2005年度活動報告

参議院 少子高齢社会に関する調査会
平成17年4月20日(水曜日)
 
平成十七年四月二十日(水曜日)
参考人
早稲田大学法学部教授   宮島洋
上智大学法学部教授    堀勝洋
国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官   大日康史

- 山谷えり子君
 本日はありがとうございました。自由民主党山谷えり子でございます。
 宮島先生と堀先生に同じ質問をしたいんですけれども、安心、安定は与えられるものではなくつくり出すもの、社会の安心、安定、これまでは家族や企業が支えてきた部分が大きいという宮島先生、また堀先生は、育児支援は我が国最大の政策課題というふうにおっしゃっていらっしゃいまして、全く同感なんですけれども、学者の先生にはちょっと乱暴で恐縮な質問かもしれませんが、育児手当、奨学金制度、住宅支援、そしてまた年金積立金や福祉施設による支援等々、どのぐらいのバランスで、何千億円あるいは一兆かもしれませんが、どういうバランスでどう掛けるのがこの日本という風土、民族性を考えた場合効果的だというふうにお考えになられますでしょうか。
 それから、大日先生には、終末期医療の問題、尊厳死というような、本当に大事なこれからテーマになっていくだろうと思いますが、消費者に情報提供と医療の選択をしていくということがこれから必要なことになっていくと思うんですが、その場合、薬、ジェネリックの使われ方あるいはセカンドオピニオン(診断や治療方針についての主治医以外の医師の意見)の在り方によって欧米の医療ではどのように医療経済学的に変わってきたか、そしてまた日本ではこれからどういうふうに変えられる可能性を持っているかというようなことをお話しいただきたいと思います。
- 参考人(宮島洋君)
 結論から申しますと、申し訳ありませんがお答えができないというふうに言わざるを得ないのかなというふうに思っております。ただ、余りにそれは無責任でございますので、少し私の考えをお話ししたいと思いますけれども。
 まず、今ございました育児ですとかそれから高等教育の奨学金あるいは住宅に関してでございますけれども、育児に関しましては、今は二つの手段が言われております。一つは児童手当、もう一つは育児控除という税制上の考え、これ実は裏表でございまして、この場合、財源を必要とするという言い方はやや難しくなりまして、手当のように表立って財源を必要とするケースと減税というような形で手当てをするケースと、両面がございますけれども、恐らくこれが、これから相当ここは思い切ってやらざるを得ないと思っておりますのは、従来は仕事を持っている人と持っていない人との間で、例えば専業主婦だと必要はないだろうみたいな意見があったわけですが、恐らくもうそういう段階は越えてきた。そして、ワーキングマザーというものを前提に置きながらこういうことを行ってくるということになりますと、これは少なくともヨーロッパで行われているような規模ぐらいまでは当然考えておく必要があるだろうというふうに私は考えております。この私の表の中に、参考資料の中に一応国際的に見ました家族手当なんかのウエートが書いてありますが、その辺を一つは目安に私は考えております。
 それから、奨学金と、先ほど私がちょっと奨学金の話をいたしましたのは、これからいずれにしても高齢化が進む、ここ二十年ぐらいはもう間違いないわけで、その間は順応政策をやらざるを得ないと。そうしますと、その間は、年金にしても医療にしても、ある程度抑制ぎみでやっていかないと確かにいけない面が出てまいります。そういたしますと、従来のように親の世代が高等教育の費用を基本的に支えていくということがむしろ難しくなってくる。そうなりますと、奨学金というのは、要するに、自分が現在有利子であれ無利子であれ受けて、自分が将来労働力を身に付けて働いていってそこから返していくという、まあ一種の生涯で見た返し方になりますので、そういうことを考えれば、むしろ私は、例えば大学に補助金をたくさん出して授業料を一律に下げるというよりは、場合によっては奨学金を必要とする人を中心にした方がむしろ実態に合うのかなという気が私はしております。もちろん、先ほど実は山本委員がお話しになりましたようなスウェーデンのことでございますけれども、場合によってはいつかどこかで論争させていただきたいかと思いますが。
 それから、住宅につきましては、日本では社会保障という意識が比較的薄くて、住宅はどうも国土交通省の所管事業で公共事業費だというイメージが強いと思いますけれども、やはり若年層のように子供が結婚してだんだん増えていく、あるいはある程度移動があるような場合には良質な賃貸住宅を提供していく。それは、低所得者のための公営住宅とまた違った意味での住宅の提供が必要になっている。これも、企業がそろそろ社宅の整理が、とても社宅のようなことはできなくなってきておりますので、そういう意味での社会保障としての住宅政策の認識というものが私は必要なので、いずれにしてもこれは今後増えていく、増やさざるを得ないものだと思う。量的なこれはめどで申し上げられないのが大変申し訳ないと思いますが。
- 参考人(堀勝洋君)
 住宅手当について若干申し上げますと、小学校は大体設けておるわけですが、一種の育児手当という、あるいは児童手当的なものですね、というのは、児童の数が増えるに従って住宅手当が増えていくという、そういう仕組み。
