2005年度活動報告

参議院 外交防衛委員会
平成17年10月13日(木曜日)

- 山谷えり子君
 自由民主党、山谷えり子でございます。
 万国郵便連合憲章の第七追加議定書、万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約の目的と意義をお答えください。
- 国務大臣(町村信孝君)
 委員御承知のとおり、日本は明治十年、一八七七年に万国郵便連合に加盟して以来、その活動に積極的に参加しているとともに、この連合での合意に従って国際郵便業務を実施してきているわけでございます。また、郵便為替についても、これに関連する約定に基づき、継続的に業務を実施してきております。
 今回、提出をしております改正案につきましては、これは日本を始めとする連合加盟国にとって、連合の下で国際郵便業務を実施するための法的枠組みを定める大変重要な国際約束であると、こう考えております。また、郵便送金業務に関する約定につきましても、郵便振替業務を含むすべての国際的な郵便送金業務について規定をする国際約束であり、これらの文書は二〇〇六年一月一日に効力を生ずるということになっております。
 したがいまして、日本がこれらの文書を締結することは、連合の加盟国として活動する上で、また日本の国際郵便業務及び国際郵便送金業務の適切な実施のために極めて重要であると考えて今回御審議をお願いをしているところでございます。
- 山谷えり子君
 我が国は万国郵便連合の中でいかなる貢献を行っておりますでしょうか。
- 国務大臣(町村信孝君)
 この万国郵便連合は、郵便業務の効果的な運営によって国際的な通信連絡を増進し、文化、社会、経済の分野における国際協力に貢献することを目的としている国際機関でございます。日本は、この分野の先進国として従来から連合のいろいろな会議に積極的な提言を行い、このUPUの活動に貢献をしております。
 理事会、委員会等における議長職の遂行であるとか、事務局への職員派遣、技術協力のための専門家の派遣、分担金の最高分担単位の負担、特別活動への任意拠出等々でございまして、大変積極的な貢献を日本としてはやっているところでございます。
- 山谷えり子君
 いろいろ振り返りまして、町村外務大臣におかれましては、主体的外交、国際世論を味方に付けて、本当に主権とは何かというようなことを考えさせる外交を展開してくださいました。また、大野防衛庁長官におかれましては、ミサイル防衛システム、そしてまた安全保障の面での進展ということで大変なお働きをいただきまして、深い敬意を感じております。
 さて、アメリカ、イギリス、中国、ロシア、イスラエルなどは情報収集能力の高い国だと言われております。イラク、中東、テロリストの動向など情報収集の重要性が増すばかりでございますが、情報収集機能強化費、分析機能強化費は今年五・八億円でしたが、十八年度概算要求で七・七億円と上げる。また、来年度より、情報を担当する専門官を育てていくということでございますが、大臣は「保守の論理」という御本の中で、正しい姿を取り戻せば日本は必ずよみがえりますという、御本の中で情報収集と秘密を守る体制の重要性を述べておられますけれども、対外情報機能の強化についていかがお考えでございましょうか。
-国務大臣(町村信孝君)
 著書にお触れをいただいて大変恐縮でございます。
 やっぱり国家が成り立つ上での幾つかの重要な要素があると思いますが、その一つが私はこの特に対外的なインテリジェンス、対外情報機能ではないのかなと、こう認識をしております。
 そういう面で、率直に言って、戦後、非常にこの面は軽視をされ、あるいは無視をされてきた分野だろうと思いますが、ようやっといろいろなテロ事件等々で国会の内外においてこうした関心が高まっているというのは、私は、あるべき姿にだんだん近づいていく基本ができつつあるのかなと、こんな認識をしております。
 そんなこともあるものですから、実は外務大臣の私的な懇談会ではございますけれども、対外情報機能強化に関する懇談会というのを春先立ち上げまして、九月にこの報告書をまとめていただきました。これに基づきまして、今後、対外情報収集・分析機能の抜本的な強化ということに努力をしていきたいと思いますし、また、その懇談会の中でも秘密保全に関する法体系の整備ということがうたわれておりまして、この面についても、日本はかねてより、俗な言葉で言えばスパイ天国だとまで言われているわけでございますので、いろいろな方面にかかわる問題がありますのでそう簡単に法の整備ができるとも思えませんけれども、しっかりとした勉強、準備はしておく必要があるんだろうなと、こう思っているところであります。
- 山谷えり子君
