「ピル冊子」波紋拡大 |
平成14年6月29日 産経新聞掲載記事 |
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−陳情相次ぎ県教委もNO・厚労省なお「問題なし」・保護者「配慮に欠ける」− |
厚生労働省所管の財団法人が作成した中学生向けの小冊子「思春期のためのラブ&ボディBOOK」の扱いをめぐり、教育現場に混乱が広がっている。保護者からは「性教育的配慮に欠ける」との批判が続出、配布を差し止める教育委員会も出始めた。この問題では「中学生には不適切」とする文部科学省と、「特に問題はない」とする厚生労働省の見解が対立しており、事態を一層複雑にしている。 |
■配布見直し |
小冊子が配布され始めたのは 小冊子が配布され始めたのは五月の連休前後から。発行元の財団法人、母子衛生研究会が、各都道府県教委や母子保健主管課に必要部数のとりまとめを依頼し、これまでに百三十万部が保健所や中学校などに届けられている。が、「ピルをきちんと飲めば避妊効果は抜群」などと書かれているため、保護者らでつくる団体などからの抗議が各地で相次いだ。 |
三重県では「いのちを尊重する会」(平松恵里子代表)が県教委などに、「ピルを奨励するような書き方」と抗議文書を提出。平松代表は「一人の親として、こういう小冊子が学校で配られることに疑問を感じる」と話す。 |
このほか福岡県や石川県などでも、配布の差し止めを求める陳情書が県議会に提出された。 |
保護者らの批判を受け、小冊子の配布を見直す動きも出始めている。 |
熊本県教委では配布の差し止めを決定。「小冊子には生命尊重の視点が欠けており中学生には不適切と判断した」と説明する。石川県教委では市町村教委に、小冊子の扱いに注意を促す通知を出した。「生徒に渡すかどうかは各市町村の判断だが、十分な説明を行うなど慎重に扱うべきだ」としている。 |
■中学生には… |
「もし、君が同性愛だと感じるのなら、自分の正直な気持ちにしたがって生きていっていいと思う…」 |
保護者らは小冊子に盛り込まれたこんな表現にも首をかしげる。是非はともかく、中学生という発達段階でそこまで…というわけだ。ほかにもコンドームの使い方を図入りで詳しく説明したり、「ラブ能力テスト」として性行為などをゲーム感覚で取り上げた記述も。 |
こうした内容に、遠山敦子文部科学相は五月下旬の衆院文部科学委員会で「(性行為などを)自分で考え、いいと思えばやっていいというトーンが強すぎ、中学生がここまで…という気がする」と嫌悪感を隠さなかった。 |
■「国の方針」 |
発行元の母子衛生研究会は「国の方針に従って編集したのに、どうして批判されるのか分らない」と話す。同研究会によると、小冊子は二年前に厚生省(当時)の「女性健康手帳検討委員会」が発表した報告書をもとに編集。同委員会メンバーからもアドバイスを受けており、「内容に問題があるとは思えない」という。厚生労働省も同じ立場だ。「最近は高校生の四割前後がセックスを経験しているとの報告もあり、未成年者の中絶実施率も増えている。望まない妊娠を避けるためにも、小冊子を中学生に読んでほしいという立場は変わらない」(母子保健課)と強調する。 |
文部科学省と厚生労働省の対立は、各地の自治体にも影響を及ぼす。「県教委に相談もなく、保健所が勝手に配っている」(九州の県教委関係者)というケースも。 |
この問題を国会で取り上げた山谷えり子衆院議員(民主)は「小冊子の内容は行き過ぎで、厚生労働省の見解には教育的配慮が欠如している。こうした小冊子が教育現場で配られるべきではない」と訴えている。 |
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