衆議院構成労働委員会にて質疑 |
平成15年4月2日 |
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厚生労働大臣 |
坂口 力君 |
(厚生労働省職業安定局長) |
戸苅 利和君 |
(厚生労働省職業能力開発局長) |
坂本由紀子君 |
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-中山委員長 |
これより質疑に入ります。 |
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。 |
-中山委員長 |
次に、山谷えり子君。 |
-山谷委員 |
保守新党、山谷えり子でございます。 |
現在、多様な働き方への対応、失業した方の生活の安定と再就職の促進を図ること、また中高年、若者、そして女性、それぞれの悩み、苦しみにきめ細かく対応できる応援策が求められているわけでございます。 |
昭和六十二年、財団法人産業雇用安定センターというのができました。失業なき労働移動のサポーター、人と企業を結ぶ、出向、移籍、転職のお手伝いをいたしますというような、仲介業務をするわけでございますが、昭和六十二年、五百三十四件成立したものが、平成十四年で九千件強というふうにふえてはいるわけでございますが、この実績をどのように評価なさっていらっしゃいますでしょうか。 |
-戸苅政府参考人 |
産業雇用安定センター、今委員お話しのように、経済界それから産業団体と連携いたしまして、人材の送り出しを希望する企業と人材の受け入れを希望する企業の橋渡しを図ろうということで、産業間、企業間の円滑な労働移動の実現ということで取り組んできておるところでございます。 |
昨年度、実は、BSEの影響とかあるいは九・一一のテロの影響で、一昨年の秋から昨年の初めにかけてかなり大幅なリストラが大企業を中心に行われたということも反映しているんだろうと思いますが、平成十二年、十三年に比べますと、七千件前後から九千件を超えるところまで昨年度来ている、こういうことでございまして、我々としては、産業界の協力も得ながら、会員の方の範囲の限界というのもありますけれども、着実に成果、実績は上がりつつあるのではないか、こう思っています。 |
-戸苅政府参考人 |
確かに、おっしゃるとおり、産業雇用安定センターは、設立の経緯が、鉄鋼業ですとか造船業ですとか、構造不況型の業種の大手の企業を中心に立ち上げたということがありまして、底辺の広がりに限界があるというのが偽らざるところでございます。 |
今お話しのように、不良債権処理で、これからいろいろな形で各産業分野から労働者の方が離職を余儀なくされるということも考えられるわけで、そういった意味で、この補正予算で行うことにしております雇用再生の事業、これにつきましては、今お話しのように、産業雇用安定センターを中核にしまして、地域の商工会議所ですとかあるいは経営者協会ですとか、それから教育訓練の機関ですとか、そういったところとの連携を密にするような体制づくりに取り組もうということで、取り組み始めているという状況でございます。 |
-山谷委員 |
この産業雇用安定センターは、四十七都道府県に事務所がありまして、経営者協会、ハローワーク、商工会議所、中小企業団体中央会、人材銀行などと密接な連携のもとに業務を進めているということでございますけれども、さらに不良債権処理等改革加速に伴う雇用対策会議というのがまたできているわけで、中央で開かれ、またこの三月には地方八ブロックで開かれている。 |
先日、三月二十七日、金融審議会では「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」ということで、取引先企業に対する経営相談、支援、より高付加価値をつくる再建計画の手伝い、これは恐らくリストラとかいろいろな情報が上がってくるんだろうというふうに思います。コミュニティービジネスの育成やNPOとの関係づくりを重視した取り組み等々、地域のさまざまなそういったような組織、団体がさらに連携をしなければいけないわけでございますが、定期会合とか、あるいは、何か成功モデルを集めて、こうやったら成功したという事例をもっともっと広げていかなければならないんじゃないでしょうか。いかがお考えですか。 |
-戸苅政府参考人 |
おっしゃるとおりだろうというふうに思います。 |
不良債権処理の加速に伴いまして、先ほど申し上げましたように、地域あるいは業種ごとに、影響の度合いですとかあるいは広がりですとか、そういったものが異なるんじゃないか。それから、関係する省庁あるいは地方自治体等も多いわけでございまして、そういった意味で、今お話のありました関係省庁の雇用対策会議というものを設けたところであります。 |
中央レベルでは、一月に開催いたしまして、金融庁、経済産業省、国土交通省、それから厚生労働省の担当局長をメンバーにいたしまして開催し、それから、三月にはブロックで、それぞれの出先の局長級と自治体の担当の、知事さんの出られたところもありますが、知事さんなり、副知事さんなり、部長さんなりという会合を開きました。 |