 国家機密法、スパイ活動防止法、一度政治の場で議論されたことがありますけれども、しかしながらうまくいかなかったり、今回のいろいろな世界情勢を考えますと、やはりそれを政治日程にのせるべき時期に来ているのではないかという感じを持っております。
 国連常任理事国、P5には、国家機密法、スパイ活動防止法というのはどのようになっていますでしょうか。
- 国務大臣(町村信孝君)
 済みません、正確に認識をしているわけではございませんが、例えば私はこの問題だけで、かつて自民党の役員をやっておりましたときイギリスに参りまして、イギリスは北アイルランドがあるものですからテロ対策先進国と言われている国でありますが、包括的なテロ対策法というものが相当しっかりでき上がってきております。
 また、それに伴って、元々あそこはインテリジェンスの活動が非常に、百年以上の歴史を持っておりますから、それに伴ってするところの様々な法的な整備というものも相当きっちりしているという。それと比べると日本はせいぜい国家公務員法違反ぐらいのものしかありませんし、自衛隊については更に刑法が強化をされている部分がありますが、それについても非常に諸外国と比べるとまだ法整備が不十分だなという印象は、私、持っております。
 今、具体にきちんと対比したものを手元にございませんので、申し訳ございません。
- 山谷えり子君
 アメリカとかフランスとかロシアなどでは最高刑が死刑、ドイツなどでも無期懲役でございます。こうした法律がきちんと整備されていないこと、あるいは国際スタンダードから見るとかなりまだ後れているというようなことから、日本の安全保障常任理事国入りの障害になるというふうにはお考えになられませんでしょうか。
- 国務大臣(町村信孝君)
 直ちに障害になるということではなかろうかとは思います。
 ただ、お互い機微にわたる情報をやっぱり交換をするときに、先方から日本に対してこの情報を渡してそれがどこかから漏れてしまうのではないかという懸念を当然持つわけでありまして、そういう意味で、やっぱりこれは日本に情報を渡すのはやめようという判断に至ることもあるやに聞いております。その辺を考えたときに、例えばテロ対策という最も秘密でなければならない情報が日本に伝わってこないということになれば、それは日本の国益を非常に害することになりますので、そういう観点からもしっかりとした法整備をしなければいけないだろうと、こう思っております。
- 山谷えり子君
 常任理事国になりますと軍事参謀委員会に入ることになりまして、そういう面からも今、町村大臣がおっしゃられたような視点からの検討が大事だというふうに思いますので、是非研究会での御研究もお進めいただきたいというふうに思います。
 四月十八日、町村外務大臣は唐家セン国務委員との会談で、また五月七日、日中外相会談の席で李肇星外務大臣と、北京の抗日記念館や南京虐殺館などで事実でない写真や説明などがあるというようなことをおっしゃいまして、真の日中友好のために互いに事実を理解し合っていくということが大事で、結果として反日をあおるような事実でない展示というものを外していただきたいと、これは本当に町村外務大臣が初めてこの正式の場で言ってくださったことでございます。そしてまた、リニューアルオープンした北京の抗日記念館、人形の一部が外されたり展示方法がかなり前進が見られたと、まだまだもちろんこちらから見ればもうちょっと、もっとうんとというところはあるわけでございますが、しかし一定程度の前進が見られたということは大臣のお力が大きかったというふうに思います。
 新しいリニューアルオープンした抗日記念館、外務省の方見られていると思うんですが、どのようになって、感想をお持ちでございましょうか。
- 政府参考人(梅田邦夫君)
 お答えさせていただきます。
 委員御指摘のとおり、外務大臣の方から唐家セン国務委員、それから外務長官に対しまして問題提起をさせていただきました。
 七月の七日に人民抗日戦争記念館がリニューアル、改装して再開したわけでございますが、私も八月に視察に行ってまいりました。
 具体的に変更点を少し御説明いたしますと、まず全体の構成につきまして、以前は日中友好関係であるとか日中戦争の流れを展示した後に最後に日本軍の暴行館を展示するということで、非常に印象の悪い、後味の悪い感情を残す展示になっておりましたが、改装後は日中友好の部分が最後に来るように編成をしております。そこは一つ大きな改善点ではないかなと思います。
 それから二点目でございますが、旧日本軍の行為につきまして、先ほど先生から御指摘がありましたように、いわゆる南京大虐殺や七三一部隊に関する残酷なろう人形というものを展示しておりましたけれども、これは廃止しております。ある程度抑制的な姿勢を示しているのではないかなと思います。
