国会での活動報告詳細

2012年8月7日
【委員会 質疑】 参議院 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会

参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会
平成24年8月6日
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。
 公述人の皆様、貴重な御意見や示唆に富む御意見、ありがとうございました。
 まず、池本公述人にお伺いしたいんですけれども、低年齢児保育、長時間保育の子供への影響を検討すべきと、保育時間に関する統計が日本にはないと、諸外国にはあるからと。
 実はこれ、私も問題意識をずっと持っておりまして、例えばオランダとかデンマークなんかは夕方四時とか五時までですね、長くても。それから、ゼロ歳児保育、スウェーデンはやっていないとか、諸外国でも国策としてゼロ歳児保育をやっている国というのはないと思います。ところが、今回、三党合意に至る前の政府の資料では、今後五年間で、ゼロ歳、一歳、二歳の保育児を五割増しにしていくという、待機児童解消というよりも、極めてずさんな統計の積算で、ゼロ、一、二歳児を人工的に保育園児増やしていくというようなことがあったんですけれども。
 私は、まず統計を取ること、そして低年齢児保育、特にゼロ歳児保育あるいは長時間保育というのがいいのかどうなのかということを、そもそも論を議論すべきだと思いますけれども、ずっと私も厚生省に言ってきたんです。それから、ゼロ歳児の一か月の保育料、公費も含めて幾らですかというのもずっと厚生労働省は出してこなかったんですよ。やっと十七万円と、これうそなんですね。一番財政基盤の弱いところで十七万円、東京都では、今、吉田公述人がおっしゃられたように、五十万円以上掛けているところもあるという。ゼロ歳児、一か月一人の赤ちゃんに平均で三十万ぐらい、多いところでは五十数万、これが適正でしょうかと。
 質のいい保育というのは、実は家庭教育を長時間、家庭で親が愛着の形成できることではないかというような議論、もう一方であっていいと思うんですが、それが全く今まで起きてこなかった。そうしたことに関して様々な思い、池本さんおありだと思いますけれども、まず統計を取ってほしいというようなことを求めたいというような御意見かと思いますが、その辺、いかがでしょうか。
○公述人(池本美香君) 今回、自民党さんの方でゼロ歳児への親が寄り添う保育という言葉を見て、そこから私もいろいろ調べ始めましたら、OECDの三十四か国全部、その保育時間があるのに、多分、日本と韓国だけだったと思います。
 保育時間をそもそも、そこ問題で、漠然とは皆さん思っているんですけれども、きちんとそこを検証してこなかったことは非常に問題で、そこできちんとデータを踏まえた上で、それがいいのか、また諸外国では、長時間の保育と短時間の保育でどういうふうに子供に影響が及ぶのかですとか、そういったことも研究がされていますし、また、コンセンサスとして、ゼロ歳児の保育というのは一般的に子供にいい影響は持たないんじゃないかというコンセンサスがあるという文献もありますし、また、一歳児以上はいいんだけれども、その場合も、時間の問題ですとか、親の仕事が、非常にストレスで親がいらいらしていたりすることは子供に悪影響を及ぼすということで、どういったバランスであれば子供にもよくて、また女性も働けるかというそのバランスが慎重に検討され、それの上に制度が乗っているということがありましたので。
 日本はまず、本当におっしゃるとおり、データもなければそこの議論も研究も進んでいないというところでして、でも現場の幼稚園の先生なりでは、その辺り、現場の経験なりも踏まえていろいろ御発言されている方もいらっしゃいますし、そういったところの意見もきちんと踏まえ、また、何よりも保護者が、恐らく、今女性が働けていない、育児休業があっても結局就業率が上がっていないのは、育児休業が終わったら、じゃ、もうずっと子供と、残業をしてという働き方ではやはり寂しいんだといって辞めていっている同僚も何人もおりますので、程々の普通の人がバランスよくやりたいという理想と、また子供への影響の検証も踏まえた検討が必要かと思っております。
○山谷えり子君 吉田公述人にお伺いいたします。
 エンゼルプラン、新エンゼルプラン、少しも効果がなかったじゃないかと。エンゼルプランといっても、トータルな政策ではなくて、もう保育所に偏って、病児保育とか延長保育とか、そうした待機児童解消とか、そこだけを重点的にやっていったから効果がなかったのではないかとおっしゃられましたが、私も全くそうだと思います。
 子ども・子育て支援政策の総合化、部分最適から全体最適へと、ここをきちんとみんなのコンセンサスを得ながら議論していく必要があると思うんですね。特に、在宅子育て家庭への支援の強化というのをこの資料の中に書いてくださっておりますけれども、人口問題基本調査で国民にゼロ歳から三歳まで子育てに専念した方がいいかどうか聞いたところ、実は二十代、三十代の八割がその方がいいと、四十代から六十代では九割がその方がいいと言っている。つまり、国民の思いというのはそっちなのに、厚生労働省がやっぱり違うところをやってきたのではないかという思いがするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○公述人(吉田正幸君) お答え申し上げます。
 私は、ゼロか一かという二者択一ではないと思っていまして、恐らく子供が小さいうちにはやっぱり親として私が子供とかかわってという、それは子供のためだけじゃなく、親が親として成長する時間というのは当然必要だろうと思います。しかし一方で、やっぱりせっかく築いてきたキャリアを閉ざしたくない、これもやっぱり本音だろうと思います。