今後につきましては、今お話しのリレーションシップバンキングのプログラムが明らかになりましたので、これを受けて、どういった対応をするのか、あるいはどんな情勢なのかということについての意見交換、情報交換、それから取り組みの協力、そういったことが求められているというか必要なわけでございまして、そういった意味で、これについて、またリレーションシップバンキングのプログラムを受けて、今月なりあるいは来月なりに中央、地方で開こう、こう思っています。 |
お話しのように、定期的にということでございますが、我々としては、状況が変わったり、あるいは開催が必要になったりしたら、そのとき随時に、何度でも開くということで当面は対応してまいりたい、こういうふうに考えております。 |
-山谷委員 |
今は非常事態と言ってもいいんじゃないかというふうに思います。そしてまたアーリーウオーニング、あらかじめいろいろな変化を察知するためにも、やはり定期的に情報収集というような形をおとりになられた方がいいのではないかと私は考えております。 |
次に、教育訓練給付制度の変更でございますが、今、パソコンや英会話教室、五月から給付率が下がりますよ、早く申し込みをというような広告が町で目につくわけでございますけれども、果たして、これまでの教育訓練というのが、国が給付しているだけの効果があったのかどうかというような、点検、評価というのはなかなか難しいというふうに思いますが、横断的評価制度がないということが非常に大きな原因ではないかと思っております。 |
産業再編と安定した労働移動確保のためにも、きちんとした能力開発、評価、教育というものが重要なわけでございますが、英国ではNVQ、ナショナル・ボケーショナル・クオリフィケーションというのが八六年に誕生いたしまして、全職種の九割をカバーして、資格数が八百。これは、乱立しておりました資格制度を一つにまとめて、きちんと横断的な評価ができるようにすること、そして、それがあることによって働く人々が労働市場を動きやすくなるということでつくったわけでございます。 |
日本でも職業能力評価制度の整備に向けた取り組みが始まっておりますが、これは、どのようなスピードで、どういう形、どういう範囲を考えておられますでしょうか。 |
-坂本政府参考人 |
産業構造の変化でありますとか労働者の就業意識の変化に伴って労働移動が増加をいたしております。職業能力のミスマッチを防ぎ、労働者の職業能力を適切に評価して、スムーズな労働移動が実現するということが大事であろうというふうに考えます。 |
現在の我が国における職業能力の評価というのは特定の技能でありますとか知識に関しての評価が中心でありましたが、これからは、実践的な職業能力についての評価基準を設定する、あるいは職業経験等を基礎にした評価手法を開発することが重要であると考えまして、平成十四年度から、イギリスのNVQの制度等を参考にいたしまして、職業能力評価制度の整備に着手をいたしました。 |
これにつきましては、各業界団体等に御協力をいただくということで進め始めたところであります。具体的には、ホテル業界、それから電気機械器具製造業等やっておりますが、ここにおきましては、評価制度の果たす役割ですとか機能についてまず御認識をいただくということで、さらに、一定の職種についての職務分析を行い、評価基準の策定でありますとか評価手法の開発に向けた検討をこれから進めることにいたしております。 |
できるだけ多くの業界にこの評価制度の構築について御理解をいただくことが大事だと思っておりますので、積極的に各業界への働きかけを行うということ、それから、検討を始めたそれぞれ個別の業界単位の評価制度については、できるだけこれが早く構築できるように努力をしてまいりたいと思います。 |
また、制度が実際に労働者にも事業主にも使われることが大事でありますので、この点についても、きちっとした施策を今後進めてまいりたいというふうに考えております。 |
-山谷委員 |
厚労省が英国にはこういうNVQというようなシステムがあると説明すると、関係団体によっては、非常によくわかる部分と、きょとんとする部分と、いろいろあると思うんですが、今の温度、トーンというのはどのような感触を持っておられますか。 |
-坂本政府参考人 |
総論の部分では各業界とも大変よく御理解をいただくのでございますが、具体的に構築をしていくということになりますとなかなか、正直申し上げまして、まだ日本にモデルがないものですから、実態を十分検討しましょうというような対応が多いというのが正直なところでございます。 |
ただ、働いている方にとっての能力評価の目標にもなりますし、職業の安定を進める上でも大変大事だということで、労使ともに御認識はかなりいただけておりますので、私どもとしては、具体的な評価の基準等についてサポートできるようなノウハウをしっかりと確立して作業を進めていきたいというふうに思っております。 |
-山谷委員 |
イギリスでは五百万人の職業訓練を担う機関の運営に約九千五百億円の予算をつけているというような、本当に大規模なものでございます。ホテル業界なんかですと、もう既にマニュアルもあるわけですし、海外視察に行って肌で体験してわかっていただくとか、そのような取り組みで、雇用の流動化と生活の安定のために御尽力いただきたいと思います。 |
