国会での活動報告詳細

2012年7月17日
【質問主意書】 北京常設展示館事業に関する質問主意書

●北京常設展示館事業に関する質問主意書
(内閣参質180第182号)
(平成24年7月9日提出、政府答弁書7月17日)

平成二十四年五月三十一日、警視庁公安部は外国人登録法違反などの容疑で在日中国大使館の李春光元書記官を書類送検した。李元書記官は、鹿野農水大臣(当時)や筒井農水副大臣(当時)らと、日本の農産物の対中輸出促進事業計画を進めていたことが明らかになっている。現在、農水省内に「展示館事業に係る論点調査チーム」と「機密保持に関する調査チーム」が発足し、調査を進めているところと承知している。
そこで、以下のとおり質問する。

一 本件に関しては、農林水産省の機密文書が外部に流出した可能性が疑われ、現在、省内に「展示館事業に係る論点調査チーム」と「機密保持に関する調査チーム」が発足し、内部調査を進めているところと承知しているが、そもそも当時の大臣や副大臣など政務三役が関与している件につき、省内だけの調査チームで真相究明ができるのか甚だ疑問である。第三者によって構成される調査チームでの真相究明が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
一について
農林水産省は、本年六月二十九日に、「機密保持に関する調査結果(中間報告)」(以下「機密保持調査結果」という。)及び「北京常設展示館事業に係る論点の調査結果(中間報告)」(以下「論点調査結果」という。)を公表したところであり、今後、機密保持調査結果及び論点調査結果について、検察官であった者を含む弁護士三名程度による法律的見地からの評価及び助言(以下「第三者評価」という。)を実施することとしている。

二 本年二月二十四日付、李元書記官名で農林水産大臣宛てに「中国農発食品有限公司は、高端農産品展示会に出品される米及び粉ミルクの受け入れについて中国農発食品有限公司が北京海関、北京検疫と協議し、了解を得ており、責任をもって受け入れますのでお送りください」という内容の確認書が発信されていたことが明らかとなっている。本来、相手国には大使名で外務省あてに発信するのが正式のプロトコールと考えるが、過去に書記官が我が国の各省の大臣あてに、直接、手紙を出した例はあるか。

(政府答弁)
二について
お尋ねの「手紙」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また調査に膨大な時間を要するため、お答えすることは困難である。なお、御指摘の「正式のプロトコール」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外交使節団と接受国の外交機関との間で用いられる連絡手段としては、口上書が一般的で
あると承知している。

三 「機密保持に関する調査チーム」による「機密保持に関する調査結果(中間報告)の概要」によると、外部に流出した「機密性三」の四点の資料のうち、「米の需給見通しについて」の資料は、鹿野前大臣説明用と筒井前副大臣説明用の二種類が存在し、外部に提供された資料は筒井前副大臣説明用資料だったことが明らかとなっている。そして、本資料の配布を受けた筒井前副大臣及び作成者を含む六名の職員は、外部へは提供していないと回答しているとされる。また、同様に一般社団法人農林水産物等中国輸出促進協議会(平成二十三年七月十一日設立)の代表理事は公電の写しを受け取ったことを認めているが、誰からもらったのか覚えていないとの回答をしている。
本件の経緯に鑑みれば、流出の事実が判明している以上、警察に告発すべきと考えるが、農林水産省はなぜ告発をしないのか。
また、情報流出は国家の威信に関わる問題である。最終的に関係者のヒアリングを終え、提供の事実が確認されなかった場合の政府の今後の対応方針を示されたい。

(政府答弁)
三及び四について
機密保持調査結果においては、「今後の米の需給見通しについて」と題する資料は、作成した時点には国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項に規定する「秘密」に該当していた可能性があり、農林水産省の一般職の職員が当該資料を外部へ提供したことが明らかとなった場合、同項に規定する守秘義務の違反を理由として告発することも含め、関係当局と相談することとしたところである。
今後、同省は、一についてでお答えしたとおり、機密保持調査結果について、確認した事実関係が犯罪に該当するか否かも含め、第三者評価を実施し、この中で、告発についても意見を聴くとともに、関係当局とも相談し、告発について判断することとしている。
なお、同省の外部に提供されたことが確認された資料については、当該提供を行った者の特定について必要な情報等の提供を引き続き関係者に求めているところであり、今後とも、その特定に努める考えである。