 それから、最後の部分の展示でございますが、これは戦後の日本関係について展示をしておりまして、例えば日本政府の歴史認識、これは村山総理の談話を詳しく紹介をしたりとか、それから今年四月の小泉総理と胡錦濤国家主席の握手している写真を新たに展示するなど、中国の方も日中関係を発展させていくことを重視しているんだというようなことを強調する内容になっております。
 いずれにしましても、改装後の展示物につきましては、引き続き事実関係であるとか歴史に対する理解について様々な議論が、特に我々から見ていますとあるものもあると思われますけれども、中国側もそれなりの配慮はしたのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
- 山谷えり子君
 南京虐殺館もこれからリニューアルオープンされるということでございますので、引き続きの対話と御努力というのをお願いしたいというふうに思います。
 ゼーリック・アメリカ国務副長官は、中国瀋陽にある九・一八歴史博物館を訪ね、中国の対日史観についてかなりのギャップを認識と語られまして、日米中三か国の歴史家による協議を提言いたしました。私はこの提言は大変いいというふうに思っているんですけれども、外務省はこのゼーリック国務副長官とどういう意見のやり取りなさいましたか。
- 政府参考人(梅田邦夫君)
 ゼーリック副長官が九月の二十一日にワシントンにおけるスピーチの中で、日米中の三国の歴史家の対話を開始することで歴史認識に関する誤解を幾らか和らげることを開始することができるのではないかというふうに我々も承知しております。その後、我々の方も米側に、この発言の趣旨であるとか、どういうふうに米側としてこれを実現していきたいのかというようなことを内々打診しておりますけれども、現時点では米側として具体的な考えを持っているわけではないようでございます。
 いずれにしましても、その歴史認識を含めまして、重要な問題についての我々の考え方につきましては、両国間だけではなくて、関係する両国間だけではなくて、欧米も含めた各国政府だとかメディアなどに我々も引き続き積極的に働き掛けていきたいと思いますし、それから米側のこのような考え方につきましては、更に米側の考え方を聴取した上で、どういうことが可能であるのかどうか検討をさせていただきたいと思います。
- 山谷えり子君
 すばらしい提言であると、国会でも問題になったということを更に言っていただきまして、この種を育てていただきたいというふうに思います。
 続きまして、資料を配付しておりますけれども、ちょっとごらんいただきたいというふうに思います。歴史問題資料一、歴史問題QアンドAの外務省ホームページへの掲載についてというものでございます。日付が八月十二日になっておりまして、広く国民にこれらの問題に対する我が国政府の立場について知っていただくための参考用として作成したものである、翻訳が終了次第、英語版ホームページにも掲載予定、広報文化交流部総合計画課というふうになっておりますけれども、この問題の設定を見ますと、Q1からQ10までありまして、さきの戦争に対して日本政府はどのような歴史認識を持っていますかというのに始まり、ドイツに比べて日本は過去の問題への取組が不十分なのではないですかという設問で終わっております。中国、韓国の抗議文書への御説明といった感じもするわけでございますが、これに対して恐らく賛否両論いろいろ外務省に来ていると思うんですけれども、どのようなものがありますでしょうか。
- 政府参考人(岡田眞樹君)
 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、この歴史問題QアンドAにつきましては、これは、ホームページに掲載されて以降、当省に対して様々な意見が寄せられております。賛成する意見もございますし、批判されている方もございます。
 さきの大戦をめぐる問題については様々な御意見もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、こうした議論が契機となってこれらの問題に関する政府の立場についての国民の理解が促進されれば幸いと考えております。
- 山谷えり子君
 ある立場、間違っていないといえばいませんけれども、あえて誤解を招くような書きぶりではないかという指摘もまたあるわけでございまして、資料二でございますが、Q6、靖国神社を総理が参拝することは、過去の植民地支配と侵略を正当化しようとするものではないですかというような設問になっております。この答えで、前提として、靖国神社がどんなところかという説明が必要なのではないかと思います。
 神社が平和を求める人々とともに慰霊のためにあること、二百四十六万余柱が鎮まっておられまして、また、日本の鎮魂の文化はこうであるといったことの説明もなしに、わび証文のような、そして文化に対する深い理解、視点というものがない回答というのは誤解を増幅させるだけであるというような意見もあるわけでございます。
