平成15年度活動報告

解答乱麻「鍛錬なくして希望なし」
平成15年5月12日 産経新聞掲載記事
 
 「わが子にどこか就職先ないかしら?」と、友人から聞かれることが多くなった。大学4年生の就職戦線は、もう今週あたりでほぼ終盤らしい。
 現在失業者の約半数は若年層であり、フリーターが200万人にも達している。大卒就職者は6割ほどで、就職しても3人に1人は3年以内に辞めてしまうというから、親にとってはいつまでも安心ならない。
 私自身、毎朝3児の弁当を作って、この春で19年目。「正直、親切、勤勉に育ちますよう」と、祈りながら作り続けたが「勤勉に」の美徳が親から子に、先輩から後輩に伝承しにくくなったことを痛感する。
 ゆとり教育で、この25年間に学習内容は半減し、15歳の勉強ぶりはOECD諸国(経済協力開発機構)加盟国で最低。国際競争力ランキングはこの12年間でトップから30位へと落ちている。15年前に、当時のサッチャーが「自分自身を明確な英語で表現できなければならない子供たちが、政治スローガンを教えられている。伝統的な道徳価値を尊重できなければならない子供たちが、自分たちが浮気する権利を持っていると教えられている」という演説をしたとき、苦笑して聞いたが、今の日本は状況が似てきてうなだれるばかりである。価値の多様化という腰のすわらぬ“価値観”のもと、子供たちの鍛練の場が奪われている。「忍耐は練達を、錬達は希望を生む。希望は私たちを裏切らない」とは聖書の一説だが、鍛錬せずば希望も育たずである。
 イギリスのブレア政権は、雇用促進「ニューディール政策」で地域と連携し、試用就業などきめ細かい対応で、若年層38万人に職を得させた。また、アメリカでは、十数万人のキャリアカウンセラーが小学校から地域社会の中に配置され、職業やボランティア紹介のため働いている。
 自分にふさわしいメニューで小さい頃から働く体験が、役に立つ喜びと前向きな姿勢を引き出し、成人してからの社会や仕事に対する不安を払拭するのではなかろうか。
 インターナショナルスクールの近所に住んでいた頃、夏休み前になると、多くの母親から相談を受けた。「うちの子、子供好き。近所の幼稚園でお手伝いさせてもらえない?」「アナウンサー志望の子だけど、図書館で読み聞かせボランティアさせたいの」子供の特質をアピールして“売り込み”してくる姿に、役に立つことを体験させ、子供に生き方を考える材料を与えたいという親の思いが伝わってきたものだった。
 今、国会では労働基準法の一部改正案が議論されている。働き方の多様化に対応する有期労働契約のあり方の見直しなどが骨子である。
 このところ能力主義、成果主義により、先輩が後輩に必要なことを教えなくなり、企業内人間関係が冷え冷えしていく会社が増えている。
 一人ひとりに与えられた賜物を生かし合う喜びは、具体的行為の積み重ねと鍛錬から生まれる。どこでも、いくつになっても役に立てるメニューを探せる人は幸いであり、その“宝物探し”の方法論を体得させることこそ教育の真髄であろう。

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