久方のひかりのどけき春の日にし心なく花のちるらむ(紀友則)
国文学を学ぶ息子の和歌の先生が、退職にあたって、「多くの和歌に対し、難しい解説をしてきた学者人生でしたが、振り返ればこの和歌が今の自分に最も近く寄り添ってくれています。幽明境を異にした人を思ひ、これから祈り暮らします」と教壇を去られたといいます。
東京の桜は、散り始め、桜ふぶきの中を時を惜しみながら歩きましたが、秋田の桜は、まだ固いつぼみでした。来週になったら咲くだろうとのこと。
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり
(岡本かの子)
この季節 エニシダ、なの花…と、黄色の花々も目にしみます。
川ひとすぢ菜たね十里の宵月夜母が生まれし国美くしむ
(与謝野晶子)
菜の花や月は東に日は西に (与謝蕪村)
大震災の被害の比較的少ない秋田県ですが、それでも多くの友人、知人、親戚の悲しみを思いつつ、被災者を力いっぱい支援しています。みちのくは、ひとつでした。
みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただにいそげる
(斉藤茂吉)