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対談「教育に国家観を取り戻せ!」
ジャーナリスト 山谷えり子 × ジャーナリスト 櫻井よしこ
 
はびこる自虐史観、学力低下、学級崩壊、過激性教育…。
「国家」を徹底して忌避してきた「戦後教育」によって荒廃した現場再生の道はあるか。

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(2/5) 自衛隊イラク派遣の教え方を教えましょう
--- 山谷
 イラクへの自衛隊派遣について、小泉首相が「教育の場で取り上げるよう。いい議論の材料になるのではないか」と発言したことに、全教や日教組が一斉に反発し、同調した一部のマスコミも「教育への政治介入だ」というトーンで書きたてましたね。
 先日、子供から、「渋谷で僕たちと同じ年齢の子供たちがイラク反対のデモをしていて、『自衛隊の人は行くのがいやなのに行かされちゃう。かわいそうじゃありませんか』ってみんなマイクで言っていたけど、本当かなあ」と尋ねられました。
 たまたま、わが家の食卓で、陸上自衛隊の現地指揮官となる「(第一次)イラク復興支援群」群長の番匠幸一郎・一佐が北の守りの最前線となる北海道・名寄駐屯地の前司令で、派遣部隊の主力・第二師団は冷戦時代に北の守りを固めてきた部隊で錬度と志気が高く、日本と世界の平和を願う方たちが集まっていて、派遣希望者も定員を大幅に上回って選抜に困るほどだったという記事を読んだという話をしていたんですね。それで、子供も渋谷のデモに参加していた若者たちの言葉が違うのではないかという感想を持ったんでしょう。
--- 櫻井
 私も陸自第二師団の人たちの話を聞かせてもらいましたけれども、イラクに嫌々行かされているという事実はどこにもありませんでした。六百人の派遣定員に対してそれを大幅に上回る人たちが応募して、振り落とすのがとても大変だったというくらいでした。
--- 山谷
 自衛隊は人道復興支援のために派遣されているのであって、戦争をするために行っているわけではないのに、歪められた形で報道され、それを鵜呑みにした教育が行われているとすれば非常に問題です。あるいは報道に関わりなく、空想的平和主義をいまだに捨てきれていない先生たちが自分たちの考えを押しつけるために、かつては存在そのものに反対した自衛隊が「かわいそう」などと話しているのかもしれませんが。いずれにせよ、「政治介入だ」と非難する前に、子供たちが物事を考える前提となる事実を正しく提示し、あるいはさまざまな角度から議論できるような知識を提供できるよう、学校の先生も努力していただきたいと思います。
--- 櫻井
 イラク問題に限らず、時事問題を学校で教えることは大切だと思います。教わったことを基本にして世の中を見つめて行かなければならないのですから、現在進行形の話題を学校教育が取り入れるのは当たり前の話です。アメリカでは、大統領選挙が近づくと小学生が教室で民主党に投票するのか、あるいは共和党に入れるのかディベートをします。子供なりに考えるわけですが、それが思考力の形成、社会への関心の育成という点で、とても役に立つわけですね。また、子供たちの意見には親の考え方が反映されますから、小学生の擬似投票の結果に、マスコミも非常に注目します。
 では、子供たちにイラク問題をどう教えるか。例えば、番匠群長は二月一日の隊旗授与式の記者会見で、とても素晴らしい発言をしています。「日本人らしく誠実に武士道の国の自衛官として最善を尽くす」と。この「武士道の国の自衛官」という言葉が彼の決意を端的に言い表している。さらに、子供たちに武士道について教えることもできますね。自らを律し、恥を知り、責任を全うするという非常に高潔な価値観をこの国の先人たちは持っていた。明治時代に新渡戸稲造がそれを『武士道』で文字として著して以来、国境を超えて世界中の多くの人々の心を揺るがしてきました。台湾の李登輝・前総統もその一人だし、最近ヒットしたアメリカ映画『ラスト サムライ』が製作されたのも、トム・クルーズが『武士道』に感動したからでしょう。
 しかし、武士道は、戦後の日本では否定され、忘れられてきました。海外で高く評価されながら日本が見失った武士道という価値観を、イラクに派遣される部隊の指揮官が語ったということを子供たちに教えて欲しいですね。
--- 山谷
 日本がイラクでの人道復興支援に乗り出す背景には、テロに屈しないという世界の組合のメンバーであること、日米同盟が揺るぎないものでなければならないこと、さらには、わが国が石油資源をもたない消費一辺倒の国だという事情もあります。さまざまな要因を勘案したうえで、最も国益に叶う選択として自衛隊派遣を決定したという現実的、多面的な議論を子供たちができるような教育環境を作っていただきたいものです。
--- 櫻井
 日本が自衛隊をイラクに派遣する理由を、政府は人道支援だと説明していますが、本当に無私の人道支援だけかといえば、そうではない。小泉首相は日米同盟と言いましたが、日米同盟と同時に日本にとっては石油も大切な生命線です。イラクが混乱してテロリストの手に陥った場合に、中東から石油をスムーズに輸出できるかといえば、無理ですね。その時に困るのは、九割を中東に依存している日本です。イラクが不安定化したら、私たちの国の経済や暮らしはどうなるか本当に分からない。新幹線が走らなくなるかもしれないし、飛行機も飛ばなくなるかもしれない。お父さんの会社も倒産するかもしれない。遠い国の出来事ではなく、日本人の暮らしに密接な関係があることだということを教え、だからこそしっかり考えなければならないと子供たちに示すべきでしょう。
--- 山谷
 イラク派遣の前から、インド洋には海上自衛隊の補給艦や護衛艦が対テロ特別措置法に基づいて派遣され、十カ国もの艦船に給油を続けていますね。輻射熱で五十度にもなる甲板上で派遣隊員の方たちは懸命に作業されています。昨年八月、衆議院の調査団の一員としてイラクとともにそのインド洋に行ってきました。補給艦「とわだ」と護衛艦「はるな」に乗せていただきましたが、隊員たちの四人に三人は「行くかと言われれば何度でも行く」というほど非常に士気が高い方ばかりでした。現在進行形で平和を創りあげているのだという気概を持って任務に当たられている。平和の意味、あるいは生きることの意味というものを、私たちが想像できないくらい深く考えながら働いておられると感じました。しかし、そういう姿をマスコミは殆ど伝えませんね。
--- 櫻井
 学校では、他人に思いを至しなさい、優しい心を持ちなさいと盛んに教えるでしょう。弱者に配慮をして、苦労をしている人の立場を考えなさい、友達はいじめたり、差別したりしてはいけないと強調します。
 ならば、いま山谷さんがおっしゃったインド洋に派遣されている自衛官のことにも想いを至すべきですね。五十度の炎天下で働きながら、彼らの功績は語られることもありません。海上自衛官がディエゴガルシアで一生懸命汗をかいていることを最もよく知っているのは、アメリカ軍です。だから、イラクに自衛隊をなかなか派遣しなかった時でも日本はアメリカから追及されなかった。ある意味で政治がサボっていること、社会が対応しきれていないことを、インド洋の海上自衛官たちが埋め合わせてくれている面があります。
 学校で、どの学年の子供にどの程度まで話をするのかは判断が必要ですが、さまざまな日本の国益や立場を背負って自衛隊員が海外に出かけていることを教え、そのことについて、子供たちが知的整合性を持てるよう、幅広い教育をすべきです。教育の現場では軍隊に関するものはすべて悪いとしたら、この国の安全について考える能力を備えた人材は育たないことになります。
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