2005年度活動報告

参議院 外交防衛委員会
平成17年7月5日(火曜日)

- 委員長(林芳正君)
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣官房内閣審議官大石利雄君、内閣官房内閣審議官松井房樹君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、警察庁情報通信局長武市一幸君、防衛庁防衛参事官横山文博君、防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛参事官佐々木達郎君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、金融庁総務企画局審議官大藤俊行君、外務大臣官房審議官遠藤善久君、外務大臣官房審議官西宮伸一君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長天野之弥君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済協力局長佐藤重和君及び外務省国際法局長林景一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
- 山谷えり子君
 自由民主党、山谷えり子でございます。
 ミサイル防衛についてお伺いします。
 二〇〇四年版アメリカ国防省年次報告書では、中国が衛星攻撃用レーザー兵器開発に取り組み、実戦配備計画を持っているとレポート。また、台湾の二〇〇四年版国防報告書では、中国が偵察活動と写真撮影阻止の高エネルギーレーザー兵器を開発したとあります。
 日本はこれをどう受け止めていらっしゃるのでしょうか。軍事衛星が破壊されればMDシステムそのものが機能しないと思いますが、いかがでございましょうか。
- 国務大臣(大野功統君)
 まず、衛星攻撃用レーザーの問題であります。
 これ衛星搭載センサーを言わば盲目化する、破壊するということでございますけれども、本件含めて日米間で様々な情報交換を実施いたしております。
 具体的にどういう情報交換やっているかということは、こういうことでございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に衛星攻撃用レーザーについてアメリカの対応は、一つ、技術進歩が宇宙空間の競争を助長していくこの可能性が非常に強いということであります。したがいまして、将来、衛星などの重要な情報インフラを防護するための研究資源投入、こういうことが必要になる、このようなことを米国は意識しているようでございます。さらに、アメリカのいわゆるトランスフォーメーションにおきましても、努力目標の一つといたしまして、宇宙システムの能力と生存性を高める必要があるということを言及いたしております。
 日本といたしましても、やはりこういう意味で世界の軍事科学技術の動向を十分注視していかなきゃいけないと思いますし、さらに冒頭申し上げましたようなアメリカとの情報交換、これを緊密に進めていかなきゃいけない、このように思っているところでございます。
- 山谷えり子君
 ペンタゴン筋は、二〇〇九年ごろまでに中国は軍事衛星を破壊する能力を持つというような報道も一部ありますし、また、最近、アメリカの元中国大使が、コロラドで中国のレーザー兵器に対抗する武器をアメリカが今開発中だというふうにも言っているようですが、その辺についてはもう少し詳しくお答えできませんでしょうか。
- 政府参考人(飯原一樹君)
 済みません、手元に資料がないので正確なところをお答えはできないことをお許しいただきたいんですが、大臣から今お答え申し上げましたとおり、低い能力の、何といいますか、低エネルギーレーザーでありますと、センサー機能が破壊され得るということから、これ種々のいろいろな技術を使ってそれに対抗する手段を当然米側が研究しているという認識は持っておりますが、詳細なところをお答え今できないことをお許しいただきたいと思います。
- 山谷えり子君
 SM3は七回中六回迎撃に成功、PAC3は十二回中十回迎撃に成功という試験結果でございますが、もちろん一〇〇%ではないわけで、つまり、国内に弾着することを認める政策を日本は取るということなんですけれども、国民はこれで納得するとお考えでございましょうか。
- 政府参考人(飯原一樹君)
 兵器の技術的なところだけお答えをさせていただきますが、現在、米国が既に配備しておるPAC3及び最終段階に来ているイージス艦発射のスタンダードミサイルは、これブーストフェーズ、つまりロケットエンジンを燃焼させている段階を過ぎた後、ミッドコース以降のものを迎撃をすると、こういう性格のものでございます。でございますので、当然、基本的に日本の地理環境を考えますと、公海上ないしはPAC3の場合は我が国領土上で飛んでくるミサイルを破壊するという性格のものでございます。