 そういった費用全体というのはなかなか難しいんですが、先ほどちょっと申し上げました事前に配付いただいていると思う私の論文に幾つかのデータが載っています。冒頭申し上げた研究で調査をやっているんですが、その中で幾つかの回答というのは計算すればできるような仕組みになっている。ただ、育児手当を幾らにするか、月額幾らにするか、それから、例えば中学校まで支給するとか高校まで支給するとか、そういった要素で相当変わる。
 この調査を見ますと、育児手当額については、一万円未満というのが四五・九%、最も多いと。それから、どの範囲かというのは、中学校に入るまでが二八・七%、それから小学校に入るまでというのが一七・九%、こういうことによって変わってくると。
 それからもう一つ。育児手当を支給しても出産、育児への刺激になるかどうかと、こういう問題があるんですね。本来、育児手当とか児童手当は育児の費用のコストで、出産、育児への刺激というのはその副次的なものだと思うんですが、これについて私ども、面白いというか異例な調査をしまして、育児手当の額を大きくしたら子供を持つ気になるかと、こういう質問をしました。その結果は、当然のことながら、否定的意見が五九・四%、六割。しかしながら、肯定的意見も二四・六%と、四分の一が出産、育児に対して効果があると。特に若い世代はこういう効果があるというのが多くて、二十歳代では肯定的な者が三九・四%、三十歳で三二・六%。
 こういうふうにして、育児手当を支給すれば出産、育児の刺激になると言う者に、それでは幾ら出したら効果があるかという、こういう質問をしてみました。それによると、二万円を選択する者が二五・八%、それから次いで三万円とするのが二五・二%、五万円とするのが一七・〇%。そんなに、高齢者の年金ほど、これは年金というのは夫婦で二十四万ですか、半分にすると一人十二万、十万ぐらいですね、高齢者ほどお金は掛からない。しかも、現在では子供の数よりも高齢者の数が多いですから、こういう数値を使って幾ら掛かるかというのをすれば、一定の仮定を設ければ出ると思います。それで、高齢者の年金ほどは掛からないと、そういうことだけ申し上げたいと思います。
- 参考人(大日康史君)
 医療の選択に関して、ジェネリックセカンドオピニオンということを御質問いただきました。ジェネリックに関しては、最近テレビのコマーシャルでも、DTCですね、消費者に直接訴える形でのコマーシャルも増えて、セカンドオピニオンも電子カルテの普及を背景としてやっぱり普及させるという方針を聞いておりますが、それが従来、かかりつけ医あるいは一人の医師の処方や治療内容に関して透明性がなかったわけですが、それに対して患者側がいろいろ他の医師に意見を求めたり、あるいは患者自身がジェネリックを使うということで意見も述べるということで、そういう意味で透明性が高まるということで、それは非常に好ましいことだとは思います。
 ただ、その際に選択される治療内容あるいは医療機関が、我々が言うところの費用対効果的な治療内容あるいはガイドラインに沿った治療内容かというと、ちょっとそれ疑問かなという気がします。
 例えば、ガイドラインで投薬するなと、抗生剤を投薬するなというガイドラインが多々あるわけですけれども、そこで例えばセカンドオピニオンなりいろんな医療機関のお母様方の情報交換で、抗生剤、恐らく出される方を選ぶということになるかと思います。そうなると、本来不必要であった抗生剤の投与、ガイドラインも慎むように書いてあるし、費用対効果的にも悪いんですけれども、消費者は抗生剤を使う医者を選ぶということが懸念されるわけですね。
 そうしたときに、必ずしも消費者の求めているもの、患者が求めているものと費用対効果的な医療政策というのが一致する保証はちょっとないんじゃないかなという部分がありまして、もちろん消費者による選択、患者による選択という部分は進めなければなりませんけれども、同時にガイドラインといいますか、例えば先ほどの例だと、抗生剤の不必要な投与というのは好ましくないよというガイドラインを策定するのであれば、それを消費者にもちゃんと情報伝達して、消費者がそれを、抗生剤の投与を拒否すると。抗生剤を処方するような医療機関、仮にあったとしたら、これはガイドラインに沿ってないので、そこへの受診をやめるというような形で消費者が医療機関を選択してもらえればベストなんですけれども、ちょっとそこまで一足飛びに行けるかどうか、非常に難しい課題だなと、場合によっては背反する課題なのかなという印象を持っております。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは
新しい効能や効果を有し、臨床試験(いわゆる治験)等により、その有効性や安全性が確認され、承認された医薬品を「先発医薬品」、先発医薬品の特許が切れた後に先発医薬品と成分や規格等が同一であるとして、臨床試験などを省略して承認される医薬品を「後発医薬品」(いわゆるジェネリック医薬品)と呼ぶ。
「先発医薬品と後発医薬品について」
(3月28日/厚生労働省 5月28日改訂版)
セカンドオピニオンとは
主治医との良好な関係を保ちながら、複数の医師の意見を聞くこと。医療が進歩してさまざまな治療法が生まれ、医師によって病気に対する考え方が違うことがある。医師や病院によって、 医療技術や診療の質に差があることも考えられる。そこで、患者にとって最善と考えられる治療を、患者と主治医で判断するため、主治医以外の医師の意見を聞くこと。場合によっては、医師を代えることもあります。

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