 資料三の方を見ていただきたいんですが、Q5、いわゆる従軍慰安婦問題に対して、日本政府はどのように考えていますかと書かれておりまして、答えとして、日本政府としては、いわゆる従軍慰安婦問題が多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題であると認識していますと書かれておりまして、こういろいろ続いているわけでございますけれども、当時、従軍慰安婦という言葉はなかったわけでございます。
 そしてまた、内閣官房長官、時の談話を発表された長官あるいは副長官も、慰安婦の強制連行があったか否かについて文書、書類を調べたけれども存在しなかったと、それからまたヒアリングについては、官房副長官は、裏付けを取るべきであったが状況として取れなかった、ヒアリングだけでの認定については甘んじて非難を受けると、平成九年、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会で発言しております。
 また、平成九年三月十二日の参議院予算委員会では、小山孝雄議員の質問に答えられまして、内閣総理大臣官房外政審議室長平林博政府委員が、「政府の発見しました資料の中からは軍ないし官憲による強制連行の記述、そういうものはございませんでした。」、そして、証言の裏付けは、個々の証言を裏付ける調査は行っていないというふうに答えているわけでございますけれども、こうした事実も外務省のホームページに書くべきではないかというふうに思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
- 政府参考人(岡田眞樹君)
 委員御指摘のとおり、さきの大戦をめぐる様々な問題については国内外から様々な意見が表明されておりまして、特に今回の歴史問題QアンドAを作成するに当たりましては、私どもの考えましたことは、こういういろいろな意見の中には政府の歴史認識や戦後処理の事実関係における基本的な問題についての誤った認識に基づくものが散見されますので、そういった状況を踏まえて、こういった問題についての政府のまず基本的な立場とか戦後処理の事実関係などについて国民の理解を促すことを目的としまして、これまで様々な機会に示された政府の立場や事実関係を簡潔にまとめさしていただいたものだということで、文章的にも量はそんなに大きくないものになっております。
- 山谷えり子君
 事実を大切に、誤解が広がらないように対処していくことが大切だというふうに思います。事実は、国が、軍が、官憲が強制連行したという資料が見付かっていない、なかったということではないでしょうか。
- 政府参考人(岡田眞樹君)
 委員御指摘の国会答弁その他については、正に事実そのようになってございます。
 取りあえず、私たちが今作っております資料は非常に簡潔なものですので、これから先我々の対応については、委員御指摘の点も踏まえましていろいろ考えさしていただきたいと思います。
- 山谷えり子君
 アメリカでも、保守派の間でさえ、いわゆる従軍慰安婦の強制連行説が広がっております。コンフォートウーマン、セックススレーブ、日本は性奴隷制度をしいていたというようなことが、認識が広がっております。そのようなことはありませんでした。
 また、二十万人慰安婦が虐殺された、このようなこともないわけですけれども、そのような本も出回っております。そして、アメリカの国会議員、国際関係の要職に就いている国会議員の間ででもそういう考えを持たれる方が出ております。
 このような傾向を外務省はどうキャッチしておられますでしょうか。
- 政府参考人(梅田邦夫君)
 お答えいたします。
 従軍慰安婦の問題につきましては十年ほど前に相当問題になりまして、今先生が御指摘、先生から御指摘のあった本はアイリス・チャン氏が作られた「レイプ・オブ・ナンキン」という本だと思いますが、その本に書かれている数字につきましては全く根拠のないものだと思っております。
 それから、慰安婦関係の団体のアメリカにおける動きにつきましては、大使館を始め各総領事館、いろいろ引き続き情報を収集しておる事実はございます。同時に、事実認識につきまして誤った考えを持っておられる方、ないしはいろんなセミナー等が開かれることもございますけれども、そういうところにも外務省員、館員が出掛けまして日本側の説明をきちっとするように努めております。
- 山谷えり子君
 十年前ではなくて、今、現在進行形で更に広がっているということを御認識いただきたいというふうに思っております。
