国会での活動報告詳細

2011年6月7日
【質問主意書】ハーグ条約の締結に向けた準備に関する質問主意書

・ハーグ条約の締結に向けた準備に関する質問主意書
(内閣参質177第164号)
(平成23年5月27日提出、政府答弁書6月7日)

一 政府は本年五月二十日、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(以下「ハーグ条約」という。)について「締結に向けた準備を進める」ことで閣議了解をしたが、「締結に向けた準備を進める」段階で締結が不適切と考えた場合には、締結を止めることもあり得ると考えてよいのか。

(政府答弁)
 一について
  国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称。以下「ハーグ条約」という。)については、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に向けた準備について」(平成二十三年五月二十日閣議了承)により、その締結に向けた準備を進めることとし、また、ハーグ条約を実施するために必要となる法律案を作成することとしている。政府としては、今後かかる作業を進めた上で、ハーグ条約の締結について国会の承認を求める考えである。

二 閣議了解までしておきながら、ハーグ条約の和訳、仮訳が今も外務省から発表されていないのはなぜか。また、いつ発表するのか。

(政府答弁)
 二について
  一般に、日本語を正文をしない多数国間条約の和文は、当該条約の締結について国会の承認を求める閣議決定を経て確定することとしているところ、ハーグ条約については、締結に向けた準備を進めることについて閣議了解が行われた段階であり、その和文については、今後、ハーグ条約の締結に向けた準備を進める中で検討していくこととなる。

三 条約締結に向けての決定を、このように唐突に閣議了解することはあまり例がないと考える。菅首相がG8で発表したいため急いだともいわれている。なぜ閣議了解はこの時期だったのか。また、これまで、ハーグ条約の締約国のうち、何か国に対し、どのような実態調査をし、政府内で議論したのか。具体的な政策と内容をもって示されたい。

(政府答弁)
 三について
  政府としては、ハーグ条約の締結の可能性について、子の福祉の観点から、各方面から寄せられた意見も踏まえつつ、関係府省庁の副大臣会議を計七回開催して慎重に検討を続けてきた結果、ハーグ条約の締結に向けた準備を進めることとしたところである。本件については、国内で大きな関心が寄せられていることから、この段階で政府としての方向性を閣議了解により示すことは有意義であると考えたものである。
  ハーグ条約の締結国における運用状況については、外務省において、アメリカ合衆国、英国、カナダ、オランダ及びスイス並びにハーグ国際私法会議事務局(以下「条約事務局」という。)に職員を派遣して調査を行ったほか、在外公館や在京大使館を通じての調査、条約事務局が公表している種々のデータの分析等を通じ、情報収集に努めてきている。政府としては、これらの調査や情報収集の結果について、関係府省庁の副大臣会議等の場で共有し、検討を進めてきたところである。

四 国内での実態調査もしたと聞くが、聞き取り調査をしたのは何例か。

(政府答弁)
 四について
  外務省においては、平成二十二年五月から同年十一月までの間、国際的な子の連れ去り問題の当事者となった経験のある国民を対象にアンケート調査を行い、六十四件の回答を得たほか、当事者として直接ヒアリングを実施するなど、常居所を有していた国への返還後に子が置かれる状況や子を連れ去るに至った事情等について実態の把握に努めてきている。また、関係府省庁の副大臣会議においても、ハーグ条約に賛成する者及び反対する者の双方からヒアリングを実施したところである。

五 ハーグ条約の主要締約国の司法判断において、返還命令と返還拒否の割合はおよそ七対三と外務省は説明している。主要締約国とはどの国を指すのか。それぞれの国の返還命令と返還拒否の割合を示されたい。

(政府答弁)
 五について
  条約事務局が平成十五年当時のハーグ条約の締結国七十四か国を対象に実施した調査によれば、同調査に回答した四十五か国が同年に受領した子の返還申請のうち、返還命令が発せられたものは三百六十一件、返還が拒否されたものは百五十七件である。御指摘の「七対三」の割合は、これらの件数を用いて算出したものである。