2011年2月12日
お声

天皇皇后両陛下は、平成6年2月12日、硫黄島において慰霊をされておられました。

皇后陛下は、前年の平成5年10月のお誕生日に倒れられて以来その時まで、お声を失われておられたのですが、硫黄島のいくつかの場所で祈られたあと、戻られた基地庁舎の中で、
「ご遺族の方たちは、皆さん元気でお過ごしですか」
と、東京都遺族連合会の会長にはっきりと聞こえるお声を出されたといいます。

宮内庁の発表では翌日の2月13日、硫黄島から父島に移られ、子供達がアオウミガメを放流するにあって
「次の波が来るとカメは海に帰るのね」
と、子供に話しかけられた、となっています。

硫黄島の悲しみの中で、ひたすら祈られた両陛下のお姿、お心。
そして遺族の皆さまとその後、父島の自然の中で子供達とお声を取り戻された皇后さまのお姿・・・。
17年の歳月を経ても、日本にとって変わらぬつながりは深く清く、いつまでも結ばれていると思います。

昨年末、硫黄島の追悼式に遺族の方々と列席した折、ご遺族の一人が私の耳元で
「皇后さまはね、ここでお声を取り戻されたのです。そして、両陛下の慰霊のあの日から、この島は何かが変わりました。私は何度かこの島に来て祈りますが、そう、何かが・・・変わったのです。」
と、ささやかれたお声。
尊く、今も私の胸にしまわれております。