国会での活動報告詳細

2011年2月15日
【質問主意書】尖閣諸島への上陸及び実効支配に関する質問主意書

・尖閣諸島への上陸及び実効支配に関する質問主意書
(内閣参質177第48号)
(平成23年2月7日提出、政府答弁書2月15日)

中国政府によって「海島保護法」が施行され、そして昨秋に発生した尖閣諸島沖における中国漁船によるわが国海上保安庁の巡視船への衝突事件の真相も明らかにされない中で、行政区域を管轄する石垣市では平成二十二年十二月「尖閣諸島開拓の日」を定める条例が制定された。それに先立つ平成二十二年十月に同市議会で決議された「尖閣諸島上陸視察決議」に基づき提出された要請につき、平成二十三年一月七日、政府は、「島の現況にも変化がないこと、(略)同条(地方税法第四百八条)は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものではないこと」などを理由に尖閣諸島への上陸を認めない結論を出した。
そこで以下のとおり質問する。

一 平成二十三年一月七日に出された「尖閣諸島への上陸要請に対する政府の検討結果」には、「尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、我が国は現にこれを有効に支配している。したがって尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と記されているが、国際社会に対し、尖閣諸島が日本固有の領土であることを、さらに明確に意志表示する必要があると考えるが、政府としての考えを示されたい。

(政府答弁)
一について
政府としては、尖閣諸島に関する我が国の一貫した立場に関し、国内外で正しい理解を得るべく、外務省のホームページによるものを含む対外発信を強化しているほか、様々な機会を捉え外交ルートを通じた働きかけを行っており、今後とも努力していく考えである。
 
二 昭和五十三年に尖閣諸島魚釣島に雌雄一対のヤギが持ち込まれ、現在では大繁殖している。環境省自然局は、「一九九一年船上から行われた島の片側の簡単な目視調査だけで三百頭以上が目撃され、海岸域の一部では草原の拡大が始まっている。全島は森林に覆われていることから、カウント数は生息数の一部にすぎない可能性が高く、今後一層急速な大増殖と激しい植生破壊、裸地化、土壌流亡などが進行する可能性がある」と指摘している。また、富山大学の横畑准教授による人工衛星による画像調査では、平成十五年時点でヤギの影響により裸地化したと考えられる部分は、平面図上で魚釣島全域の十二・三七%を占めていることがわかっており、平成十二年から平成十八年までに南斜面で新たな崖崩れが相次ぎ、その最大のものは幅百五十メートルに及んでいたことが判明した(平成二十年分析)。
さらに、魚釣島にしか存在しない固有の動植物(センカクモグラ、センカクサワガニ、センカクツツジなど)が十一種ほど存在しているが、海岸の砂浜に生えるセンカクアオイなどは、ヤギの食害により絶滅した可能性が高いとれ、日本生態学会は、平成十五年の第五十回大会総会決議として「尖閣諸島魚釣島の生態系の現状を把握するための上陸調査を早急に実施すること」、「野生化ヤギ排除のための事業を早急に実施すること」の二点の要望を政府及び関係自治体に行った。
このような事例があるにもかかわらず、政府が「島の現況にも変化がない」と判断した理由を示されたい。

(政府答弁)
二について
固定資産税における土地の評価は、土地の地目別に行い、その地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置くものとされており、魚釣島、北小島、南小島及び久場島の固定資産税における地目は、現在、原野とされている。
政府としては、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっていることから、土地の現況に地目の認定が変わるような変化が生じているとは考えておらず、地方税法(昭和25年法律第二百二十六号)第四百八条に基づく固定資産税課税のための実地調査についての石垣市からの要請に対する回答においては、「島の現況にも変化がない」との判断を示したものである。 


三 「沖縄県自然環境保全条例」の第八条では「市町村は、国及び県の自然環境の保全に関する施策に協力するとともに、当該市町村の区域の自然的社会的諸条件に応じて、自然環境を適正に保全するための施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する」と定められている。本条例に基づく対策を実施するためにも、石垣市による実地調査は不可欠と考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
三について
国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の魚釣島等の貸借の目的に取らして、政府としては、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっているところであり、市町村の自然環境の保全に関する一般的な責務を定めた御指摘の条例を根拠として、お尋ねのような石垣市による尖閣諸島の実地調査が不可欠であるとは考えていない。

四 香港の週刊誌「亜州週刊」二〇一〇年九月二十六日号には、平成二十二年九月十三日、二人の保釣人を乗せ出発した台湾の保釣船に台湾海巡署は護衛十二隻の艦艇を派遣したと掲載されているが、本件に関し、日本政府としてはどのような対応をとったのか示されたい。
また、同誌で、中華保釣協会総幹事長の黄錫麟氏が、「平成二十三年六月十七日に世界中の華人が千隻の船を集め、尖閣諸島へ行こう」と呼び掛け、これが中華ネットにも波及しているという情報が掲載されているが、本件に関する情報収集や、しかるべき対策を政府として検討しているのか示されたい。

(政府答弁)
四について
尖閣諸島の領有権に関する独自の主張を行うことを目的として御指摘の船舶に関しては、政府としては同船舶が出航する前の時点から一貫して、財団法人交流協会を通じて台湾側に同船舶の出航を阻止するよう申入れを行っていたが、同船舶が、我が国領海内に侵入するおそれが生じたことから、海上保安庁の巡視船艇等により警告等を実施し、これを阻止した。
政府としては、今後とも、平素より関連情報の収集を行い、関係省庁において当該情報の共有を図るとともに、情勢に応じて警備体制を強化するなどにより、引き続き、必要な警備を厳正かつ適切に実施していくこととしている。

五 一から三までを鑑みても、「尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理」を遂行するためには、行政区域を管轄する石垣市が上陸調査や灯台の設置、避難港の整備に着手することが、「我が国は現にこれを有効に支配している」ことになると考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
五について
 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いないところであり、現に我が国はこれを有効に支配している。このことは、御指摘の対応を行うか否かにより変わるものではない。