 また、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・ナンキン」のときに、外務省の方は一生懸命御説明なさっていらしたという姿も私は存じておりますけれども、しかしあのときも、アイリス・チャンが書いたあの本の事実ではない、全く事実でないことを一つ一つ丁寧に説明すべきであって、あのとき外務省は反省していますと、尊厳を傷付けましたと、それだけしか言わなかったんですね。そうすると、反省しているコメントを発表すればするほどアイリス・チャンが書いたことが、そしてまた最近書かれた二十万人虐殺説が真実として独り歩きしてしまうんですよ。こんなひどいことをやったから、だから反省しているんだと。そうではありません。国は、軍は、官憲は強制連行していません。これが事実です。この一点、そしてそれを骨格にした丁寧な御説明、事実に基づいた説明で国益を損なわないようにしていただきたいと思います。
 国連総会第三委員会、人権に関する委員会で、北朝鮮の人権問題、拉致問題が取り上げられようとしております。反論権を北朝鮮は行使して、強制連行や慰安婦問題を言ってくる可能性がございます。といいますのは、二年前に国連で北朝鮮の拉致問題を日本が訴えましたときに、北朝鮮は反論権を行使しまして、何を言っているんだ日本は、八百四十万人強制連行したではないかというふうに北朝鮮は言いました。そのとき日本は更に反論すべきでした。八百四十万という数字もでたらめであるし、そしてまた強制連行という事実はないと、国民徴用令がしかれたけれども強制連行はしていないと事実を反論すべきでしたが、日本は反論せずにそのままになってしまいました。したがいまして、国連の場では日本人が八百四十万人強制連行した、英語で訳すと拉致と変わらないようなニュアンスで国連の場で多くの国際的な様々な代表、また関係者に認識が定着してしまったわけですね。
 私はあのとき非常に慌てまして、一週間後、衆議院の外交防衛委員会で八百四十万人強制連行していないのに何で、それはあったんですかと聞きましたところ、いや、昭和三十四年、外務省が調べたところ強制連行はしていないというお答えだったんですね。でしたら、なぜあの国連の場ですぐに反論権を行使しなかったのか。今回、もしもまた二年前と同じことになってしまったら、北朝鮮は強制連行と従軍慰安婦、セックススレーブ、二十万人虐殺説言ってくるかもしれません。すぐに反論をして事実に基づく日本の立場というものを説明していただきたいというふうに思います。
 今回、国連大使は北岡伸一さん、日本近代史の専門家でございます。日本が反論権が行使できるようにきちんと準備し、フォローの体制を整えてさしあげてほしいというふうに思っております。
 全体といたしましてこの歴史QアンドA、日本の文化、大きな歴史の流れを踏まえた説明になっていないように思います。さきの戦争といいますけれども、東京裁判史観に乗ってのもの、開国、日清、日露戦争からの歴史の大潮流、ワシントン軍縮会議、日英同盟の破棄、人種平等への日本のスタンス、欧米列強諸国とコミンテルンの力の間で翻弄されてきた日本、そうした複眼的な視点で、そしてまたもう少し大きな視野から膨らみを持った歴史QアンドAというものが、というような答えがやっぱり必要とされるのであって、これでは誤解をますます広がらせるようなQアンドAのホームページになっているというふうに思いますが、これ英訳するということでございますけれども、いつ英訳するんですか。完了はいつですか。
- 政府参考人(岡田眞樹君)
 委員御指摘の英訳の話でございますけれども、私どもとしてはやはり、例えば村山総理あるいは小泉総理が戦争責任について述べられたこと、そういうような事実についてはやはりきちんと外国の方も分かっていただかなきゃいけない部分があると思いまして、やはり英訳することは外国の国民の理解を促すためにも有益な資料と考えておりますので、早急に今やっているところで、近々英語に直してホームページに載せることを考えております。
- 山谷えり子君
 広報文化交流部長は先ほど、やはりもう少し書きぶりがあるのではないかというような御答弁もなさいましたので、是非もう一度検討し直して英訳はその後にしていただきたいというふうに思いますが、町村外務大臣、今のこういうやり取り等々を聞いてちょっとどのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
- 国務大臣(町村信孝君)
 今、山谷委員から大変貴重な御指摘もいただきました。
 なかなか、役所の文章でございますから、これ学者のある見方ですよと、こう分かりやすく書くと、それはそれで一つの読み物といいましょうか、見解としていいのかもしれませんが、なかなか、例えばいろいろな両説あるような場合にどちらか一方を書くというわけにもいかないとか、まあ役所の制約はあると思います。