 他方、発射基地の上空上で破壊をするためには、今よく言われておりますのがレーザーを使うというやり方がございます、言われておりますが、これについてはまだ開発段階でございまして、実用化はされていないというふうに認識をいたしております。
- 国務大臣(大野功統君)
 山谷先生から、国民はこれで納得するのであろうかと、こういう御質問でございます。
 我が国の専守防衛という考え方並びに二重で防御をしていくという考え方、この二重で防御する考え方で、成功率の問題でございます。我々、現状で、法制の問題、日本の防衛思想の問題、さらに現状でできる限りの技術的な防御体制、ミサイル防衛体制を取っているわけでございます。万々が一ということを考えた場合に、それは完全に一二〇%迎撃できるとは言い切れないわけでありますが、我々としては逆に一二〇%の努力をしている、このことを申し上げたいと思います。
- 山谷えり子君
 一二〇%の努力であるならば、憲法違反ではない敵基地攻撃の手段の研究ということにも着手すべきではないかというふうに思いますけれども、それについては後ほどの答弁に回すことにいたしまして、弾道ミサイルによる国民生活への影響についてお伺いします。
 電波障害、飛行禁止区域の設定、外出禁止、いろいろ考えられます。PAC3は移動性のものなので民有地を借りる場合も出てくるでございましょう。一九九一年一月十七日の湾岸戦争で、イラクはイスラエルにミサイル攻撃を掛けました。このときアメリカはイスラエルに反撃を控えさせました。そして、イスラエルは、四十二日間、四十二発のミサイル攻撃を受けて、直撃で死者二名、負傷者二百二十六名、約七千七百の建物、ビルが損害を受けました。灯火管制、学校閉鎖、輸送ストップ、シールされた部屋かシェルターに逃げて六週間。ガスマスクはパレスチナ人全員にも配られました。
 イラクからイスラエルにミサイル着弾まで七分間。北朝鮮から日本までは十分間と言われておりますが、イスラエルでは事前によく指示、教育がありましたけれども、日本の場合、一〇〇%防御できない今システムしか日本は取ろうとしていないわけですから、国民保護のシミュレーションはどのようになっているでしょうか。
- 国務大臣(大野功統君)
 まず、対処時間が極めて短い、御指摘のとおりでございます。そういうことでありまして、我々はベストを尽くしていく、しかし万々が一という場合がある、このことは御指摘のとおりでございます。
 まず我々は、第一に、そういう事態が発生すれば、あらゆる手段を通じて、こういう事態が発生したということを国民の皆様にお知らせをする必要がある、このように思っております。そういうことを前提として、言わば緊急対処事態という問題に触れざるを得ません。
 基本的には、武力攻撃事態対処法第二十五条に規定する緊急対処事態ということでございます。この場合、緊急対処事態が認定されますと、国民保護法に基づき、対処保護措置として、国、地方公共団体等が一致協力して、連携協力いたしまして、国民の皆様への警報を発令していく、さらに避難の指示をしていく、こういう体制を取るわけでございますけれども、このような国民全体として行動していくためには、というか、国民保護のための措置を的確に実施していくためには、やはり広く国民の皆様の御理解、御協力を得ることが必要であります。そのためには情報提供が一番、事態が起こりましたら直ちにこのことをお伝えする、このことは冒頭申し上げたとおりでございます。
 そういうふうな国民皆様の御協力を期待するためには、御協力の方向で対処していくためには、やはり国及び地方公共団体は必要な支援を行うようにしなければいけない、こういう意味で申し上げて、平素から国民に対する啓蒙活動、あるいは住民の訓練への参加というようなことを通じまして、国民の皆様の御理解、御協力を得られるよう、今後の課題として努力していかなければならない、このように思っているところでございます。
- 山谷えり子君
 イスラエルでは個別法があって、人的被害への補償は国民保険制度が、また物的被害に対しては戦争損害補償の基金法がございますけれども、民間防衛法、あるいは民間防衛の仕組みというのをつくる必要があると私は考えておりますが、一昨年成立したあの事態対処法のときに、民間防衛の仕組みというのは諸外国にもあるのだからということで、日本でもどうかというような議論はあったわけですが、しかし先送りになりました。
 今、大野長官がおっしゃられましたように、地方公共団体、国、指定公共機関、またそれぞれ民間、役割分担をこなす中で、国民保護措置が円滑に行えるようにしていかなければいけないという、これは基本的な考え方だと思いますが、一昨年の議論から今日に至るまで、具体的にどのような協力体制をおつくりでございましょうか。
- 政府参考人(飯原一樹君)
