メッセージ(バックナンバー)

 6/18 夫のお誕生日、子どもたちが夫のお墓の前でハッピーバースデーの合唱をしてくれました。シャレたことの好きな人でしたから、子どもたちの歌声に、きっとお墓の中でカタカタとお骨を踊らせ面白がったことでしょう。“母さん、どう思う?”と末娘がたずねるので“お父さんのお骨ダンスの音が聞こえるようよ。ありがとう”と答えました。
 この日、私は、大分市で教育正常化の講演でした。“君が代を学校で教えてほしい”とお母さんが先生にお願いすると、“そんなに君が代が好きならお母さんが家で教えて、何回も家で歌ったらいいじゃないですか”と言われたことがもとになり、お母さんたちが大分の教育はおかしいじゃないかと立ちあがったのです。調べてみると小学校の高学年でも男女の着替えを同室でさせ、過激な性教育をし、おじいさんたちは人殺しと教わり、護国神社の鳥居の手前で“ここから先は人殺しがまつられているから入ってはダメ”と先生に言われたり、幼稚園で母の日、父の日のプレゼント作りをやめにするなど、首をかしげる現状が明らかになりました。歪んだ教育現場を正常にしたいという熱気で、数百人の会場はいっぱい、ロビーにも人が立ちました。走り回ったお母さんたち、お父さんたち、主催者に感謝です。
 控え室で大分市内の産婦人科医の奥さんとお話ししました。母乳育児にこだわり、平成10年、全国で13番目にユニセフとWHOの「赤ちゃんにやさしい病院」の認定を受けたという病院です。「ある時、見知らぬ妊婦さんが飛びこんできました。診察すると今にも産まれそう。そして出産後、その女性はワケがあって赤ちゃんはいらない。殺してほしいというのです。私と夫はお母さんを個室に休ませて、母乳をあげなければ赤ちゃんは亡くなります。よく考えてと言いました。2日間、お母さんは赤ちゃんを殺してほしいと訴え続けました。ところが3日目、お母さんはポロポロ泣いて、自分は何と恥ずかしいことを言ったのか。赤ちゃんを立派に育てますと言われたのです。母乳が赤ちゃんが、その女性を母親にしたのです。赤ちゃんが一生懸命母乳を吸う。吸って吸って、やっと少し出る。その繰り返しを一日8回も10回もする。赤ちゃんはガンバル、ガンバル。お母さんは待って待って与える。互いの絆、原点が作られていく。赤ちゃんが母性に火をつける。女の体には自然がまだ残っているのです。母乳育児は本能に火をつけること。だから大切。国はもっと力を入れてほしい。母乳育児は大切といいながら、本気で母乳育児をサポートする産院はあまりに少ない。O157の時も母乳で育った子は回復が早かったのです。」と奥さまは言われました。
 産後フラフラの時に、二時間起きに起きて、時に小一時間も抱きつづける母乳育児は、楽ではありません。けれども体中がキューンと鳴って体中の細胞の水がきらめきざわめくようなあの授乳の歓喜というのは、表現のしようもないほど圧倒的です。話しながら、私も奥さんも涙があふれました。
 参議院の少子化に関する提言を現在まとめていますが、私は産めるかどうか悩んでいる妊婦への支援と良いお産、授乳などの情報発信などをサポートすることを政府として真剣にとりくむことを入れてほしいと発言しています。不妊治療へのサポートも記述される予定ですが、自然であたりまえのことをサポートすることを忘れてはならないと思います。
 ちなみに不妊治療は、日本では70人に1人が生殖補助医療で生まれる不妊治療大国となりました。生まれた子どもは10万人をこえ、治療施設数は約650と世界一といわれています。そんな中で未熟児での出産が増え、成長障害を心配する小児科医もいます。政府は、個人がしっかりしたライフスタイルを選べるよう追跡調査とデータ発表を応援していくことも大切でしょう。
 “女の体には自然が残っている”“本能に火をつける、母乳育児”という産婦人科医の夫人の言葉が帰りの飛行機の中、雲の海をながめながら、私の耳元で何度もリフレインして聞こえました。母は母なのではなく、赤ちゃんが母をさらに母へと育ててくれるのでしょう。小さな赤ちゃんが大きな奇跡を作ります。ユニセフとWHOの「赤ちゃんにやさしい病院」がもっと日本で増えますように。
 「赤ちゃんにやさしい病院」(Baby Friendly Hospital)は1989年3月 WHO・ユニセフが、「母乳育児の保護、促進、そして支援」するために、共同声明を発表したものです。WHO・ユニセフは、「母乳育児を成功させるための10カ条」を実践している産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院」として認定しており、日本国内では34施設が認定。(2004年 現在)
 日本母乳の会ホームページによれば、
母乳育児を成功させるための10カ条(ユニセフ・WHOによる共同声明)
1. 母乳育児の方針を全ての医療に関わっている人に、常に知らせること
2. 全ての医療従事者に母乳育児をするために必要な知識と技術を教えること
3. 全ての妊婦に母乳育児の良い点とその方法をよく知らせること
4. 母親が分娩後、30分以内に母乳を飲ませられるように援助すること
5. 母親に授乳の指導を十分にし、もし、赤ちゃんから離れることがあっても母乳の分泌を維持する方法を教えること
6. 医学的な必要がないのに母乳以外のもの、水分、糖水、人工乳を与えないこと
7. 母子同室にする。赤ちゃんと母親が一日中24時間、一緒にいられるようにすること
8. 赤ちゃんが欲しがるときに、欲しがるままの授乳を進めること
9. 母乳を飲んでいる赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないこと
10. 母乳育児のための支援グループを作りを援助し、退院する母親に、このようなグループを紹介すること
全国の認定施設
北海道地方 勤医協札幌病院
総合病院北見赤十字病院
東北地方 黒川病院
関東地方
(東京を含む)
日本赤十字社医療センター
宇津野医院
横浜市立大学医学部附属総合医療センター
中部地方 石井第一産科婦人科クリニック
杉田産婦人科医院
高田医院
西川レディースクリニック
山田産婦人科
こぎそレディースクリニーク
上田市産院
北陸地方 あわの産婦人科医院
富山県立中央病院
関西地方 笠松産科婦人科・小児科
岡村産婦人科
津医療生協白塚診療所
国立三重中央病院
中国地方 国立病院岡山医療センター
サンクリニック
梅田病院
鳥取県立中央病院
四国地方 くぼかわ病院
九州地方 聖マリア病院
森下産婦人科医院
産科婦人科愛和病院
国立病院長崎医療センター
井上産婦人科
くまがい産婦人科
ゆのはら産婦人科医院
熊本市立病院熊本産院
熊本市立熊本市民病院
内野産婦人科医院
 多くの産婦人科医院は乳房マッサージや母子同室サポートなど、授乳支援体制がまだまだ不十分です。23年前、はじめての出産の時に私が感じた貧しい環境は、今もあまり変わっていない。

平成17年6月21日 山谷えり子

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