2005年度活動報告

参議院 少子高齢社会に関する調査会
平成17年10月26日(水曜日)

- 会長(清水嘉与子君)
 少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応の在り方について」を議題といたします。
 本日は、少子高齢社会の課題と対策に関する件のうち、団塊世代の諸課題について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、作家・元経済企画庁長官堺屋太一さん、株式会社博報堂生活総合研究所エグゼクティブフェロー・東京経済大学コミュニケーション学部教授関沢英彦さん及び株式会社大和総研資本市場調査部主任研究員鈴木準さんに参考人として御出席をいただいております。
- 山谷えり子君
 自由民主党、山谷えり子でございます。
 三人の諸先生方、示唆に富むお話ありがとうございました。
 堺屋参考人に三点お伺いしたいと思います。
 一つは、税の在り方についてなんですが、年を重ねると、自分が楽しむこともいいんですけれども、生きる意味が見えてきて、人に与えることとか役立つこと、人の幸せを祈ることが生きがいとなる面が大きくなってくると思います。そんな中で、コミュニティー活動や文化、福祉プログラムを支えたいというような、自助、互助、公助のバランスの中でこの互助のプログラムを支えるというようなものを支援していくということが大切ではないかと思うんですが、アメリカやフランスなどでは文化や福祉、育児、介護プログラム支援、NPOなんかに税を直接自分が好きなところに、団体に選んで払えるとか寄附控除とかいろいろあるわけですが、日本ではなかなかそこまでの議論にいっておりませんが、その辺どう思うのかということ。
 二点目は、関沢参考人が孤独や自殺の話をなさいましたけれども、歴史や文学に詳しい堺屋先生に宗教の果たす役割というものをお聞きしたいと思います。
 欧米では高齢者で何が一番大切かというと、宗教がトップに来るわけですね、日本はお金がトップに来るんですけれども。欧米では老人ホームなんかに必ず宗教プログラムが入っている。だけど、恐らく日本の老人ホームに宗教プログラムをやっているところというのは少数になってくるんだと思うんですけれども、日本も神社とかお寺さんとか、何か積極的にもっと働き掛けられる、ソフトな部分を支えるこうしたもの、それに対して何かできる方法が、支援があるかどうかお聞きしたいと思います。
 それから三点目は、若年出産の勧めというのに大変共感をいたしました。これまでの議論というのは、仕事と子育ての両立を図れば出生率が上がるというような議論だったんですけれども、そしてまた、よく引用されるOECD諸国データから女性の労働力率と出生率が正の関係にあるというのがあるんですが、実はあれメキシコやトルコなど当てはまらない国々が外されていて、本当に相関関係があるのかというのがもう学者の間で話題になっているくらいで、実は余り相関関係がないんじゃないかと。むしろ、堺屋先生が出された、世界の合計特殊出生率に見る、初婚年齢が早いほど出生率が上がるという、こちらの方が私は自然なのではないかという感じを持つんですが。
 そういうような情報発信とか教育の在り方というのは、なかなか今の社会ではメッセージ出しにくい部分があるんだと思うんですね。それで、堺屋先生はひ孫とハッピープロジェクトみたいなプレゼンテーションをなさったんだと思いますけれども、私も赤ちゃんを何とかする赤ちゃん応援プログラムみたいなのをつくりたいとは思っているんですが、具体的に大学の託児所や育児の、育児者の奨学金など具体的な政策もおっしゃいましたけれども、何か、どういうふうにしたらこのメッセージが分かって無理なく受け止めてもらえるか、あるいはもっとほかに政策的な、具体的な提案等ありましたら教えてください。
- 会長(清水嘉与子君)
 堺屋参考人、どうぞ。
- 参考人(堺屋太一君)
 まず第一に、税の在り方ですけれども、日本は大変官僚主導でございまして、税金をまず払えと、そうしたら賢い財務官僚が一番良く上手に使ってやると。君たち民間人、一般の人々が国のため世のためと思って使っても、我々ほど賢くないから下手に使って失敗するに違いない、だからまず税金を払え、こういう理論がずっと通っております。税調なんかでも堂々とそういうふうに言われるわけです。