四 前記三における「米の需給見通しについて」の資料内容は、作成当時は国家公務員法第百条第一項の「秘密」に該当していた可能性があり、外部への提供が「国家公務員法第百条第一項に違反するかどうか検討に値する」と岩本農水副大臣は発言しているが、今後の検討について政府の見解を示されたい。

五 李元書記官との面識等につき、前記三の中間報告によると、鹿野前大臣が出席した五回の会合及び筒井前副大臣が出席した七回の会合に元書記官も出席したものの、一対一で面会したことはないとされる。他方、一部報道では、本年三月二日に千代田区内のホテルで鹿野前大臣と会食、筒井前副大臣も昨年一月には中国国有企業の代表の来日を元書記官らと空港に出迎え、一緒に新潟に視察に行ったこともあるとされる。「機密保持に関する調査チーム」は、この事実も把握しているのか。
また、大臣や副大臣が対外的に面談するに当たり、リスクマネジメントの観点からも一対一というシチュエーションは現実離れしていることが容易に想像できるが、敢えて「一対一での面会」という限定的な項目で調査を行っている理由について、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
五について
農林水産省が機密保持調査結果を取りまとめるために設置した「機密保持に関する調査チーム」においては、御指摘の「本年三月二日に千代田区内のホテルで鹿野前大臣と会食」したとの報道については承知していないが、鹿野農林水産大臣(当時)が昨年三月二日に在日本国中国大使との東京都千代田区における夕食会において李元書記官と同席したこと及び筒井農林水産副大臣(当時)が同年一月に中国国有企業の代表者の来日を李元書記官らと空港に出迎え、新潟県における視察に同行したことについては把握しており、これらの事実を踏まえて、機密保持調査結果を公表したところである。また、御指摘の「一対一での面会」については、当事者同士で密かに相談が行われたものではないことを示すために、機密保持調査結果に記載したものである。

六 平成二十二年十二月九日、筒井前副大臣と中国農業発展集団総公司との間で覚書が締結された。過去に政府が一企業と覚書を締結した例はあるか示されたい。

(政府答弁)
六について
各府省庁の政務三役と国内外の企業が「覚書」という名称で過去五年間に作成した文書の有無について調査したところ、筒井農林水産副大臣(当時)と劉中国農業発展集団総公司董事長との間で作成した覚書(以下「本件覚書」という。)以外に該当する文書は、現時点では確認されていない。

七 農水省の「展示館事業に係る論点調査チーム」の中間報告によれば、「政府と企業が覚書を締結することは一般的ではないが、外務省からフレンドリー・アドバイスがあったこともあり、形式・内容両面から法的拘束力がないことを確認の上で覚書が締結されたことを確認」とある。この「フレンドリー・アドバイス」とは、どのようなことを指しているのか。また、一般的ではない政府と企業間の覚書が何故交わされたのか。

(政府答弁)
七について
お尋ねの「フレンドリー・アドバイス」とは、非公式な助言のことである。
また、本件覚書は、国際約束ではなく、法的拘束力がないものとして、農林水産省と中国農業発展集団総公司との間で相互に協力を行う意図を確認するために作成したものである。

八 平成二十三年二月四日、鹿野前大臣は中国側から常設展示館の場所を確保するために必要と求められ、中国農業発展集団総公司に対して声明を書簡で出したというが、実質的に政府保証したことになると考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
八について
昨年二月四日に作成した鹿野農林水産大臣(当時)の声明(以下「本件声明」という。)は、国際約束ではなく、法的拘束力はないものとして発出しており、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費については、「日本側(中国輸出促進協議会(仮称))が賃料を含め開設に伴う経費・・・を負担することを基本とする」と記述し、民間事業体である一般社団法人農林水産物等中国輸出促進協議会(以下「協議会」という。)が負担する内容としている。
本件声明における農林水産省の役割は、あくまでも、所掌及び利用可能な予算の範囲内で協議会の設立及び活動を支援することとしており、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費の支払に係る債務を保証する内容は含んでいない。