 つまり、一〇〇%家庭に閉じこもるということでもなく、だからといって、じゃ、八時間も十時間も毎日働くかというとそうでもない。まさに、その辺のバランスの取り方だろうと思いますし、子供にとっても四六時中、じゃ、お母さんとばかり一緒にいたらいいのかというと、恐らく決してそうではない。乳児期の早いうちは、これはもう脳科学でもアタッチメントは大事だということにはなっていますが、それ以降については、親を始め、親以外の多様な大人とかかわるということが極めて子供の成長に重要だと、こういう研究もございますので、今その辺が、家族も核家族化して小さくなった、地域コミュニティーもなくなったということで、子育て家庭だけで考えるのではなくて、その子育て家庭を取り巻く地域社会、コミュニティーの在り方も含めて考えなければ恐らく私は答えは出ないのではないかと。基本的にはおっしゃる方向だとは思いますが、やはりトータルの議論が必要だろうというふうに思います。
 以上です。
○山谷えり子君 菅家公述人にお伺いいたします。
 そこで、トータルな物の見方という意味で両立支援法の実現を連合は求めていらっしゃるわけですが、私も大変に共感することたくさんございます。例えば、育児・介護休業制度の周知徹底と制度利用による不利益取扱いを禁止するよう行政指導を強化するとか、短時間勤務は請求権とする、育児については子が中学校就学の始めに達するまで請求できることとするとか、所定外労働の免除は対象となる子の年齢を三歳までから中学校就学の始めに達するまでに引き上げるとか、育児、介護を行う者が請求したとき休日労働、変形労働を免除する措置を設ける等々、本当にこれは大切なことだと思いますけれども、これ、連合としては、これからどのように運動を展開していこうと思っていらっしゃいますか。
○公述人(菅家功君) なかなか難しい御質問だというふうに思いますけれども、やはり労使の話合いも重要でありますし、それから与野党の皆さんに我々のいろんな意見をお願いをする等々、そういった過程を通じながら理解を深めていっていただきたいなというふうに思っておりますし、あるいは、その地域において様々な過程を通じて訴えていく等々、いろんなチャンネルを通じながら運動を進めていきたいというふうに思っておりますし、それから、今、連合として、働くことを軸とする安心社会というキャンペーンを行っておりまして、それを具体的に実現する方策について一生懸命研究を始めておりまして、そういったものを通じまして世の中に訴えてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○山谷えり子君 永井公述人にお伺いいたします。
 今日の御意見の中では御披露いただけなかったんですけれども、ちょっと文献を読ませていただきまして、これからの子供の育ちには多様な人間関係や体験が必要だと、地域社会の中で様々な年齢の方、高齢者との交流も含めて、そうした場をたくさんつくっていくことが大事ではないかというような御意見をお持ちと思っております。
 それで、私、安倍内閣のとき、教育再生担当の総理補佐官をしておりまして、実は学童保育というのは、児童福祉で小学校三年生までで、親が働いているお子さんをということなんですが、そういう時代ではないんではないかと。親が働いていようがいまいが、それから、小学校三年で区切ってしまうんではなくて、小学校六年生まで学校などで放課後、地域の人が参画して、もう実は私が子供を育てた世田谷区では全ての六十四の小学校でそれが行われております。私はPTAの会長と、それから教育委員としてそれにかかわりながら、大変に良いやり方だというふうに思っております。
 それを全国展開したいと思いまして予算を付け始めていたんですね。ところが、それが政権交代でストップしてしまったんですけれども、私は、学童保育で専従者、もちろん専従者は一人いる必要はあると思います。しかし、学童というのは二時とか三時から夕方六時ぐらいまででいいわけですから、時給千円ちょっとで地域の方が、もうたくさん参加したいという方がいらっしゃるので、それもすばらしい方たちなんですね。
 そういうふうにすれば、非常にコストが安く、そしてその地域社会の教育力を高める、それから、大きな家族、どの子も我が子と思えるビッグファミリーというものをつくることができるという意味でいいのではないかというふうに思っているんですけれども、そのような放課後学童とそれから放課後活動の在り方について何か御意見あればお聞かせください。
○公述人(永井聖二君) 今御発言いただいたことに私も基本的にとても大事なことだというふうに賛成なんですが、学童期を中心として、子供同士の関係、あるいは多様な大人とどうかかわっていくのかということが人格形成上、非常に重要なわけであります。
 これについては、これまで従来の社会の中では自然な地域社会の中でそういう機能が果たされていたわけですけれども、その地域社会の状況が変化してきているわけですので、それを補う場として新たに学童保育のようなものを是非つくっていくということ、これをもっと大事にしていくということは非常に大事なことだというふうに思っております。
 おっしゃるように、地域の教育力をいかにしてここに結集していくのかと。ボランティアでいろいろそういうことについて活躍したいというふうに希望してくださる方も大変多いわけでありまして、こういう一つの地域の教育力の拠点として、就労の状態にかかわりなく、子供たちが集う学童保育、また年齢的にも更にそれを範囲を拡大するというようなものが是非今後拡充されていってほしいというふうに思っております。
○山谷えり子君 貴重な御意見、皆様ありがとうございました。具体的な制度設計に生かしていきたいと思います。
 ありがとうございました。