解答乱麻 過激な性教育は虐待だ |
平成14年10月14日 産経新聞掲載記事 |
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「売春など性を売り物にすることは本人の自由」と考える高校生が四人に一人(日本青少年研究所調査)、また出会系サイトの被害者の四分の三は女子中高生(警察庁まとめ)という日本の現状は異常だ。これは社会環境の問題とともに、教育現場での首をかしげるような性教育の影響も大きいと思う。年齢や人間の尊厳に対するまなざしを欠いて性の自己決定権を教え、フリーセックスをあおるような内容となっているのだ。 |
たとえば、この春中学生に避妊薬のピルを奨励するなど性を興味本位に記述した中学生向けの性教育冊子「思春期のためのラブ&ボディBOOK」が百三十万部配布されようとし、衆院文部科学委員会で私が取り上げて波紋が広がり、絶版になったケースがあった。 |
回収を求めて保護者が全国各地で教育関係者に申し入れをし、問題のある記述をマスコミが指摘しても、“中絶増加がある”“具体的に教えないと”“性の自己決定は自立と人権の問題”と、絶版まで四ヵ月にわたる激しいやりとりがあった。 |
こうした経過の中で、わたしは改めて教科書や指導資料などを調べ直したのだが、セックスをモノ化するようなとらえ方の強さには違和感がつのった。高校の先生が使う指導資料には「“愛がなければ性交してはいけない”という考えを押し付けてはいけない」とあり、実践報告書の中には「中高生の頃は、二人の性のコミュニケーションがうまくはかれず、避妊について話せない。しかし性交の回数は多い。その場合はピル。確実な避妊方法で、快楽の性が追求できることに気づかせる」と記述されていたりする。 |
来春から使われる家庭科教科書に「とりかえばや女と男」と題して、女子生徒は男性、男子生徒は女性の役になって「デートで性関係を求める場面」を演じてみようというコラムが載り、さすがにこの部分は検定で削除されたという経緯もあった。 |
多様な生き方、個の自由、女性の自立など誰も反対できない言葉の下、初交年齢の低年齢化と中絶の増加というデータをあげ、“性教育は具体的に全年齢層を対象に進めるべし”という方向性に対し、日本ではこれまで大きな異議が唱えられなかった。いや“欧米に比べて遅れている、恥ずかしい”という声さえあがっていた。しかし、果たしてそうだろうか。 |
アメリカでは性教育のあり方が根本から問い直され、“愛と人間の価値”“責任と抑制”を教えるプログラムに予算がつけかえられている。その結果、十代の妊娠と性感染症が減少することが確かめられた。また「十代の妊娠を防ぐ全国キャンペーン」調査では、中高生の九割以上が「高校卒業までは、社会が責任をもって性への抑制を促すことが重要」と答えており、性教育は大きく転換している。 |
日本では、十代を巻き込む性の商品化が進み、学校の性教育では無規範が奨められ、その結果、都市部から農村地域の産婦人科医までが十代の性行為感染症の流行に頭をかかえている。 |
児童虐待にも似た性教育は見直し、魂をもつ人間の豊かさに気づく教育の場を子供たちに与える義務が大人にはある。 |
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