国会での活動報告詳細

2012年7月24日
【質問主意書】 米エネルギー省提供の放射線測定データに関する質問主意書

●米エネルギー省提供の放射線測定データに関する質問主意書
(内閣参質180第189号)(平成24年7月11日提出、政府答弁書7月24日)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故直後、平成二十三年三月十七日から十九日に米国エネルギー省が米軍機で放射線測定を実施し、詳細な「汚染地図」データを提供したにもかかわらず、政府は放置したまま公表せず、地域住民の避難に活用していないことが新たに判明した。
 報道によると、在日米国大使館経由で三月十八日と二十日の計二回、外務省に電子メールで提供され、同省が経済産業省原子力安全・保安院と、線量測定の実務を担っていた文部科学省に転送したが、いずれも公表せず官邸や原子力安全委員会にも伝えなかったとされる。
 本件に関し、以下質問する。

一 本データは、SPEEDIによる試算データと異なり、放射能の拡散方向を示す実測値が示されており、公表・活用されていれば住民が放射能拡散方向へと避難する事態を防げたと考えるが、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)一について
 お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、平成二十三年三月十八日以降に米国エネルギー省から提供を受けた御指摘の「汚染地図」データ(以下「米国モニタリングデータ」という。)とは別に、文部科学省等は、同月十五日以降に行った放射線モニタリングにおいて、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の北西方向で局所的に高い空間線量率を観測し、同省は、同月十六日以降にその結果を随時公表している。

二 経済産業省と文部科学省の政務三役に本情報が報告されたのはいつか。また、防衛省は本情報をいつの時点で、どこから入手したのか。
(政府答弁)二について
 米国モニタリングデータについて、当時、経済産業省政務三役に報告が行われたという事実は確認されていないが、米国モニタリングデータのうち、平成二十三年三月二十日に外務省事務方が文部科学省事務方に提供したものについては、同月二十一日に同省事務方から同省政務三役に報告が行われた。また、当時、防衛省は米国モニタリングデータの提供を受けていない。

三 SPEEDIの試算結果と本データの照合を実施したのか示されたい。
(政府答弁)三について
 お尋ねの「照合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、当時、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算結果と米国モニタリングデータを比較検討した事実は確認されていない。

四 三月二十三日に米エネルギー省は、データをとりまとめて公表を開始し、同月二十四日以降は毎日〜数日に一回の頻度で外務省から原子力安全・保安院を始めとする関係府省に対し実施結果を送付した。その後、四月六日〜二十九日の間に米エネルギー省と文部科学省が共同して航空機モニタリングを実施し、その結果を五月六日に公表した。他方、政府が飯舘村など五市町村を「計画的避難区域」に指定したのは、事故から一カ月以上経過した四月二十二日であった。こうした対応の遅れの原因について示されたい。
(政府答弁)四について
 一についてで述べたとおり、文部科学省は、平成二十三年三月十六日以降に、同省等が行った放射線モニタリングの結果を公表している。内閣府原子力安全委員会は、当該結果及び国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告等を踏まえ、同年四月十日に、東京電力の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)発生から一年以内に積算線量が二十ミリシーベルトに達するおそれのある区域を計画的避難区域とすることを提案した。原子力災害対策本部は、当該提案を踏まえ、当該区域を含む地方公共団体に事前の説明を行った上で、同月二十二日に、計画的避難区域を設定したものである。

五 外務省から原子力安全・保安院に送付された初期資料は、原子力災害対策本部事務局放射線班には共有されていたことが確認されているが、原子力災害対策本部事務局長等への共有は確認されていない。情報の伝達・共有に関する責任の所在を示されたい。また、今後の対策について示されたい。
(政府答弁)五及び七について
 政府としては、関係機関において、情報の共有を含め連携が不十分であったと認識しており、今後は、外国による放射線モニタリングの結果も含めて、活用手順をあらかじめ定めるなど、適切な対応を行うよう努めてまいりたい。また、本件事故により被害を受けた住民に対しては、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)に基づく東京電力による賠償が適切かつ迅速に行われるよう政府としても万全を期してまいりたい。

六 防衛省は、三月十五日に簡易航空機モニタリング実施のため、原子力安全技術センターの測定要員二名と測定器を乗せた陸上自衛隊の航空機を離陸させたものの、四号機爆発の情報が入り、機長が安全に飛行できないと判断し飛行を中止した。このような事態に備え、無人航空機システムの導入についても検討の余地があると考えるが、政府の見解を示されたい。
(政府答弁)六について
 防衛省は、東日本大震災への対応から得られた教訓も踏まえ、高線量等の環境下における情報収集を有効に行うため、平成二十三年度第三次補正予算において、無人偵察機システムに線量計等を装備させるとともに、可視カメラ等を装備した無人航空機を新たに取得し、それらの有用性を検証する等の経費として約十三億円を計上し、現在、所要の調達を行っているところである。

七 政府の不作為により本データが公表されず、甚大な被害を被った住民の方々への責任を政府としてどのように考えるか。また、これらの住民の方々に対する補償の検討について、政府の見解を示されたい。