九 平成二十三年十二月、協議会から農水省に対し、輸出倍増サポート事業の補助金(上限二千五百万円)の交付申請が行われたが、展示館がオープンしていないことから、補助金は交付されなかった。しかし、そのような中で同年十二月二十五日、野田首相は筒井前副大臣の要望で中国の展示館を視察している。補助金が交付されず、オープンもされていない展示館について、前日になって急にスケジュールを変更してまで視察日程に組み込んだことは異例であると考える。何故、野田首相は視察したのか。

(政府答弁)
九について
 筒井農林水産副大臣(当時)から野田内閣総理大臣に対し、北京常設展示館を視察してほしい旨の要請があり、北京空港到着後、空港からの移動の途中で短時間、同内閣総理大臣が立ち寄ることとしたものである。

十 農水省は展示館事業に関連し、協議会の設立に向け関係団体や都道府県に対する参加の働きかけや定款案等を作成し、さらに、昨年十二月二十五日に訪中した野田首相は筒井前副大臣からの強い要望により展示館を視察するなど、一民間団体に対する支援としては異例とも言える対応をしている。しかしながら、日本政府が本事業の債務負担を求められていることに関しては、政府は民間団体がやったことと説明しており、説明には矛盾があると考えるが、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
十について
 農林水産物・食品の輸出促進は、東日本大震災後、我が国の農林水産物・食品に対する諸外国の輸入規制が続く中、我が国にとって重要な政策課題であることから、農林水産省は、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務を支援するとともに、野田内閣総理大臣の北京常設展示館への視察を提案したものである。一方、このような取組を行
ってきたことと、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費に対する支援を行うか否かの判断を行うことは別の問題であると認識しており、「説明には矛盾がある」との御指摘は当たらないと考えている。

十一 本事業に関連し、都道府県知事宛てには鹿野前大臣署名の協議会への賛同を呼び掛ける文書を発信、一月二十八日開催の中国輸出促進会議終了後には筒井前副大臣名にて都道府県知事と関係企業社長宛てに参加意向伺いの文書を発信している。本事業に関し、農水省担当者が各種団体や企業に対して個別に説明を行ったと承知しているが、説明を行った団体・企業名を示されたい。また、民間団体の事業に際し、農水省が個別に訪問し説明をすることについて、政府の見解を示されたい。

十一について
本年二月から六月頃にかけて、農林水産省の筒井農林水産副大臣(当時)及び一般職の職員が、農林水産業関係団体、食品産業関係団体及び食品企業等(以下「団体及び企業」という。)に対し、当時予定されていた鹿野農林水産大臣(当時)が参加する農林水産物・食品の輸出促進のための訪中団への参加及び協議会の設立への協力を働きかけたところである。このような働きかけは、中国への農林水産物・食品の輸出の促進が重要な政策課題であることから、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務への支援の一環として行ったものであり、このように、政策目的を円滑に達成するために関係する民間事業者等に対し説明及び協力要請を行うことは、これまでも一般的に行ってきているところである。
働きかけを行った団体及び企業の具体的な名称については、公にすることにより当該団体及び企業の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

十二  「展示館事業に係る論点調査チーム」による展示館事業の今後の在り方の検討について、中間報告では、「改めて中国農業部との連携を深め、その上で農林水産省が一定の役割を果たすことが重要であると考えられる」と記されているが、「一定の役割」とは具体的にどのような役割を想定しているのか。さらに、農水省が本事業を今後行っていくということか。その場合、参加する民間団体・企業の事業とも深く関連することから、政府が果たす役割を逸脱するおそれがないのか、政府の見解を示されたい。

(政府答弁)
十二について
これまで農林水産省においては、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務への支援の一環として団体及び企業の意向確認等を行ってきたところであるが、論点調査結果における同省の「一定の役割」とは、中国農業部及び中国国家質量監督検験検疫総局との調整等の内容を踏まえながら、行政としての立場から、民間事業者が行う事業に
関与していくことを想定したものである。