 武力攻撃事態対処法の際に正に今御指摘のような議論がなされまして、実際はその下で、私もメンバーの一人でございますが、内閣官房を中心に関係各省庁の局長クラスが集まりまして、いろいろなケースの、念頭に置いた、正にどういうような形で国民に連絡をするか、地方公共団体にどのような連絡をするか等々具体的なところを念頭に置いて、現在ある意味のシナリオといいますか、マニュアル的なものを練っているという段階でございます。
- 山谷えり子君
 国民に防衛構想がよく分かるように要所要所のポイントで御報告などもお知らせいただけたらというふうにお願いしておきたいと思います。
 ところで、化学弾頭が使用されているか否かというのは弾着前に分かるものなんでしょうか。
- 国務大臣(大野功統君)
 どういうものが弾頭に搭載されているか、化学兵器なのか生物兵器なのか核兵器なのかという問題でございますけれども、弾頭の形からだけではこれは判断することはできません。したがいまして、当該ミサイルが弾着する以前の段階で何が入っているのかな、装備されているのかを判断することは、もう極めて難しい問題であると認識いたしております。
 しかしながら、ある国がどういう面で研究をしているのか。弾道ミサイル保有国の戦略、戦術、あるいは技術の動向、こういうことを十分勉強をして情報を取ってなきゃいけない。そういう意味で、これは情報合戦になるのではないか。各種の手段を通じて情報を収集、分析していくことが大変必要なことじゃないか。ある国から撃たれた弾頭にはこういうものが入っている可能性があると、この推定は情報によりできるわけでございますので、情報を収集し、どのような弾頭を搭載する可能性があるのか、この見極めをしていく上で情報収集に努めてまいりたいと思っております。
- 山谷えり子君
 大野長官は、法理論の世界では防衛出動下令後に敵基地を攻撃することは許される、しかし日本の政策として他に代替手段がある場合には控えておくべきではないか、代替手段ということで考えれば、場合によって解釈が変わってくる問題かというふうに答えていらっしゃいますけれども、衆議院安全保障委員会で、今年の四月十五日でございます。
 今のお答えですと、何が積まれているか分からないと。例えば、北朝鮮が核開発実験も終えたらば、場合によっては解釈が変わってくるというこの部分は変わるのでしょうか。敵基地攻撃能力を持つような研究を着手しなければいけないということも含まれるんでしょうか。
- 国務大臣(大野功統君)
 敵基地攻撃という問題は、日本の防衛に対しては基本的な考え方でございます。敵基地攻撃ができないというわけではないけれども、我が国の政策としてそれはやらない、こういうことを申し上げているわけでございますけれども、この例えば弾頭に何が詰まっているかという情報と、それから敵基地攻撃能力あってもそれはなるべく使わないという防衛の思想との間に私は先生おっしゃるような関連はないのではないか。やはり、我々は敵基地攻撃能力があっても、もちろん防衛出動下令前の話でございますけれども、防衛出動下令前といたしましては、やはり申し上げましたように専守防衛の思想でやっていくべきではないかと。弾頭に、ミサイルの弾頭に何が搭載されているかということは、私は考慮に入れないでそういう判断をしたいと思っています。
- 山谷えり子君
 国民の生命と財産を守る上で、そのような答えでいいのかなという疑問は非常に感じますけれども。
 アメリカは、日本に向けてミサイルを発射してくる相手の敵基地攻撃をするのか。どの規模でするのか。今現在ですと、それの決定はだれがなさるのか。何分掛かるのか。この辺についてお伺いいたします。
- 国務大臣(大野功統君)
 まず、日米防衛協力のための指針におきましては、米軍は必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮する、このように書かれていることは先生御存じのとおりでございます。アメリカがミサイル基地攻撃を行う場合、その判断をだれがどのようにどのぐらいの時間を掛けて行うのか、これ一概に申し上げることは極めて困難であると思っております。
 しかしながら、先ほども触れさせていただきましたけれども、敵基地攻撃につきましては、従来から、我が国に対して急迫不正の侵害が行われ、その手段として我が国国土に対し誘導弾等により攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに他の手段がないと認められる限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である、このように申し上げている次第でございます。
 こういうことを前提に日米間でどうかということでありますけれども、日米間の適切な役割分担の下で我が国の平和と安全を期することが重要であります。現時点では敵基地攻撃の目的とした装備は、装備の保有は考えておりませんけれども、この先ほど申し上げたようないわゆる日米間の協力の問題、こういうことを考えれば、攻撃能力は米国にある、防御能力のために我が方はBMDを導入している、こういうことでございます。
