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2012年5月22日
【質問主意書】 欧州評議会議員会議の決議一八一五に関する質問主意書

●欧州評議会議員会議の決議一八一五に関する質問主意書
(内閣参質180第109号)
(平成24年5月14日提出、政府答弁書5月22日)
 EU諸国では、電磁波は環境汚染因子の一つとして認識されており、電磁波に関する意識調査を行うなど、その関心が高まっている。日本もオブザーバーとして参加している欧州評議会の議員会議において二〇一一年五月二十七日に採択された決議一八一五「電磁場の潜在的な危険性と環境におけるそれらの影響」(以下「決議」という。)について、以下質問する。

一 決議理由の前文パラ三には、「世界中に百四十万を超える携帯電話基地局が存在し、(中略)多数の基地局と地域無線ネットワーク増加のせいで、住民は無線周波数電磁波に被ばくしている」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
一について
 御指摘の携帯電話用基地局等から発射される電磁波については、我が国においては、電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)等で、国際非電離放射線防護委員会(以下「ICNIRP」という。)により平成十年四月に発表され、世界保健機関(以下「WHO」という。)が遵守することを推奨している「時間変化する電界、磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(三百ギガヘルツまで)」に定められている基準と同等の基準を定めるとともに、携帯電話用基地局等の開設に当たっては、電波の強さが当該基準を超える場所に人が立ち入らないよう、安全施設の設置を義務付けており、政府としては、これらにより当該電波による人体への危害の防止が図られているものと考えている。

二 決議理由の前文パラ四には、「公的なしきい値以下で被ばくした場合でさえ、人体と同様に植物や昆虫、動物における生物学的な影響や非熱効果、潜在的な有害性があるようだ」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
二について
 御指摘の公的なしきい値以下で非電離放射線に被ばくした場合における生物学的な影響や非熱効果及び潜在的な有害性については、その科学的根拠は承知していない。また、WHOが「超低周波電磁界へのばく露」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百二十二においては、高レベルの電磁界への短期的ばく露については、健康への有害な影響が科学的に確立されており、ICNIRP等が作成している国際的なばく露ガイドラインを採用するべき旨の見解が示されているが、ICNIRP等は超低周波電磁界への長期的な低レベルのばく露による健康への影響に関する科学的証拠はばく露制限値の引下げを正当化するには不十分とみなしている旨や、恣意的に低いばく露制限値を採用する政策は是認されない旨の見解も示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。

三 決議理由の前文パラ五には、「予防原則が適用されるべき。(中略)警告が無視された場合、特に若者や子どものような傷つきやすい集団において、極めて高い人的・経済的損失につながるだろう」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
三及び四について
 予防的な取組方法については、平成四年の国連環境開発会議(地球サミット)で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」の第十五原則において、各国により、その能力に応じて広く予防的な取組方法を適用することが求められていることを踏まえ、我が国においては、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第四条に、「環境の保全は、(中略)科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行わなければならない。」と規定し、また、同法第十五条に基づく「環境基本計画」(平成二十四年四月二十七日閣議決定)にも、環境影響が懸念される問題については、科学的証拠が欠如していることをもって対策を遅らせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという予防的な取組方法の考え方に基づいて対策を講じていくべきであることを環境政策における原則等の一つとして位置付けている。
 政府としては、予防的な取組方法の考え方を具体的な場面でどのように当てはめていくかということについては、国際的な議論の動向も踏まえつつ、検討していくこととしており、電磁波の健康への影響についても、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集や、実験動物等を用いた調査等の研究の実施により、科学的知見の充実に努めつつ、必要な施策を講じてまいりたい。

四 決議理由の前文パラ六には、「高いレベルの科学的、医学的証拠を待つことは、過去に起きたアスベストや加鉛ガソリン、タバコのように、非常に高い健康コストと経済コストにつながるだろう」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。

五 決議の勧告八.一.一には、「電磁場、特に携帯電話からの無線周波数、そしてとりわけ頭部の腫瘍のリスクが最も大きいように見える子どもや若者への被ばくを減らすために、合理的な対策をとること」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
五について
 御指摘の電磁場、特に、携帯電話からの無線周波数については、WHOが「携帯電話」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー百九十三においては、携帯電話の使用による脳腫瘍のリスクの上昇は立証されなかったものの、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの更なる研究が必要である旨の見解が示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、子供の携帯電話の使用による影響調査、携帯電話からの電磁波による発がんリスク等の情報提供の在り方等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。

六 決議の勧告八.一.三には、「特に生殖年齢の若者やティーンエイジャー、とりわけ子どもをターゲットにした、人間の健康や環境における潜在的に有害な長期間の生物学的影響のリスクに関する意識向上キャンペーンや情報を加えること」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
六について
 御指摘の子供をターゲットにした電磁波の健康への影響に関する普及啓発については、政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施し、これらにより得られた情報や研究成果について、関係各省による説明会やホームページ等を通じた情報提供を行っているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。

七 決議の勧告八.一.四には、「電磁場の不耐性の症候群に苦しむ『電磁波過敏症』の人々に細心の注意を払い、彼らを守るために、特別な対策を導入すること。それは無線ネットワークで覆われていない電磁波フリーのエリアを作ることを含む」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
七について
 御指摘の電磁波過敏症については、WHOが「電磁過敏症」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー二百九十六においては、電磁過敏症の症状を電磁界へのばく露と結び付ける科学的根拠はなく、また、電磁過敏症は医学的診断でもなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかも不明である旨の見解が示されている。政府としては、現時点では、御指摘の電磁波過敏症についての医学的な疾病概念は確立していないものと考えているが、電磁波の健康への影響に関する知見等について、引き続き、情報収集を行ってまいりたい。

八 決議の勧告八.二.一には、「全ての屋内環境で、マイクロ波への長期被ばくのレベルのための予防的しきい値を設けること。予防原則に従って〇・六ボルト毎メートルを超えず、中期で〇・二ボルト毎メートルに減らすこと」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
八について
 御指摘の屋内環境でのマイクロ波への長期的な被ばくのレベルのための予防的しきい値については、WHOが「基地局及び無線技術」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百四においては、家庭、オフィス及び多くの公共エリアに設置された無線ネットワークからのRF(無線周波)へのばく露のレベルは非常に低く、無線ネットワークからの弱いRF信号による健康への影響について説得力のある科学的証拠はない旨の見解が示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。

九 決議の勧告八.四.四には、「新しい無線施設アンテナの位置を、単に事業者の関心に従うだけでなく、地方や地域政府の担当者、地域住民、懸念する市民の団体と相談して決めること」との記述がある。本件についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)
九について

 御指摘の「新しい無線施設アンテナ」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、携帯電話用基地局の開設に当たっては、これまでのところ、携帯電話事業者は、総務省の要請に基づき、携帯電話用基地局の周辺地域の住民への説明を十分に果たしているものと考えており、現時点で新たな対応が必要とは考えていない。