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対談「教育に国家観を取り戻せ!」
ジャーナリスト 山谷えり子 × ジャーナリスト 櫻井よしこ
 
はびこる自虐史観、学力低下、学級崩壊、過激性教育…。
「国家」を徹底して忌避してきた「戦後教育」によって荒廃した現場再生の道はあるか。

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(4/5) 「家庭科」か「家庭崩壊科」か
--- 櫻井
 文部科学省の官僚たちは、自分たちの政策が日本を滅ぼしつつあるということが本当に分からないんでしょうかね。どう考えても、文科省の教育政策はプラスよりもマイナス要因が多く、いっそつぶしてしまったほうがいいとさえ思います。
--- 山谷
 国家というものは、力の体系ですが、利益の体系だけど、価値観の体系でもありますね。しかし、その価値観のベースとなる国語力がどんどん壊されていっています。それからいま、ジェンダーフリー教育と過激な性教育によって国家や共同体を構成する最小単位である家族も壊されようとしていますね。
 冒頭でも述べましたが、センター試験で夫婦別姓が男女平等の視点から正しい方向であるような問題が出ましたけれど、今年四月から使われる東京書籍の高校家庭科教科書には、「どちらの姓を選ぶ場合でも、改姓する側に心理的、社会的不都合が生じやすい。姓名はその個人に固有のものであるので、実質的な男女平等のために、夫婦同姓、別姓、どちらでも選択できる制度への改善が検討されている」と書かれています。選択制だから夫婦別姓を認めてもいいではないかという論理ですけれども、同姓で不都合が生じやすいのなら、やはり別姓の方がいいんだと読めますよね。「姓名はその個人に固有のもの」と、姓を家族と切り離している記述はそのあと、「孫は祖母を家族と考えない場合もあるだろう。犬や猫のペットを大切な家族の一員と考える人もいる」と続きます。家庭科なのか家庭崩壊科なのか分からない。そういう考え方の中での夫婦別姓論は問題です。
 民主党は、法律婚と事実婚の差をなくしたいと、非嫡出子の相続権の平等も含んだ夫婦別姓案ですけれど、戸籍法の解体まで主張する夫婦別姓論議員もいます。夫婦が二人とも旧姓なら、どちらが筆頭かという議論になりましょう。それなら戸籍をばらばらにしましょう、個人単位にしましょうという理屈です。夫婦別姓論はそのぐらい幅がある。高校の家庭科教科書でも「欧米の多くの国では、個人単位の身分登録制度が採用されており、戸籍制度のある国は極めて少ない」(開隆堂)と戸籍制度を悪者扱いするものもあります。
 アメリカのクリントン前大統領は一九九六年の年頭教書演説で、「より強い家族がより強い国をつくる」「お父さんよ、子供に本を読んであげよう」と述べましたね。ブッシュ大統領もファミリーヴァリューの大切さを強調している。州によっては夫婦が離婚の危機になったときに、どのようなコミュニケーションをとれば、よりが戻るかというロールプレイングゲームを学校教育に取り入れています。イギリスのブレア首相は両親揃った健全な家庭づくりを訴えています。結婚や家族は守るべきであるという国の姿勢が教育の場でも明確なんですね。それなのに、日本の家庭科教科書はそろって、「家制度の抑圧」だ「家父長制の弊害」だと、否定的に考えさせようとしています。
 性教育では、小学校の低学年からセックスのやり方を具体的に教え、中学生にはコンドームを使うのはもちろんピルを飲んでフリーセックスをするよう勧めるかのような教育をしています。こうした避妊技術教育をしたら、初婚年齢が下がって妊娠率も高くなるということはアメリカでは研究報告が出ていて、クリントン前大統領時代から、性教育から愛や責任を教えるモラル教育、人間教育に軸足を移しているんですね。ブッシュ大統領はさらに予算を増やしてモラル教育を勧めている。これに対して、日本は避妊技術教育をさらに進めようとしています。
 今、中高生の六八%は、「同年代の女子が見知らぬ人とセックスすること」を「かまわない」「本人の自由」と考えているんですね。これは警察庁の意識調査で分かったことですが、「女子が見知らぬ人とのセックスで小遣いをもらうこと」、つまり売春も「かまわない」「本人の自由」とした子供も五一%もいました。
--- 櫻井
 身体を売ることがどれだけ屈辱的で、自分自身を否定する行いであるかを考えることができるようにしてやらないといけません。自分には価値がないと思うから売春するわけで、価値があると思えば、そのような行動はしないはずです。個人が大事と言いながら、個々人の価値を全く教えていないのよね。
--- 山谷
 売春などの性非行に対して、「だめだ」と禁止するのは古いモラルの「押しつけ」で「強制」だからいけない(苦笑)。高校の家庭科教科書の指導資料には、「愛がなければ性交してはいけないという考えを押しつけてはいけない」と書かれています。
 現在の性教育には、「あなたたちは、両親やそのまた親たちのおかげで生命をいただき、将来は自分も親になるという神聖な役割を果たすかもしれないのよ」というメッセージはひとかけらもないんですね。おじいさん、おばあさんがいてお父さん、お母さんがいる。そして自分がいる。その自分がまた新たな命をつないでいくという生命の流れへの神聖な思いを育てていない。
 現在だけを切り取って考えて、自分がひとりで存在できると思うのは幻想でしかないし、生命の連続性を知らないから、自分に価値を見出せずに安易に自分の体をモノ化して売春するのも平気なのでしょう。
 十九歳女子の十三人に一人が性感染症推定罹患患者という厚生労働省の調査結果などを大人たちは深刻に受け止める必要があると思います。傷ついていく子供を前に胸が痛みます。
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