 ただ、委員御指摘のような、事実でなかったようなことをあたかもあったような印象を与えるとか、あるいは既に国会等でそういったきちんと答弁もあったようなことでありますとか、あるいはその今の極めて過大な妄想的な数字もあるということであれば、その辺も、かかる事実はなかったといったようなことも含めてもう少しよく検証して、その上で必要なものは英訳をするというようなことにしたいと、こう思いますので、これはきちっと、貴重な御意見を山谷委員からもいただいたし、また国民の皆さん方からもいろんな御意見がいただいていると思いますので、その辺をよく検証しながら、より良いものにまたこれも作り上げていく努力ということは引き続きやっていきたいと、こう考えております。
- 山谷えり子君
 更により良いものになると考えておりますので、英訳はそれまでちょっと待っていただきたいというふうに思っております。町村外務大臣、どうぞよろしくお願いします。
 国家名誉回復担当大臣というのがこの国には要るんじゃないかなというぐらい、もうちょっと大所高所から国家名誉回復のために、それはすなわち主権につながるわけでございますし、また北朝鮮の拉致問題解決にもつながっていくわけでございますので、是非、そのような担当大臣、あるいは担当部署というものも外務省に、総合計画課の中に、政策室の中におつくりになってもいいのかもしれませんし、そのような視点を大切にしていただきたいというふうに思います。
 続きまして、中国の春暁、日本名白樺からの採掘はいつから開始するのでしょうか。
- 政府参考人(近藤賢二君)
 お答えを申し上げます。
 中国によります白樺、中国名春暁でございます、の油ガス田、それから中国名天外天の、日本名は樫と申します、樫のガス田の海洋構築物の作業状況につきましては、今年の八月の九日に白樺油ガス田の採掘作業に着手した可能性があるという情報を得ておるところでございますが、いまだに採掘作業を進めるためのやぐらの完成は認められておりません。
 それから、九月の十九日でございますが、樫ガス田の海洋構築物の上でフレア、炎でございますけれども、確認をされております。これは、フレアが見えたということは天然ガスないし石油の産出が開始されている可能性が高いということを示しているというように考えておるわけでございます。
 また、パイプラインの敷設状況でございますけれども、中国本土の浙江省寧波と樫のガス田を結ぶガスのパイプライン、それから平湖の油ガス田と樫ガス田を結ぶ石油パイプラインにつきましては、既に完成している可能性が高いと認識をしておるところでございます。
 また、十月の七日でございますけれども、樫のガス田の海洋構築物付近におきまして中国のパイプライン敷設船がパイプラインの敷設作業を開始したというところを確認をしたところでございまして、樫油ガス田とを結ぶ約二十キロほどのパイプライン敷設のための作業が行われている可能性があると考えておるわけでございます。
 それから、今御質問の中の白樺の油ガス田の生産の見通しでございますけれども、今年の八月の末に、八月の三十日でございますが、開発を行っております中国海洋石油公司、CNOOCでございますが、の幹部が、春暁の油ガス田は九月中に生産を開始し、十月には生産した天然ガスの供給を開始することが可能であるという発言をしたところでございます。
 ただ、この春暁という、CNOOC幹部が発言をした春暁という言葉が、樫のガス田を含む春暁鉱区、いわゆる春暁鉱区全体の開発計画なのか、あるいは春暁構造単独の見通しについて述べたものなのかは明らかではございません。
 いずれにしましても、こういうような状況でございまして、中国側の開発作業が着々と進んでいるということは事実だと、このように認識をしておるところでございます。
- 山谷えり子君
 九月には、ミサイル巡洋艦、フリゲート艦など、中国軍艦船五隻が中間線付近、中国側海域で活動したということでございますが、日本が試掘するとき、万一に備えてどのような警備方法を考えておられますか。民間企業は安全が確保されないと試掘できないと思います。
- 政府参考人(近藤賢二君)
 今御質問のその試掘の状況、試掘に向けてでございますけれども、試掘を実施するか否かということにつきましては、まずは鉱業権者でございます帝国石油が判断をするわけでございます。
 試掘権の設定の許可を行いました際に、試掘を実施しようとする場合には前もって政府とよく相談するように帝国石油に求めたところでございます。現時点で帝国石油から試掘の実施に関する具体的計画は聞いておりません。ただ、そういう状況ではございますけれども、仮に帝国石油が試掘を実施しようということになります場合には、その時点での諸情勢を踏まえながら、外務省、防衛庁、海上保安庁等々、関係省庁とも連絡を密に取りながら適切に対応したいと考えておるところでございます。
- 山谷えり子君
