衆議院青少年問題に関する特別委員会での質問
「行き過ぎ 性差解消」 |
平成14年4月14日 産経新聞掲載記事 |
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女の子にひな祭り、かわいい名前×
男の子に鯉のぼり、強そうな名前× |
文部化学省の委嘱で作製された子育て支援のパンフレットに、ひな祭りや鯉のぼりを否定的にとらえるなど、ジェンダーフリー(社会的・文化的な性差の解消)について誤解を与える記述が多数盛り込まれ、波紋を広げている。男女共同参画担当大臣の福田康夫官房長官も「(このパンフレットの記述には)賛成しない」と嫌悪感を表明しており、文部科学省は配布先への趣旨説明など対応を検討している。
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パンフレットは文科省の委嘱で日本女子社会教育会(四月から日本女性学習財団に改称)が作製した「新子育て支援・未来を育てる基本のき」。ジェンダーフリーの視点に立った子育てを進めようと二月に発行され、全国の教育関係団体などに無料配布されている。 |
男女の「らしさ」に縛られた子育てを批判する内容。「『女らしさ』や『男らしさ』を押しつけるような子育てをしていませんか」と問いかけたうえで、その例として(1)女の子に愛らしい名前を、男の子に強そうな名前をつけること(2)女の子のひな祭りや男の子の鯉のぼり(3)女の子には人形を、男の子にはグローブをプレゼントすること…などを挙げている。 |
別のページでは、「同性愛の人々にとって同性を愛するということは、『当たり前』の選択」とし、性別の枠にとらわれず「子どもが自分らしく生きるための支援」を呼びかけている。 |
こうした記述には「行き過ぎ」との批判が強く、今月十一日に開かれた衆院青少年問題に関する特別委員会で、山谷えり子氏(民主)が「ひな祭りや鯉のぼりまで否定するかのような内容」と指摘。これに対し、福田官房長官も「正直言って賛成しない」と述べた。 |
文部科学省はパンフレット作製にあたり、約二百五十万円を支出したが、内容は「いちいちチェックしていなかった」(男女共同参画学習課)という。批判の多い記述については「男女の違いを考えるきっかけとして盛り込まれた。ひな祭りや鯉のぼりなどを否定するつもりはない」と説明している。 |
日本女性学習財団は「生まれたときから、男女の性別で将来のコース分けをすることへの問題提起として、よくある事例を挙げた。子供の性格などを考えずに安易に男女『らしさ』を押しつけてはいけないという趣旨で、誤解されたとしたら残念」としている。 |
日本人の美意識否定 |
文部科学省の委嘱で作製された子育て支援のパンフレット。子供の名前のつけ方や節句の祝いにも疑問を投げかけるような内容に、教育関係者からは「最近のジェンダーフリーは日本の美意識を否定し、伝統文化まで否定しかねない」と危惧する声も上がっている。 |
このパンフレットには、女らしさや男らしさを押しつけるような子育てを振り返る題材として、次のような例が並べられている。 |
女の子だったら「さくら、美咲、優花など愛らしい名前」「ひな祭りのおひな様」「赤いランドセル」「○○さんと呼ぶ」「かわいいとほめる」…。 |
男の子だったら「翔太、翼、大輝などスケールの大きい名前」「鯉のぼりと武者人形」「黒いランドセル」「○○くんと呼ぶ」「カッコいいとほめる」…。 |
文部科学省は「男女の違いを考えるきっかけとしての記述」と説明するが、教育問題に詳しい山谷えり子衆院議員(民主)は「いい意味での女らしさや男らしさまで否定する必要があるのか」と疑問を投げかける。 |
「行き過ぎ」への懸念は、このパンフレットだけにとどまらない。文部科学省の検定に合格し、来春から使用される高校の教科書には「大和撫子」や「ますらお」という言葉を批判したり、「夫のなかには伝統的な良妻賢母観にこだわる人がまだ多いが」と記述するなど、日本の伝統的な男女観を否定する傾向が目立った。 |
「今や同性愛のカップルでも家族といえない理由はない」との表現には「記述が不足しており、家族について理解し難い」と検定意見がついたが、「生活をともにする血縁関係のない者同士や同性愛カップルを、家族と考える人も増えてきた」と改められるにとどまった。 |
山谷氏は「男女の差別は決してあってはならないが、すぐれた日本人の美意識は大切にしなければならない。ジェンダーフリー教育の行き過ぎは、今後も国会で追及していきたい」と話している。 |
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平成14年4月15日 産経新聞掲載記事 |
主 張 家庭科教科書 性差の全否定は行き過ぎ |
来春から使われる高校教科書の検定をめぐり、家庭科でも問題点が指摘されている。男らしさや女らしさまで否定するジェンダーフリーの思想が深く浸透しているからである。危険な兆候といえる。ジェンダーは社会的・文化的につくられた性差を意味し、それをなくそうというのがジェンダーフリーの思想である。伝統的な男女観やそれに基づく役割分担を極端に嫌う。政治運動としてなら許されようが、教科書にまで入り込んできたのでは、教育の中立性を損なうおそれがある。 |
ある教科書は「自分が受けたしつけについて点検する」という課題を与え、「女の子(男の子)らしくしなさい」「男の子(女の子)のくせに」と言われたのは、どのような場面で、何をしたときだったか比較してみよう…とする記述が検定をパスしている。生徒が親からこう言われていた場合、その親を批判しようというのだろう。 |
しかし、このしつけ方のどこに問題があるのか。男の子がめそめそしていたら、「男のくせに」としかり、女の子が乱暴な言葉遣いをしたら、「女の子らしく」とたしなめるのは、親として当然ではないか。 |
複数の教科書が「東京女性財団」のつくったジェンダーチェック表を載せている。「班や席順が男女で分かれている」「やさしい女子、たよりがいのある男子がよいといわれる」などについて、「はい」「いいえ」でこたえさせ、「はい」が多いと考えが古いとされる。使い方によっては、思想統制につながりかねない教材である。 |
事実婚やシングルマザーなどを暗に奨励する一方、良妻賢母を否定する教科書もある。総じて、家族の結束より個人の自由な生き方を強調する傾向が強い。憲法が掲げる個人主義や男女平等の理念は大切だが、伝統的な家族観や男女観を全て否定するのは行き過ぎであろう。 |
現行憲法の制定課程で、当初のGHQ(連合国軍総司令部)草案にはあったが、後の日本側の修正により消えた部分がある。「家族は人類社会の基底にして…」というくだりである。なぜ消えたのか、今もって不明だが、社会の最小単位としての家族の価値をうたったものだ。家庭科で教えるべきことは、家族愛ではないのか。 |
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