メッセージ(バックナンバー)

 この季節の黄昏の中の花の美しさを、どう表現したらよいのでしょう。
 シャクナゲ、サルスベリ、キョウチクトウ、ヤマボウシ……花に出会うたびに祈りを捧げずにはいられません。
黄昏れてゆくあぢさゐの花にげてゆく(富沢赤黄男)
あやめ咲きぬ父母を結びし明治の恋 (赤城さかえ)
七尾線どこの駅にも立葵      (佐藤和夫)
 昭和30年代には街中に、駅舎に、立葵がたくさん咲いていましたっけ。赤やピンクや紫や、人の背よりも高くズイッと立って咲く大きな花は、素朴な日本の愛を現しているようで花屋にも売られず、生け花にもならず、だからこそ大好きです。
 10代の頃、父が仕事に失敗して借金をかかえて東京に転校した頃、遠足がありました。制服でなく、私服が許されたので、女の子たちは何を着ていこうかワイワイ大騒ぎ。適当な私服を持ち合わせていなかった私は体操服の上下で参加しました。オシャレな女の子たちの中で、体操服姿がみすぼらしく目立ったのでしょうか。男の子たちが“体操服か”とはやしたてました。私は汽車を待つプラットホームで、とっさに逆立ちをしてみせました。“体操服だとホーラ、逆立ちも出来るでしょ!?”男の子たちは笑いました。逆立ちした私の眼の前に、立葵の赤い花が私の悔やし涙をうけとめて、笑顔にかえて励ましてくれたことを今も鮮やかに思い出します。
 札幌に講演に行くとライラックの花がまっさかりでした。英語でライラック、フランス語でリラの花。少女時代欧米の小説を読むたびに出てくる花の名に、“どんな花だろう”と心をときめかせたものです。そこで、未熟な一句を札幌の大通りでよみました。
心無垢の日 読みし小説リラの花
ライラック 匂ひの中に大通り
 札幌では、私の講演を聞いてくれた15才の少年が“将来政治家になりたい”と美しい瞳で私に語りかけてくれました。「重い荷物を背負うけれど、やり甲斐のある仕事よ。嬉しいわ。」と私が言うと、ニッコリ。
 札幌のあと旭川市へ講演に。先週桜が散ったばかりと聞きました。こちらはナナカマドが風情ある並木を作っています。旭川の護国神社で御祭礼があったので、参拝に。加藤隼戦闘隊の加藤隊長が祀られています。父が加藤隼戦闘隊のパイロットでしたので、友情あふれ、誇りをもった隊員を育ててくれた加藤隊長への敬愛の念をたびたび私に語ったものでした。
 屯田兵が隊長の住むそのあたりを開拓したということで、父は“北海道の屯田兵の人々は立派だった。開拓する土地をくじ引きで決めるけれど、リーダーは最も悪い土地を自ら引きうける。強いということは、一番つらいことを引きうけるということ。カッコイイだろ”と言っていたことをふと思い出しました。私の心の奥のどこかへ“つらいこと”と“ラクなこと”と両方目の前にあれば“つらい”ほうを選ぶほうが上等、という気持ちを植えつけたのは、父の言葉と、この北海道の風景なのかもしれないと思いました。

平成17年6月5日 山谷えり子

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