援や対策を考えていくうえで、調査を進めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
四について
政府としては、従前から、電磁波の人体に対する影響等について、国内外の情報の収集、各種研究調査、これらの成果に係る情報の提供等に取り組んできているところであり、引き続きその着実な実施に努めてまいりたい。

五 欧米では疫学調査に基づき、低周波の規制値を四〜十ミリガウスまでとしているのに対し、日本では千ミリガウスとしている。世界保健機関は、低周波の新環境保健基準を発表し、この中で四ミリガウス以上での小児白血病のリスクを認めており、日本でも低周波の規制値を欧米並みに強化する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。また、日本の規制値を甘くしたことについて、規制値の具体的根拠を示し、経緯を説明されたい。

(政府答弁)
五について
WHOが超低周波電磁界の健康影響についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百二十二においては、高レベルの磁界への短期的曝露によって生じる健康影響に関しては、国際非電離放射線防護委員会(以下「ICNIRP」という。)等が示す国際的な曝露ガイドラインの制限値を規制基準値として採り入れるべきであるとの見解が示されているが、低レベルの磁界への長期的曝露によって生じる健康影響に関しては、その科学的根拠が不確かであり、恣意的に低い曝露限度の採用に基づく政策は是認されない等の見解が示されている。その上で、欧米諸国において四ミリガウスから十ミリガウスまでの値を国内全域で採用している例は承知していない。
また、同ファクトシートにおいては、低レベルの磁界への長期的曝露によって生じる健康影響に関して、〇・四マイクロテスラ(四ミリガウスに相当)程度の超低周波電磁界と小児白血病の間に、因果関係があるといえるほどの強い証拠は見当たらないとの見解が示されている。
我が国においては、電力設備から発生する超低周波電磁界に関しては、これまで規制を行っていなかったが、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループが、同ファクトシートの見解を踏まえ、平成二十年六月に報告書を取りまとめたことを受け、現在、経済産業省原子力安全・保安院において、電気工作物の保安及び公共の安全の確保の観点から、平成二十二年十一月にICNIRPにより発表された「時間変化する電界および磁界へのばく露制限に関するガイドライン(一ヘルツから百キロヘルツまで)」に基づき、新たに規制を策定することを検討しているところである。

六 高周波の規制値は、欧州などでは、一平方センチメートルあたり〇・一〜十マイクロワットとされているのに対し、日本は千マイクロワットとされている。欧州などのように予防原則の立場から、より厳しい規制に改める必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
六について
電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三に規定する御指摘の「高周波の規制値」については、ICNIRPにより平成十年四月に発表され、WHOが遵守することを推奨している「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン(三百ギガヘルツまで)」に定められている規制基準値と同等であることから、現時点において、これを見直す必要はないと考えている。なお、同ガイドラインの規制基準値と同等の値は、欧州連合加盟国を始め、多くの国で採用されていると承知している。

七 携帯電話の電磁波を規制する動きとして、比吸収率(SAR)という安全基準が設けられている。フランスの法律では「フランス国内で販売される全ての携帯電話は、比吸収率(SAR)をフランス語で明確に表示しなければならない。また、通話中の頭部への電波ばく露を制限する付属品の使用推奨にも言及しなければならない。」とされている。日本でも総務省令により、毎キログラム当たり二ワットの許容値を満たすことが義務づけられてはいるが、一般的にこの比吸収率(SAR)について知られていないのが現状である。携帯電話購入の際の検討要素として、この比吸収率(SAR)も、より周知されるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
七について
御指摘の「比吸収率」の概念及び無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二に規定するその具体的な規制値については、総務省が全国各地で開催している電波の安全性に関する説明会や、パンフレット等を通じて周知しており、引き続きその着実な実施に努めてまいりたい。また、携帯電話事業者各社においては、ホームページ等を通じて、携帯電話端末ごとの比吸収率の値を周知していると承知している。

八 岩手県滝沢村では、電磁波や低周波による影響などの調査研究や規制について「滝沢村環境基本条例」が施行されており、全国の他の市町村においても、携帯電話基地局の設置に関する条例などが施行されている。電磁波の人体への影響を考慮した法律の制定、規制の強化が急務と考えるが、政府の見解を示されたい。

九 フランスでは、電磁波による子供の健康への影響を考慮して「保健省は、六歳以下の子ども向けの電波放射機器の販売または無料配布を禁止する法律を制定することができる。」と法律で定められている。ロシアの国立非電離放射線防護委員会は「十六歳以下の子供は携帯電話を使うべきではない」、イギリスの国立放射線防護委員会は「八歳未満の子供には携帯電話を使わせないように」、カナダのトロント市公衆衛生局は「八歳以下の子供達には固定電話を」、アイルランドのアイルランド医師環境協会は「十六歳以下の子供には携帯電話を使用させないように」と、携帯電話の子供達の体への影響を考慮した規制・勧告・要請を行っている。日本においても電磁波の子供達の体への影響を考慮した法律の制定、規制の強化が急務と考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
八及び九について
電磁波の人体への影響に係る措置については、携帯電話に関しては、六について及び七についてでお答えしたとおり、すでに電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)に基づき、電波法施行規則及び無線設備規則において、規制値等を定めているところである。また、電力設備に関しては、五についてでお答えしたとおり、新たに規制を策定することを検討しているところである。
政府としては、このような対応により、子どもを含む人の健康に対し、十分に安全の確保が図られるものと考えている。

十 携帯電話基地局の設置に関する住民と携帯電話会社との紛争について、政府が把握している件数と概要を示されたい。

(政府答弁)
十について
携帯電話用基地局の設置に関し、携帯電話事業者と当該基地局の周辺地域の住民との間で訴訟により係争中となっているものの件数は、平成二十二年末現在において三件と承知しているが、それぞれの訴訟の内容については承知していない。