何より大事なのは新しい雇用の創出策でございますが、地域の特性を生かしたプロジェクトの支援というのが大事なわけで、ブレアは、今イギリスで大事な政策は三つある、教育、教育、そして教育と言いましたが、私は、日本では、観光、観光、そして観光ではないかというふうに考えております。 |
二月二十五日の当委員会で、日本の観光関連従事者は三百九十万人で、新規雇用は、私が計算しまして二百五十万人以上。アメリカでは観光関連の従事者は千八百万人いますから、日本でも九百万人いてもおかしくないのかもしれません。そのような計算でいきますと、観光分野で非常に新規雇用が望めるわけでございます。そのとき坂口大臣は、他の省庁と連携を密にして、自治体、商工会議所、労働組合、経営者、トータルで地域ごとのネットワークをつくることが大事だというふうにおっしゃいましたけれども、その後、何か具体的な取り組み策あるいは具体的な構想がありましたらお伺いしたいと思います。 |
-坂口国務大臣 |
先日も観光につきましての御質問をいただきました。 |
NVQという制度、私は今まで余り存じませんで、今回初めて勉強させていただいたわけでございますが、やはり一つの考え方だというふうに思いますね。そういう制度をつくって、そして、役所の方がそれを権威主義で押しつけるようなことはいけないと思うんですが、そういう制度をつくることによって、そこにサービス業を育成する、皆さん方が喜んでそこに参加をしていただけるという制度であれば進めていくべきだというふうに私は思っております。 |
先日も、ネットワークが大事、それも、役所の中のネットワークといいますよりも地域とのネットワーク、そして民間との間のネットワークをどうつくるかということに尽きるということを申し上げたわけでございますが、今もそういう気持ちでおりまして、観光業を初めとして、それぞれの地域によりますそれぞれの地域の雇用というものがやはりつくられていかないといけない、中央から一括してこういう行き方というのではもはや新しい雇用は生まれてこない、率直にそう思っております。 |
したがいまして、地域とのそうした連携、もちろん役所の方も、厚生労働省の出先だけではなくて、経済産業省の出先も一緒になっていただいて進めているわけでございますが、率直に言って、役所だけでやっておりますとなかなかいいアイデアは出てこないんですね。それは、やはり役所というところは運動神経みたいなもので、向こうへ通達することは得ておるんですけれども、知覚神経みたいに向こうから吸収してくることは余り得意としていないものですから、やはり民間の皆さん方のお力をここはおかりする以外にないな、そこをどうネットワークを組むかということが一番大事と思っておりまして、そうしたことを今やろうとしているところでございます。 |
-山谷委員 |
期待しておりますので、ぜひスピードを上げてお取り組みをいただきたいというふうに思います。 |
最後に、キャリアカウンセラーの制度についてお伺いいたします。 |
二〇〇一年の十一月九日の本会議で、坂口大臣は、キャリアカウンセラーの養成が雇用のミスマッチ解消のために必要だとおっしゃられまして、五年間で五万人を養成したいというふうにおっしゃられました。これが、私、アメリカでキャリアカウンセリングのいろいろな聴講をいたしますと、実習があったり、大学院レベルで、カリキュラムが非常に充実しております。ところが、日本でやられておりますのは、実態は三週間の研修ぐらいで、実際やっているのはカウンセリングスキル、それからキャリアプラン作成スキル、あるいは公的機関の活用方法を学ぶとかですね。実は、そんなものはすべてのハローワークの職員、それから職業訓練関係の施設の指導員、すべての方が研修しなければいけないメニューでございまして、こんなものでキャリアカウンセラーだとかガイダンスだとかコンサルタントと言うのはおこがましいものでございますけれども。 |
平成十四年二月二十七日、酒井政府参考人、職業能力開発局長は、ハローワークの相談員、職業訓練関係の施設の指導員、すべてに研修させたいとお答えになられましたが、その後どういうふうに進んでいますでしょうか。 |
-坂本政府参考人 |
昨年度から、雇用・能力開発機構におきまして、年間千百人を対象にキャリアコンサルタントの養成の訓練を開始いたしました。このような機会を使ってもらうものと、あと、雇用・能力開発機構の職員につきましては、総合大学校等で職員研修をやっておりますので、そのような場にキャリアコンサルタントとして必要なカリキュラムを加えてやっております。そのほか、ハローワークの職員につきましても、職員研修の中にこのキャリアコンサルタントとして必要なものを含めて研修をすることについて検討し、実施をするということにいたしております。 |
-山谷委員 |
本当につけ焼き刃で、走りながらやっているという印象を免れないんですけれども、私、文部科学大臣にも申し上げているんですが、本格的な教育がことしやっと筑波で三十人枠で始まったという、そのような状況でございますので、ぜひ文科省と連携しながら、充実した、質のいい人々を養成していただきたいというふうに思います。 |
以上です。ありがとうございました。 |
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