 中国は、国土防衛とともに海洋権益の擁護というのを法律に明記しております。国防法、一九九七年三月、国防法二十六条で、中華人民共和国の領土、内水、領海、領空は神聖にして侵すべからざるものである、国家は、辺境防衛、海防と防空の建設を強化し、防衛と管理の有効な措置をとり、領土、内水、領海、領空の安全を防衛し、国家の海洋権益を擁護するという法律がございますが、我が国には海洋権益を守るための法律がありません。自衛隊法を改正すべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
- 国務大臣(大野功統君)
 例えば、東シナ海の試掘につきまして安全を確保していく、大変重要なことでありまして、このことを考える場合に、私はやっぱり、今政府側から答弁がありましたように、関係各省、経済産業省それから海上保安庁、外務省、防衛庁、この関係各省が連携を取っていく、特に情報を共有する、情報を収集していく、そして不測の事態に絶対に備えておく、この体制をつくり上げていくことが必要でございます。
 自衛隊としましては、例えば平素から東シナ海を含む海域におきましてP3C哨戒機を派遣しておりまして、十分な警戒監視活動を続けておりますし、例えば護衛艦を警戒監視活動に協力させる、これも法律的には可能でございます。したがいまして、この冒頭申し上げましたような、この各省間の連携、これが一番問題として我々十分認識していかなきゃいけないところだと思います。
 一般論として申し上げれば、まず海上における人命、財産の保護、治安の維持というのは、一義的には山谷先生御存じのとおり海上保安庁でございます。海上保安庁だけでは対処困難な場合には海上警備行動を自衛隊が行う、こういう体制でございます。したがいまして、法的に言いますと、自衛隊の艦艇を派遣し得る枠組みは存在するわけでございます。
 しかしながら、実際に、法律の問題じゃなくて実際にどういう行動を取っていくのか、これは政府全体として十分に考えていかなきゃいけない。私は、そういう意味で協力体制をしっかり打ち立てていくことが一番大事なことじゃないか。繰り返しになりますが、いずれにしても、結論として関係各省が協力して情報収集、共有の問題、そしてこういう場合にはこういうふうに対処していくんだと、このようなことをふだんから十分に検討していくことが大事だと思っています。
- 山谷えり子君
 大野長官、本当にたくさんのお働きを長官としてなさってこられているわけでございますが、しかし防衛庁を省にした方が更に安全保障の面できちんとしたお仕事ができるのではないかと思います。自民党、公明党は、省昇格について積極的、すべきだと考えている。そしてまた、新しい民主党も、安全保障の面では現実的な政策を取るということで、十分に議論に乗っていただけるのではないかと思います。
 省昇格への思いをお聞かせいただきたいと思います。
- 国務大臣(大野功統君)
 大変なお励ましのお言葉、有り難く拝聴させていただきました。
 今の現状をお訴えしますと、まず、私一年間を振り返ってみまして困ったなと思いましたことは、昨年でございますけれども、我が国領域に中国の原子力潜水艦が入ってまいりました。これに対しまして海上警備行動を取るのに、やはり防衛庁だけの判断ではない、警察活動であるのに防衛庁だけの判断ではいけない、こういうことで時間が掛かる、これは直さなきゃいけないな、実務的には直しましたけれども、そういう問題がありました。
 それから、もう一つ申し上げたいのは、やはり閣議請議、これ、法律、人事、予算、すべてございますけれども、閣議請議ですね、これを独自にできない、こういう問題があるわけでございます。
 そして、何よりも、やはり外国に対しまして、日本という国はやっぱり平和を本当に重んじて、庁といいますと何となく代理店とか、エージェンシーですから、英語に直しますと、エージェントですから、代理店になったり、あるいは何となく実務をやっているような機関になってしまいますので、やはり平和に対して本当に思いを込めて、それを確立していくんだ、こういうメッセージをもっともっと省にして出していく、それが今、国際環境が変わってきた中で、日本としてやるべき問題じゃないのかなと。政策的課題も多様にございます。それから、国際安全保障環境も、テロとかあるいはゲリラ、ミサイル防衛、いろんな問題が出てまいります。そういう中で、やはり私は、今申し上げましたような観点から早く省に昇格させていただけないかなと。
 しかし、これはやっぱり国民皆様の御議論の上に成り立つわけでございます。防衛とか自衛という、自衛隊というのは国民皆様の信頼の上に成り立っているわけですから、やはり我々の思いは思いとして、どうぞ皆さん、国会でも国民の皆様にもこの点を御議論いただいて、そして私は、防衛省昇格が早く国民の理解の上に成り立つように、我々も努力させていただきますけれども、どうぞ御議論を十分いただきたいなと、こんな思いでございます。
- 山谷えり子君