 したがいまして、日米協力相まってその辺を対処していく、具体的にどうこうと一概に言うことはできない、このことだけは御理解いただきたいと思います。
- 山谷えり子君
 一九九八年、テポドンが飛んできたとき、一か月前にアメリカより情報がありましたけれども、いよいよというそのときは、何分とは申しませんけれども、私の印象ではかなり短過ぎて十分な迎撃の態勢が取れないような状況だったのではないかと思います。
 今、アメリカで意思決定するのは恐らくチェイニー副大統領だというふうに思いますけれども、何分掛かるかというふうにアメリカの方に聞いたときに、ディペンド・オン・シチュエーション。このような状況の中で国民を本土攻撃にさらすということは、私は政府としては無責任ではないかというふうに思っております。独立国であるならば敵基地攻撃の研究を進めると、これはむしろ抑止力を高めることになると思うわけでございます。
 続きまして、中国の遺棄化学兵器問題についてお伺いします。
 化学兵器禁止条約は、元々自国で生産した国内の化学兵器を処理するための条約です。現在、しかし、世界じゅうで我が国だけが中国の遺棄化学兵器を処理する義務を負っている。条約には、相手方の同意なくして遺棄した化学兵器を処理する義務があるとありますけれども、日本はポツダム宣言の九項で武装解除しました。完全武装解除が降伏条件でございました。大砲、弾薬、馬、車、財産すべて、旧満州地域はソビエト軍に、それ以外は中華民国軍に、一部共産党軍に引き渡されたとも言われておりますが、それぞれの軍の所有になったわけでございます。
 この引き渡したもの、そして向こうが管理していたものも遺棄化学兵器になるんでしょうか。
- 政府参考人(西宮伸一君)
 化学兵器禁止条約上、遺棄自体についての定義でございますけれども、これは他国の、御指摘のとおり、同意を得ることなく遺棄した化学兵器だということが言われているわけでございますけれども、中国で発見され又は今後発見される化学兵器が旧日本軍の所有していたものであることが明らかであれば、これらの化学兵器を旧日本軍が残置することに中国側が同意していたことを示す明らかな根拠がない限り、我が国としてはこのような化学兵器については遺棄、締約国として廃棄する義務を負うものと考えております。
- 山谷えり子君
 ソビエトと中国共産党の間で、一九四七年から四八年の間、ハルビン協定、モスクワ協定が結ばれました。この中に、敗戦した日本軍の武器を二回に分けてすべて提供すること、ソ連の日本軍から接収した満州の弾薬や軍用物資も安い値段で中共に提供することというのがあるやに聞いております。同意を得てソ連、そしてそこから中共に渡った。相手に引き渡したと解釈できることもまた学説としてあるわけでございまして、遺棄したと主張する立証責任は中国側にあるんじゃないんでしょうか。
- 政府参考人(西宮伸一君)
 私どもといたしましては、旧ソ連からいろいろ提供されているということを確実に裏付ける資料の存在がないものというふうに承知しておるわけでございます。
- 山谷えり子君
 日本の武装解除により中国側に引き渡された兵器は現在の貨幣価値にして数兆円とも言われております。管理責任は中国にあるのではないでしょうか。普通、武器一式、書類、数量、保管場所を武装解除のときそろえて渡すはずですけれども、関東軍のものは日本にはないということなんですか。
- 政府参考人(西宮伸一君)
 政府といたしましては、平成十五年に化学兵器と思われる兵器、これは手投涙弾などでございますが、を含む引渡し目録と題されている資料が存在していることだけを確認しておるわけでございまして、この中身は、旧日本海軍の第二復員局作成とされるリストでございますが、その中で触れられている武器は手投涙弾等約四千六百発でございまして、それ以外の資料については我々存在を確認しておりません。
- 山谷えり子君
 関東軍のものはソ連に渡っている可能性もありますし、また中華民国に対するものは台湾に残っている可能性があります。また、当時の関係者がまだ御存命ですけれども、その辺は問い合わせられたんでしょうか。
- 政府参考人(西宮伸一君)
 政府といたしましては、化学兵器禁止条約に従って忠実に遺棄化学兵器を処理する観点から、できる限りのいろいろな情報収集をしておるものと理解をしております。
- 山谷えり子君
 なぜ日本だけがこれをしているんでしょうか。ベトナム戦争でアメリカはどうだったのか。イラン、イラクはどうだったのか。中越戦争で中国は化学兵器を使用したと思われますが、そのほかの国々はそのような処理の条約、約束をしておりませんが、なぜでしょうか、日本だけというのは。
- 政府参考人(天野之弥君)
 お答えいたします。
 これまで化学兵器禁止条約にのっとって自国の領域内にある遺棄化学兵器について申告を行った国は、中国のほかイタリア及びパナマでございます。ただし、先生御指摘のとおり、中国以外の二国については、いずれかの国が当該化学兵器を遺棄したとの申告は行っておりません。
