訪日外客倍増の施策
〜商談とPR兼ねた見本市がインバウンド振興に不可欠〜 |
トラベルジャーナル 2003.6.16号 |
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―この人にこのテーマ―
山谷えり子氏
保守新党観光立国推進本部事務局長 |
党の勉強会で、米国のTIA(米国旅行産業協会)が外客誘致のため毎年開催する商談会「インターナショナル・パウワウ(先住民の言葉で『集会』の意)」の存在を知った。早速5月下旬、セントルイスで開催されたパウワウを、日本の国会議員として初めて視察した。 |
「観光振興を考えるなら、パウワウぐらい見ておかないとダメ、という平尾彰士さん(スターウッドホテル日本代表)の一言がきっかけ。海外旅行は大好きだし」と屈託ない。実際に訪れて米国観光業界のパワーを実感。帰国した翌日には、早くもメディアや党内向けに報告書をまとめた。もっと多くの政治家や官僚が、世界の観光振興の現場を体験すべきだと訴える。 |
「10年までに訪日外国人客をほぼ倍の1000万人にするというのだから、どんどん動かなければ間に合わない」。パウワウのような商談とデスティネーションPRを兼ねた見本市が、インバウンド振興を盛り上げるのに役立つと見る。05年までに第1回の日本版パウワウを開催する、と目標はいたって明快だ。「ベースとなる予算を国にお願いするのは我々の役割。実際の運営や会を盛り上げる工夫は民の役割」と考える。 |
パウワウで痛感した日本との違い |
米国の観光業界の人々に会い、日本との違いを痛感した点は「人脈とノリ」。 |
国土交通省から自治体まで、観光担当責任者が2〜3年で交替する制度下では、人脈もノウハウも蓄積されにくいが、米国の市や州の観光局は民間に業務委託する部分がかなり大きい。もちろん投下した予算に対する成果はその都度、きちんと審査し、良ければ続投、ダメなら選手交代いう形だ。「日本ももっと民間の専門家をたくさん活用しないと、百戦錬磨のベテランスタッフをたくさん抱えた世界の競合デスティネーションと伍していけない」。 |
米国が得意とするイベントの盛り上げ方、ノリの良さにも、見習うべき部分は大きいという。パウワウでは商談タイムが終わると、参加者はスーツから動きやすい服装に着替え、昼間よりくつろいだ雰囲気で毎夜、趣向を凝らしたイベントを楽しむ。参加者間の交流が進むことで、その後のビジネスを活性化するのが狙いだが、「肩書き抜きで楽しめるから、自然と新しい人脈も広がる」。 |
観光、観光、そして観光 |
「日本の経済から文化まで活性化するために必要なこと―――観光、観光、そして観光」が持論。完全失業者数は385万人を記録したとはいえ、10年までに外客倍増に成功すれば、250万人の新規雇用を創出できるという。しかも、生活する人々やライフスタイルそのものが観光資源となるから、「地域社会の再生、伝統文化の伝承など日本再生の切り札になる」。 |
日本の国立大学に観光学部がない現状を促え、「これでは産業振興に必要な優秀なミドルマネジメント層育成は難しい」と国のやる気を問う。ほかにも、全国のユースホステルの質向上や、中国語、韓国語のできる医師のネットワーク化、海外の観光地のように両替店を街のなかにもっと増やすなど、できることはたくさんあると説く。 |
キナ臭い世界情勢下だが、「日本を好きになってもらう、というのは究極の国家防衛でもある」。 |
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