 外国は、自分のお金を使う者は他人のお金を使うより利口であるという前提があるんですね。だから、寄附者は自分のお金で寄附しますから、他人のお金を使っている役人よりもずっと利口だと、だから寄附者の意向を重視するのがいいという状況にあります。
 私もこれまで幾つかのプロジェクトで寄附をしてきましたけれども、あれ寄附をするのは大変です。寄附許可書というのを出すんですね。寄附願というのを出すんですね。寄附願というのは、寄附してほしい方からこっちへ来るんだと思ったら、寄附したい人の方が寄附願というのを出さなきゃいけないという、税務署に出さなきゃいけない、で、審査してもらってというような仕掛けになっておりまして、大変です。
 だから私は、寄附、特に福祉、福祉はまああれですが、文化事業、それから互助事業については全面的に寄附税制を活用できるような、そういう制度を取るべきだとかねがね主張しております。是非そういう、この参議院でも寄附税制についてお考えいただきたい。そうしますと、自分の好きな、例えば今東京に住んでいても、故郷に寄附してやろうとか、あるいは自分の好きな美術館に寄附する、福祉団体に寄附するということで、かなりの程度自らの意見が通るようになります。また、特に相続の場合、この寄附制度を大いに活用しやすい、遺書によって寄附できるような制度も活用していただきたいと考えております。
 二番目の宗教の問題は大変難しい問題ですが、近代工業社会は科学的、客観的だ、したがって宗教のように科学的に証明されないものは古いんだと言ってきたんですね。ところが、一九八〇年代になりまして、世界的に宗教の復活ということを言われて、非常に宗教は主観的な価値として認められてきました。ブランドなんかもあれは一種の宗教でございまして、科学的、客観的には発見できない、けれどもみんながいいと思っている社会主観があるからいいんだ、その流れの中で、知価革命の流れの中で宗教が非常に復活してまいりました。
 だから日本においても、どの宗教がいいか、それはもう好き好きでございますけれども、こういう宗教活動という観点から福祉制度に乗り出すところがもっとあってもいいんじゃないか。いろいろとそういう宗教活動の観点を税制その他でも認めておりますから、そういうことは起こっていいんじゃないかと思います。
 三番目に、若年出産の問題でございますけれども、サラリーマンは大体大学を卒業して学歴を積んで就職をいたします。したがって、どんどん教育年限が長くなると就職が遅くなる。そして就職してからでないとなかなか結婚しない。それで結婚してから出産する。ところが、学歴に関係のない仕事をしておられる方々は昔と同じぐらいの出産年齢なんですね。例えば、プロの将棋指し渡辺竜王さんは二十歳で二人子供さんがおられますし、先崎さんは四十歳でお孫さんがおられますし、そういう例がたくさんあります。
 私は、むしろ成人式なんかのときに、既に子供を持っておられる成人になられた方は市長さんが表彰するとか、そういう美意識と倫理観を変えるような、健全に二十歳でお子さんを産んで育てておられる方は金一封、表彰するような、そういうような世の中になったらいいなと思うんですよ。それで、大学生でお子さんを連れてきたら、各大学で学生の育児をするような機関がある、そしてその間は奨学資金で、補助金じゃなしに貸付金で、将来その方が就職されたら返ってくる。そうしますと、どんどんと親子の年齢差が詰んでまいりますから社会の循環が変わると思うんですね。そうすると、介護の問題も非常に楽になるし、子育ての問題も楽になる。
 どうも近代工業社会が生みました、最初に一般教育があって後に専門教育がある、これは近代教育の特徴なんですね。昔の教育は先に専門教育、農民の子はまず親と一緒に農場へ出て、それから寺子屋へ通った。今は逆になっておりますが、こういう近代工業社会の人生の序列という美意識を変えるようなひとつ運動があっていいんじゃないか。差し当たり、成人式でお子さんが生まれて、適正に生まれた方については市長さんがお褒めの言葉をいただくような、そういう事態をどこかの市町村が取り入れてくれないかなと思っている次第でございます。

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