 なぜ日本のみが自ら申告し、廃棄の義務を認めたかということでございますけれども、これまでの日中共同現地調査における専門的な鑑定の結果、中国国内には旧日本軍の化学兵器が存在していることが確認されております。他方、これまでの累次にわたる調査の結果、これらの化学兵器を旧日本軍が残置することについて同意したということを示す根拠は見いだされておりません。したがって、条約上、このような化学兵器は我が国が遺棄した遺棄化学兵器に当たり、我が国はこれを申告し廃棄する義務を負うものと考えております。
- 山谷えり子君
 根拠を見いだせておりませんとおっしゃいますが、もう少しまじめに根拠を探していただきたいというふうに思います。
 町村外務大臣、遺棄という言葉が先行していないでしょうか。また、中国側二百万発と言っている。日本は最初七十万発と言いましたが、調べてみたら三、四十万発ではないかというふうに今言われております。また、当初の予算は二千億円だったのが今一兆円、あるいは複数箇所で建設、処理施設を建設というようなことも中国側からは言われているとも聞いておりますけれども、いずれにせよ条約は発効しているわけで、条約の目的は遺棄化学兵器の処理で、中国への経済援助ではございません。将来に禍根を残さないような十分な検証作業をしていく必要があると思いますし、また中国側に説明を求める必要もありますが、どのような姿勢で今後臨まれていらっしゃいますでしょうか、いかれますでしょうか。
- 国務大臣(町村信孝君)
 この問題につきましては、化学兵器禁止条約に従って日本が必要な資金負担をするということになっているわけでありまして、今委員からは経済援助ではないよという御指摘がありました。それは正にそのとおりであろうと思います。
 実際、どのように経費が掛かっているか、使われているかということについては、外務省の職員が作業現場で、何台の車が来て、何人の人が従事してという現場を見ながら、彼らの必要、掛かった経費というもののその妥当性をチェックをすると、もちろん書類上のチェックもするというようなことで、請求内容というものを精査して対応していくということをやっておりますので、向こうからとにかくつかみでどんと請求があって、それを全部払うというようなことをやっているわけではございません。
 また、何万発というのは確かに必ずしも決め手のある話ではないとは思われますが、一応我が方からは幾つ幾つということを言いました。しかし、実際ここにはどのくらいあるだろうと推測をしながら作業をしてみると、それより少なかったりする場合もあるし、より多く出てくる場合もあるということなものですから、あくまでもこれは推計としてこの程度があるのではないかということで、実際そこは作業をやってみないと分からないという部分も現実にはあるようでございます。
- 山谷えり子君
 中国の作業者に平均、日当、日本は数十ドル払っているんですが、本人たちに支払われた額は百三十円。外務省はちょっとおかしいんじゃないかと言いましたところ、中国側はちゃんと答えていないということもあるわけでございまして、もう少し明細書もしっかりともらうようにしていただきたいと思います。
 また、その遺棄の定義があいまいであるということについてはどのようにお考えでございましょうか。
- 政府参考人(西宮伸一君)
 今大臣からお答えした点の繰り返しになるかもしれませんが、経費の内容につきまして透明性の確保が必要不可欠であることは御指摘のとおりだと存じます。この点につきましてはいろんな場で中国側に強調しておりますが、先ほど大臣からもやや細かめに言って、答弁申し上げましたように、我々といたしましても、中国政府から必要な経費として提示された請求に対しては、請求内容をよく精査して中国側に確認しているところでございます。
 それから、化学兵器の遺棄の定義そのものは先ほど来ございますけれども、実際の化学兵器の処理に当たりましては、中国で発見される化学兵器が旧日本軍のものであるかどうかを判断するということは非常に重要でございまして、そのために現地調査を行っておりまして、専門家による鑑定等により旧日本軍のものと確認された場合に日本側がその処理のための措置を行っておるわけでございますけれども、この専門家による鑑定といいますのは、OB自衛官など本当の専門家による厳密な鑑定を経た上で旧日本軍のものであるということを確認しておるわけでございます。
- 委員長(林芳正君)
 山谷君、時間でございます。
- 山谷えり子君
 外務省には、国の名誉を考え、国際的視野に立って国際社会における正義の実現を考えていただきたいと思います。日中のケースが今後の世界のモデルケースになることもあり得ると思いますので、冷静なやり取りを期待いたします。

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