 私は、アフガンやゴラン高原や、また五十度の砂あらしの吹く戦争直後のイラクや、また輻射熱の甲板の上は五十度、六十度というような補給艦「とわだ」、そして護衛艦「はるな」にも乗ってインド洋海上補給活動を体験してまいりました。そしてまた、今回、テロ対策特別措置法の改正ということでございますが、自爆テロにきちんと対抗できる法的処置などが、武器使用等々ですね、やっぱり国際スタンダードでまだないんですね。私は、いつも亡くなられた奥克彦さんと一緒にバグダッドを歩いたときの写真を手帳に挟んで持っているんですけれども、本当に、国際協調、平和貢献をするために日本がスタンダードではないということがいかに不便と活動しにくさをもたらしているかということをもう少し皆さんに説明していただきたいなというふうに考えております。
 町村外務大臣は、本当に国際世論を味方に付けて様々な外交を展開していく、そして主権、国益と国益、それぞれの国の事情を率直に話し合うのが外交だと、仲よくするだけの社交、その場しのぎではないということをきちんと展開なさったすばらしい外務大臣でいらっしゃいますし、また国連改革も、今までは言うことを聞いていたわけですが、新しいルールを日本側から提案して、時代に合った国連にしようじゃないかというようなお働きをなさった。また、真の日中友好のために冷静でかつ友好的な思いを伝え続けられたということをすばらしいことと私は思っておりますけれども、これからやり続けたいこと、まだやり残していること、ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
- 国務大臣(町村信孝君)
 外交というのはどこかで区切りができるということはなかなかないんだろうなと、こう思います。常に前任の方からの引継ぎであり、またどこかの時点でまた後任の方に引き継ぐということであろうと思っております。実際、約一年ちょっとたちましたが、これは十分できたということは非常に少ないという思いを持ちながら、しかし一生懸命これからもやらなきゃならないことはたくさんあると、こう思っております。
 今、委員がお触れになった国連改革、大失敗であるという評価も一方にはございますけれども、私どもは、もちろんそういった冷静な受け止めをしなきゃならない部分と同時に、やっぱりそうはいっても、今、委員がお話をいただいたように、言わば戦後できた新しい、一九四五年にできた国際秩序を平和な外交という手段で変えようという難しい仕事に言わば初めてチャレンジをしているということであって、その一年目は必ずしもいい成果を上げたとは言わないけれども、大きなモーメンタムを生むことができたという意味での意味はあったと、こう思います。
 したがって、引き続きこれも努力をしていかなければいけないなどなど、やるべき課題、日中間、日韓、日ロ、北朝鮮の問題、あるいは拉致の問題等、解決しなきゃならない、取り組まなきゃならない問題が本当に数多くあるなという思いが強くしておりまして、引き続き最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
- 山谷えり子君
 引き続き、本当にお働きをお願いしたいと思います。
 最後に、遺棄化学兵器、この席でも私、以前質問いたしましたけれども、これは経済援助ではないから明細書も含めてきちんと計画、いろんな行動を、やり取りすべきだということを指摘させていただきまして、町村外務大臣もそのとおりだというふうに御答弁くださいました。
 現在、十一日から十五日まで内閣府の江利川事務次官が中国に行っていらっしゃると思いますけれども、どのようなことをなさっていらっしゃるんでしょうか。
- 政府参考人(高松明君)
 お答え申し上げます。
 現在、委員御指摘のとおり、江利川内閣府事務次官が十一日から十五日までの日程で中華人民共和国、北京及び吉林省のハルバ嶺の両地を訪問しております。訪問の目的は、遺棄化学兵器処理事業に関しまして中国側と協議を行い、事業促進を図り、併せて事業の中核となりますハルバ嶺の現地を視察することでございます。
 御承知のとおり、ハルバ嶺におきましては大規模な遺棄化学兵器の処理関連施設を建設する、そのために日中間でいろいろな建設方法及び施設運営体制等につきまして安全面、環境面に配慮してこれを行うというために協議、調整を行ってきております。今回、次官の訪中に際しましても、遺棄化学兵器処理事業の促進を図るために、こういった問題につきまして中国側の要人と協議する予定でございます。
-委員長(林芳正君)
 時間でございます。
- 山谷えり子君
 しっかりした協議をお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。

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